Worldcoinがデータ保護に与える影響を評価へ
英国の情報監督当局である情報コミッショナー事務局(ICO)は、ChatGPT開発企業「OpenAI」のサム・アルトマンCEOらが進める暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「Worldcoin(ワールドコイン)」を調査すると発表した。ロイター通信などが報じた。
ICOは、情報の権利を擁護するために設立された英国の独立機関。公的機関による情報公開や個人のデータプライバシーを促進している。
ICOは、ワールドコインがその事業の重要な要素となっている「高リスク」データの取り扱いを開始する前に、データ保護に関して与える影響を評価する必要があると述べた。
さらに、ワールドコインの活動は、参加者の合意に基づいて自由に行われる必要があり、眼球のスキャンを受ける人も、不利益を被ることなくプロジェクトから脱退することができるようでなければならないとも続けている。
ワールドコインは、世界中の人々に仮想通貨の形でベーシックインカムを配布するという壮大なビジョンを掲げたプロジェクトだ。「Orb(オーブ)」という機器で目の虹彩をスキャンすることで個人を識別し、その人特有のID(World ID)を生成するという仕組みを構築している。
24日にはメインネットをローンチしており、ネイティブトークンであるWorldcoin(WLD)はOKXやバイナンス、Bybitなど多くの取引所へ上場したところだ。
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英国でも、ユーザーの目をスキャンするハードウェア機器「オーブ」が、ロンドンの3カ所に設置されている。
ベーシックインカムとは
ある国や地域の市民に対して、一定の金額を定期的に支給する社会的な政策や制度のこと。一般的に貧困軽減や格差縮小、職業選択の自由度を上げることなどを狙いとしている。
▶️仮想通貨用語集
英国の情報コミッショナー事務局(ICO)は、重大なデータ侵害が発覚した場合、巨額の罰金を科すことができる。
4月には、ソーシャルメディアTikTokに約23億円(1,270万ポンド)の制裁金を科した。英国では子どもの個人情報を利用するにあたり企業は保護者の許可を取る必要があるが、こうした措置を行っていなかったと指摘した形だ。
一方で、ワールドコインはそのウェブサイトで、同プロジェクトは「ヨーロッパの一般データ保護規則(GDPR)を含め、バイオメトリック(生体)データの収集と転送を管理するすべての法律と規制に完全に準拠している」と説明している。
ブテリン氏らの指摘
データ保護に関しては、イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏もワールドコインの課題の一つに挙げていたところだ。
ブテリン氏は、目の虹彩をIDに使う仕組みについて言及し、もし他人が誰かの虹彩をスキャンすれば、その人物がWorld IDを持っているかをデータベースで確認できてしまう可能性があると指摘した。
さらに、現時点でOrbが安全に作られているかどうかや、バックドアが仕込まれていないかを検証する方法がないことも課題に挙げている。
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5月には、Web3メディア「BlockBeats」が、ワールドコインの、目の虹彩スキャンによる個人認証コードが、ブラックマーケットで不正販売されていると報告した。
これについてワールドコイン側は、「継続的なモニタリングを行っており、生体認証を受けた当人ではない第三者がアプリに登録されるという事例を特定したが、その数はわずかである」と返答。不正行為への対策として、登録プロセスの調整やダイナミックQRコードの実装といった措置を行っていくとも述べた。
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