
ビットコイン反対派のEU立場
11日のロイター報道などによると、トランプ米政権の仮想通貨推進政策に対し、ユーロ圏財務相らが「通貨主権と金融安定性」への懸念を表明した。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長のパスカル・ドノホー氏は今週月曜日の会見で「他の地域における政策展開は我々欧州に重要な結果をもたらす可能性がある」と警告し、「これらの議論は根本的に我々自身の自律性と通貨の回復力に関連している」と述べた。
トランプ大統領は先週、選挙キャンペーンで公約した「ビットコイン大統領」としての姿勢を示し、政府が既に保有する仮想通貨を活用した戦略的準備金設立に関する大統領令に署名。これは前政権からの明確な政策転換となった。欧州安定メカニズム(ESM)のピエール・グラメーニャ代表は、米国の仮想通貨受け入れ姿勢により、大手テクノロジー企業が独自の決済システムを再び立ち上げる可能性があると記者団に語った。
グラメーニャ氏は「議論において強調されたのは、ここで問題となっているのは欧州の主権でもあるということだ」と指摘。「米国政権のスタンスは過去と比較して変化しており、仮想通貨、特にドル建てステーブルコインに好意的である。これにより欧州では、外国や米国のテック企業がドル建てステーブルコインに基づく大規模な決済ソリューションを立ち上げる計画を再燃させるという懸念が生じている」と述べた。「これが成功すれば、ユーロ圏の通貨主権と金融安定性に影響を与える可能性がある」と警告している。
ドノホー議長は、欧州中央銀行(ECB)によるデジタルユーロの創設が現在、時代の先を行くために重要だと付け加えた。ECBは2020年以降、デジタルユーロの創設に取り組んできた。これはフェイスブックが前年に「リブラ」と呼ばれる独自のデジタル通貨を立ち上げる計画を発表したことがきっかけとなった。フェイスブックの計画は米国と欧州の規制当局の間で懸念を引き起こし、リブラ・プロジェクトはその後「ディエム」に改名されたが、2022年初頭に頓挫した。
その一方で、欧州委員会内部からは「欧州のデジタルユーロは遅れをとっている」との声も漏れ始めている。計画開始から少なくとも2年を要して目標に到達するはずだった2023年を過ぎた現在も、EUは有効なツールを持ち合わせていない状況だ。トランプ政権の台頭は、バーチャルなグローバル市場に追い越されるのを避けるために必要な推進力となる可能性が高いとされる。
しかし皮肉なことに、「通貨主権と金融の安定」をめぐるEUの主張には矛盾も指摘されている。長年にわたりECBの幹部らがビットコインをはじめとする仮想通貨に反対してきた歴史があり、そもそもユーロ圏自体が各国の通貨主権を放棄して成立した経緯がある。この点からすれば、EUの懸念は自らの立場と相反するという批判も浮上している。
昨年10月にはECBのビットコイン批判に対する本格的な反論も表面化した。経済学者マレー・A・ラッド氏らは、ECBのマーケットインフラ・決済部門ディレクターのルリッヒ・ビンドザイル氏らが発表した論文に対して反論を展開。ビンドザイル氏らはビットコインの価格上昇シナリオで初期保有者のみが利益を得る一方、後から参入する投資家や保有していない人々は経済的に損失を被ると主張していた。これに対しラッド氏らは、「ビットコインの富が少数に集中している」との見解は誤りであると指摘。最大のビットコインウォレットの多くは取引所やETF発行会社に属しており、数百万人のユーザーに代わって保有していると論じた。さらにビットコインが「ゼロサムゲーム」であるという主張も否定し、特に発展途上国での送金問題解決など実用的価値があると主張。また、ECBがビットコインの代わりに中央銀行デジタル通貨(CBDC)を推進するという利益相反の可能性も指摘している。
トランプ政権の仮想通貨推進は、単なる財政政策の転換にとどまらない意味合いを持つ。欧州筋は「過去1か月半で学んだことがあるとすれば、ワシントンの新政権は自国の利益になると判断した場合、他国に圧力をかけるためにあらゆる影響力の源泉を使用する準備ができているということだ」と認めている。商品販売や予約のための主要ポータルサイトから始まり、あらゆる取引においてデジタル通貨の使用を増加させ、国際取引におけるドルの優位性をさらに強化しようとする狙いがあるとみられている。
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特集:米国の仮想通貨「準備金」構想:トランプ政権・各州の注目点