Voyager買収に向けて一歩前進
米連邦破産裁判所の判事は7日、破綻した暗号資産(仮想通貨)投資プラットフォームVoyager Digitalの再建計画を承認。その一環として、バイナンスの米国版Binance.USがVoyagerの資産を買収することも許可した。
Binance.USは、Voyagerに現金約27億円(2,000万ドル)を支払い、Voyagerが顧客から預かった仮想通貨を引き次ぐことに合意した格好だ。
米証券取引委員会(SEC)は、Binance.USがVoyagerを買収することに対して異議を唱えていたが、Michael Wiles判事はこれを却下した。
SEC側の弁護士は、SEC委員の統一見解ではないと留保しつつ、Binance.USが「未登録の証券取引所である可能性がある」と主張。さらに、Voyagerが過去に行ったVGXトークンの販売も、未登録の証券取引とみなされうるものであり、証券法に違反していた可能性があるとも述べていた。
今回、Wiles判事は、SECがこの申し立ての根拠を提示することができなかったと結論している。
対米外国投資委員会は調査中
判事によると、まだ確認過程を経る必要があるため、買収が最終決定したわけではない。
Voyagerの財務アドバイザーは、買収にあたっては、Binance.USの規制遵守状況や、顧客預金の安全性に関する課題を検討するために、最大4週間が必要だと述べている。
さらに、対米外国投資委員会(CFIUS)も、Binance.USのVoyager買収を、海外企業の米国への投資に関する国家安全保障上のリスクの面から調査しているところだ。CFIUSは、現在のところは買収に異議を唱えていないが、調査結果次第では、取引を差し止める可能性もあると警告している。
これについてBinance.US側は、同社は米国に拠点を置いており、中国系カナダ人Changpeng Zhao(CZ)CEOが率いる親会社からは「完全に独立している」と述べているところだ。
これまでの経緯
Voyagerの弁護士は、Binance.USが同社を買収することで、顧客預かり資産の73%を回収できると見積もった。Voyagerの債権者の97%がこの取引に賛成票を投じている。
もし買収取引が承認されれば、Voyagerのユーザーは、Binance.USのアカウントを取得することにより、ようやく出金が出来るようになる。
Voyagerは昨年12月に、チャプターイレブンで破産申請した。その後、資産を売却するためのオークションが行われ、Binance.USが最高価格の約1,400億円を提示して落札した形だ。
この際、Binance.USのBrian Shroder最高経営責任者(CEO)は「顧客を最優先」し、顧客の仮想通貨をできるだけ早く返金することが入札の目的だとコメントしていた。
関連:バイナンスUS、破綻したVoyagerの資産を1400億円で落札」
米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは
日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う。申請後に債権取り立てが停止され、債務者は負債の整理に取り組み、原則120日以内に再建プランを策定する。
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