トークン化経済
スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」で17日、トークン化経済についてのパネルディスカッションが開催され、暗号資産(仮想通貨)業界の著名人が登壇した。
パネリストは以下の4人:
- Jeremy Allaire氏:USDC発行企業サークルの創設者/CEO
- Jirayut Srupsrisopa氏:タイの仮想通貨関連企業「Bitkub Capital Group」CEO
- Beryl Li氏:フィリピンのWeb3ゲーム関連企業「Yield Guild Games(YGG)」共同創設者
- Timo Harraka氏:フィンランドの運輸通信大臣
Allaire氏は、現実世界の金融資産のトークン化について多くの議論が起きているが、「世界で最も重要な現実資産と見られている米ドル」を規制に準拠した形でトークン化したものが、ステーブルコインUSDCだと主張。同社のビジョンはブロックチェーン技術の利点をトークン化により米ドルに取り入れることで、「インターネットの強力なパワー」をドルに与えることだと説明した。
トークン化経済の例としてはゲーム分野が注目されている。Yield Guild GamesのLi氏は、NFT(非代替性トークン)を活用したP2E(Play-to-Earn:遊んで稼ぐ)ゲームがモデルケースであり、すでにゲーム内の資産を現地通貨などの「現実世界の資産」に交換する流れがあると指摘。
約30億人という世界のWeb2ゲーム人口が、今後どのような可能性をもたらすかに期待をのぞかせた。
Srupsrisopa氏はトークン化におけるタイの先進性に言及。今年第1四半期にはホールセール型の中央銀行デジタル通貨(CBDC)が導入される予定だという。またタイ政府がシンガポール金融管理庁(MAS)と共に、タイのCBDCを使った両国間の送金に取り組んでいると付け加えた。
さらに、タイ政府は、現在の仮想通貨ライセンスとは別に「投資トークン」のライセンスの導入を検討している。この投資トークンの対象として、国債や炭素クレジット取引、外国為替、電力単位などが想定されているという。Srupsrisopa氏は、このようなタイ政府の動きは「トークン化が今後のデジタル経済の基礎となる」ことの表れだと説明した。
フィンランドのHarraka大臣は、一般大衆の目線では「トークン化=仮想通貨」は、まだまだ懐疑的に捉えられる傾向があると指摘。透明性と身元確認、また一般的な信頼を築くことが重要だと述べた。また、現在のゲームやエンターテイメントのあり方をみると、実際の対面型ではなくバーチャルでの参加など、現実世界との境界線が曖昧になってきていることから、規制対象の境界線も曖昧になるのではと問題提起した。
規制当局の努力が求められる
Allaire氏はトークンの規制のあり方について、インターネットの規制と比較しながら説明。ブロックチェーンは、インターネット上の新たなOSレイヤー(基盤レイヤー)と捉えることが可能で、金融規制は必要ないが、デジタル資産商品は規制されるべきだとした。しかし、Harraka氏の指摘のように、ベースレイヤー上に構築されたアプリは多種多様であり、規制の対象となるかどうかが曖昧になる可能性があると指摘。
その際には、インターネット規制の枠組みを作った時と同様、「規制当局の多大な努力が必要」になると同氏は主張。具体的には、規制対象となるもの一つひとつに対して、明確な定義を与え体系化し、新たな規制の枠組みを作ることを挙げた。当局は既存の規制を適用しようとするが、新しい技術や概念についてはうまくいかない状況が生まれているとパネリストは指摘した。
次なるトークン化の対象
今後トークン化が予想される可能性が高いのは、有名ブランドの得意客に付与されるロイヤルティポイントが有望だとAllaire氏。現在はそれぞれのブランド独自の展開だが、ポイントシステムをブロックチェーン基盤に変更し、閉鎖されたループから、他のブランドと相互運用可能なオープンなシステムにすることを提案した。
一方、トークン化を進めるにあたり課題もある。中央集権的なシステムから脱却して、自分自身でトークン(資産、個人情報、IDなど)を管理するセルフカストディが理想的だが、現在、ユーザーにとっては技術や知識のハードルが高いことが障害になっている。
Allaire氏は、セルフカストディを容易にする次世代の技術開発プロジェクトにベンチャーキャピタルが注目しており、投資も盛んになっていると述べた。