
新規則の対象を明確化
シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行に相当)は6日、先に出していた暗号資産(仮想通貨)企業に対する新たなルールについて明確化を行った。
5月末、MASは一連の新規則を発表。特に、シンガポールの国外にサービスを提供している「デジタルトークンのサービスプロバイダー(DTSP)」はライセンスを取得する必要があり、取得がなければ7月1日以降はサービスを停止するよう通知していた。
このルールの対象について業界で混乱が広がっていたため、今回MASは対象となる事業者の範囲を強調している。
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新ルールの対象となるのは、シンガポールの国外に「のみ」サービスを提供している事業者だと明言した。
シンガポールの顧客にサービスを提供する事業者は、すでに規制の対象となっており、この規制でライセンスを取得している企業の運営に影響はないとしている。こうした事業者は、そのままシンガポール国外の顧客にもサービスを提供することができると続けた。
さらに、ユーティリティトークンやガバナンストークンとしてのみ使用されるトークンなどのサービス提供者は、ライセンスや規制の対象とならず、影響を受けないとも強調している。
ユーティリティトークンとは
特定のサービスを利用するための権利として機能する、実用性のあるトークンのこと。商品や食事などの代金を現金に代わって決済できたり、保有していることでクラウドストレージにアクセスできる。
MASは、デジタル決済トークンや資本市場商品トークンのサービスを提供している事業はマネーロンダリングのリスクが高く、活動がシンガポール国外で行われる場合は、こうした企業を効果的に監督することができないと指摘した。
そのため、国外のみで対象サービスを提供する企業は、ライセンスがない場合、その活動を停止しなければならないとしている。
シンガポールでは、たとえば仮想通貨取引所WazirXが同国に本社を置きつつ、主にインド市場でサービスを提供していた。今回の新ルールも一つの背景に、WazirXの親会社Zettaiは、ブランド名にZensuiに変更し、中米のパナマに移転することを決めている。
WazirXは昨年7月、ハッキングにより3億ドル(約435億円)以上の盗難が発生。事業再開に向けた再建計画をシンガポール高等裁判所に提出していたが、高裁は今月これを却下。シンガポールでの事業継続の見通しが不透明になっていたところだ。
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クレジットカードによる仮想通貨購入なども禁止に
MASは、2022年のFTX破綻などの後、仮想通貨の規制を強化してきた。クレジットカードでの仮想通貨購入を禁止し、販促インセンティブも制限している。
また、個人投資家を保護するため、デジタル決済トークン(DPT)サービスプロバイダーに対して新たな規則を導入。例えば、顧客資産の分別管理、毎日残高照合を行うこと、デジタル資産の保管には第三者機関を利用することがある。
その他、個人顧客に対するエアドロップ、紹介ボーナス、サインアップ特典などのプロモーション禁止、レバレッジ商品の禁止、ユーザーに対する仮想通貨リスクについての知識テスト実施など、他の国と比較しても厳格なルールを追加した。
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