FRBの規制強化措置を批判
米国の共和党議員らは28日、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長に書簡を提出した。FRBは銀行による決済用ステーブルコインの発行を事実上阻止していると述べている。
書簡を提出したのは、下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー委員長、ビル・ホイゼンガ下院議員、フレンチ・ヒル下院議員の3人である。
背景としてFRBは8日、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンなどに関係する活動を行う銀行に対する規制強化を2つ発表したところだ。
まず、新たな活動監督プログラムでは、銀行における仮想通貨や分散型台帳技術関連の業務、および「金融サービスにおけるノンバンク企業との技術面での提携」について監督が強化される。
さらに、ステーブルコイン関連の活動を行う銀行に対して、事前に一定の管理体制を導入し、FRBの審査と承認を得ることを義務付ける。
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議員らは、こうした規制強化について、次のように意見を申し立てた。
私たちは、FRBのこうした動きが、決済用ステーブルコインの規制体制を確立するために議会によってなされている進歩を妨害するために取られているのではないかと懸念している。
さらに、このままFRBの動きが進められる場合、金融機関が仮想通貨エコシステムに参加することは確実に妨げられてしまうだろう。
「超党派のステーブルコイン法案と逆行」
マクヘンリー議員は、議会に「決済用ステーブルコインの明確化に関する法案」を提出しており、この法案は7月末に下院金融サービス委員会を通過したところだ。
今回、議員らはこの法案は「銀行を含む規制対象機関が決済用ステーブルコインを発行するための明確な枠組み」を提示するものだと指摘した。ステーブルコインの準備金、情報開示、償還、流動性、リスク管理に関して、発行者に厳格な基準を課すと説明している。
議員らは、法案は消費者を保護し、市場参加者に法的な確実性を提供するものでもあると述べた。一方で、FRBの新たなプログラムは、こうしたアプローチとは異なり、事実上銀行のステーブルコイン参入を阻止するとして、次のように意見している。
監督上の審査プロセスは、こうしたステーブルコインをめぐる銀行の活動を許容するためのガイダンスのようなものと装われている。
しかし実際には、少なくともパブリックなパーミッションレスのブロックチェーンに関する場合、FRBがそうした活動を許可するつもりがないことは明らかだ。
パーミッションレスとは
ブロックチェーンにおいては、管理者の許可(パーミッション)なく、誰でもネットワークにアクセスできるという意味。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を始めとする仮想通貨のブロックチェーンは政府や銀行などの中央機関を介在させずに送金などを可能にしている点でパーミッションレスであると言える。
▶️仮想通貨用語集
FRBは銀行のステーブルコイン関与について慎重な姿勢を示してきた傾向がある。
FRBは2月、仮想通貨業界の脆弱性が、従来型銀行の流動性にもたらすリスクについて注意を呼びかけており、その中では「ステーブルコインの準備金となる銀行預金」についても流動性リスクとして挙げていた。
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パウエル議長の見解
パウエル議長は6月、ステーブルコインの発行・利用には中央銀行による強固な監督が必要だとの見解を示している。
現在マクヘンリー議員らが進めているステーブルコイン法案では、FRBではなく州当局へ与える権限が多いものであり、この点に反対する民主党と共和党の間で議論が紛糾しているところだ。
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ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
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