プーチン大統領が検察庁幹部に呼びかけ
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3月17日、検察庁の幹部会議で暗号資産(仮想通貨)の不正利用について言及し、違法な国際間資金移動に対抗する追加措置の必要性を強調した。
大統領府発表の議事録によると、プーチン大統領は「犯罪者が、(仮想通貨を含む)デジタル金融資産をより頻繁に利用するようになっている」と指摘し、金融監視局をはじめとする政府の法執行機関が、細心の注意を払い、対処する必要があると述べた。
特に、「デジタル資産の違法な国境を超えた移転」に関しては、追加の抑制措置を講じることが不可欠だと警告した。しかし、プーチン大統領による取締りの具体的な内容についての言及はなかった。
ロシアの仮想通貨規制
ロシアでは、仮想通貨の関連法案=「デジタル金融資産関連法(On Digital Financial Assets:DFA)」が昨年7月に成立。「決済手段として受け入れることができる電子データの集合体」と定義された仮想通貨は、財産の一種とみなされ、税の申告が義務付けられる一方で、商品やサービスの支払いに使用することは禁じられた。なお、仮想通貨の発行や取引に関しては合法となっている。
今年1月1日より施行されているDFA法は、主に仮想通貨の法的な定義を定めるものであり、より具体的な規制に関しては、別途審議される「デジタル通貨関連法(DA)」で、対処する方針とされた。
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公務員による仮想通貨保有の禁止
DFA法の成立を受け、ロシア労働省は昨年12月、公務員に対し、仮想通貨の保有を禁止を通達した。対象となるのは、連邦政府職員および地方公務員、中央銀行の理事、国有企業の理事だが、その配偶者と未成年の子供も含まれる。DFA法では、政府関係者による海外の銀行口座開設および金融商品の購入を禁止しており、その金融商品には、「外国の法律に基づいて発行されたデジタル資産と仮想通貨」が含まれている。
今年4月1日までに、対象となる関係者は保有する仮想通貨を処分する必要があるが、同法は施行初年度であるため、2020年の保有分については申請する必要がないようだ。
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仮想通貨の一般普及率ではロシアは常に世界の上位に入っており、公務員への保有禁止令がどれほどの影響をもたらすのかは、まだ未知の領域だと言える。
大手銀行の動き
仮想通貨の保有および利用に対する厳格な制限が課せられる一方で、ロシアの大手銀行には独自の動きがある。
ロシアの大手国有銀行Sberbankは、デジタル資産を購入できるプラットフォーム開設を計画すると同時に、法定通貨ルーブルと連動したステーブルコイン「Sbercoin」の実証実験を、今春にも開始するとのことだ。Sberbankの公式サイトによると、ロシアの人口の7割が同行のサービスを利用しているという。
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また、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に関しても、ロシア中銀は積極的な姿勢を見せており、昨年10月には「デジタル・ルーブルの可能性」と題した協議書を発表。中銀のNabiullina総裁も、CBDCの発行は「非常に現実的だ」と語り、今年末にも実証実験が開始される可能性に言及している。
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規制整備の難しさ
仮想通貨規制の大まかなガイドラインはDFA法で示されたが、仮想通貨が関連する領域は広範囲に及ぶため、一朝一夕で規制を整備することは困難そうだ。
例えば、ロシアはその寒冷な気候と安価な電力から、仮想通貨マイニングも盛んで、中国、アメリカに次ぐ世界3位となっており、DFA法成立後も、マイニング事業への大規模な投資は続いているようだ。
プーチン大統領の発言、および公務員の仮想通貨保有禁止令(海外口座開設の禁止等)からは、不正な資金の国外流出を防ぐ対策に優先的に焦点を合わせていこうとするロシアの姿勢が読み取れるように思える。