- Deloitteブロックチェーン部門責任者が語る「ブロックチェーンへの取り組み」
- Deloitte米国金融サービス産業ブロックチェーンの責任者は、業界動向からのDeloitteの取り組みまで、ブロックチェーンに関する見解を共有、SECの規制強化による影響についても言及した。
- ステーブルコインとは
- フィアット(法定通貨)を担保にして発行することで、その通貨と同等の価値を維持する仕組みをもった仮想通貨のこと。基本的に対応したフィアットの価格に連動する。代表的な例はUSDTで、1USD=1USDTで価格が安定する仕様となる。
「ハイブリッド型」ブロックチェーンの必要性
Deloitte米国金融サービス産業ブロックチェーンの責任者Linda Pawczuk氏は、CoinDeskの取材に対し、ブロックチェーン業界動向からのDeloitteの取り組みまで、ブロックチェーンに関する見解を共有した。
Pawczuk氏は、同社の保険部門在籍時、ブロックチェーン・コンソーシアム「Institutes RiskBlock Alliance」を結成した人物だ。前責任者Eric Piscini氏の辞任を受け、2018年4月に新責任者として就任した。
Deloitteは、新たなビジネスモデルを顧客と共に創造するというコンセプトのもと、数十件にも及ぶブロックチェーン・サービスやソリューションを提供している。
Deloitteのブロックチェーン・コンサルティングは、オープン型のブロックチェーンより許可型ブロックチェーン(permissioned blockchains)に関するものが多いが、最終的には両方を融合させたハイブリッド型が必要となるとPawczuk氏は確信している。
保険を例に挙げると、交通事故の加害者と被害者の保険が「異なる種類のブロックチェーン」を利用している場合、システムが連携出来ず問題が生じる。この問題を解決する手段がハイブリッド型である。
貿易金融のブロックチェーン・データ用「相互運用性」
ハイブリッド型で重要なカギを握るのは、双方のシステムが連携可能か否かだ。Pawczuk氏は懸念点について、以下のように述べている。
Deloitte同様、ブロックチェーン分野に参入している国際コンサルティング企業の一つAccentureは、10月に開催された国際銀行間通信協会(SWIFT)主催のカンファレンス「Sibos」で「相互運用性ノード(interoperability node)」を発表した。
これは、R3 Corda、 Hyperledger Fabric、Digital Asset 、Quorumという4つの主要なエンタープライズ・プラットフォームを接続する目的で開発されたものだ。
これに対しDeloitteは、貿易金融のブロックチェーン・データを接続する為の独自の「相互運用性」を、CoinDeskが5月に主催した「Consensus 2018」で実演している。
ステーブルコイン分野の参入は時期尚早
世界4大コンサルティング企業の中では、PwCがステーブルコインのプロジェクトに参加しているが、PawczukいわくDeloitteはこの分野には参入しておらず、関心も薄いようだ。規制が明確化されていない状況下での参入は、時期尚早との判断である。
その一方で、同社は既に複数のカストディ・ソリューションのシステムおよび組織統制(SOC)の監査を行っているといわれている。ステーブルコインに関しても規制環境が整い次第、参入を検討する可能性は考えられる。
SECの取り締まり強化で広がる波紋
Pawczuk氏は、仮想通貨ICOに対する米国証券取引委員会(SEC)の取り締まり強化やビットコインの不正使用などの影響から、クライアント企業の役員間で、ブロックチェーンに対する不安感が広がっていることについても言及した。
直近では、SECが2つの仮想通貨ICOを有価証券とする判決を下したほか、未登録の証券取引所を運営した疑いで仮想通貨分散型取引所のEtherDeltaの創設者に、総額4400万円の罰金を命じた報道が世間を騒がせている。
Pawczuk氏は、規制強化を歓迎する反面、誇張が混乱を引き起こしていると述べた。
また、コンソーシアムが会員から利益を得ることに批判的で、無料でPoCを構築する企業のブロックチェーン・ベンダー間で行われている実践についても懐疑的な態度を示している。
Pawczuk氏は、企業にDLTの採用を促す上で、技術的なプラットフォームを開発・促進するために特別に作られたコンソーシアムではなく、何年も前から中立的な立場ですでに評判を確立している、「Institutes RiskBlock Alliance」のようなコンソーシアムが適役だとみている。
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