
仮想通貨規制を強化
シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行に相当)は5月30日、暗号資産(仮想通貨)サービス企業の事業ライセンスに関するガイダンスを発表した。
今回特に注目を集めているのは、シンガポールの国外にサービスを提供している仮想通貨企業に対する措置だ。MASは今回の対応に、発表から1カ月以上の移行期間を設けないと説明。事業ライセンスを持たない仮想通貨企業に対し、7月1日以降は国外へのサービスを停止するよう要請しており、ルールに違反した場合は罰を科すと述べている。
今回のガイダンスは、厳密には「デジタルトークンのサービスプロバイダー(DTSP)」を対象にしている。DTSPとは、デジタルトークンのサービスを提供し、以下の2つ条件のどちらかに当てはまる個人、共同経営企業、シンガポール企業を指す。
- シンガポールの事業所で運営している
- シンガポールで創設または法人化し、シンガポールの国外にサービスを提供している
ガイドラインの目的は、事業ライセンス取得の申請方法や基準、継続要件を提示すること。MASは他にも複数のルールを発行しており、どのガイドラインも定期的に更新していくと説明した。
仮想通貨の懸念事項
MASは、今回のガイドラインを設けた理由を、サービスがオンラインで行われたり、国境をまたいだりする特性から、マネーロンダリングやテロ資金供与、拡散金融などのリスクがあるからだと説明した。
そして、DTSPが違法な行動に関与すれば、シンガポールの信頼にも関係してくると指摘。その上で、注意深く慎重な方法で事業ライセンスを付与するとし、認可を検討するのは極めて限定的な状況のみになると説明した。
限定的な状況について、MASは以下の3つを例に挙げている。
- 申請者が経済的に合理性のある事業モデルを有している場合。かつ、シンガポールで事業をしていたり創設したりしたにもかかわらず同国でデジタルトークンサービスを行わない理由をMASが納得できる場合(国外サービス事業者を想定)
- MASの懸念対象にならないような方法で運営を行っており、金融活動作業部会(FATF)のルールなど国際的な基準に従っている場合
- 規制義務を遵守する能力を有していることなど、事業構造に懸念がない場合
FATFとは
「Financial Action Task Force」の略で、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)などを監督する国際組織のこと。提示するルールや勧告自体に法的拘束力はないが、加盟国に対して審査を実施し、AMLやCFTにおける非協力国リストを公開するため、大きな影響力を持っている。
また、事業ライセンスを得られるための具体的な条件には、デジタルトークンサービス業界で十分な経験がある幹部がいることや、最低資本要件として25万シンガポールドル(約2,790万円)を維持することなどを定めている。
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