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SWIFT・日銀・財務省が語るデジタルマネーの公民役割分担 「舞台を作るのが公的セクターの仕事」|MoneyX

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

公民の役割を整理

次世代金融カンファレンス「MoneyX 2026」で27日、SWIFT・日本銀行・財務省の3者がデジタルマネーの現状と公民の役割分担を議論した。

モデレーターの齊藤氏は冒頭、SWIFT・日銀・財務省といったプレーヤーが具体的にどのような取り組みをしているのかを正確に理解する場にしたいと述べた。セッション後に「価値の移転とは何か」と「公的セクターの役割がなぜ重要か」の2点を持ち帰ってほしいと目標を掲げた。

登壇者は以下の通り。

  • 齊藤達哉(株式会社Progmat 代表取締役 Founder and CEO)※モデレーター
  • 茅花充(SWIFT 東アジア統括責任者)
  • 杉村和俊(日本銀行 決済機構局企画役)
  • 鳩貝淳一郎(財務省 デジタル通貨企画官)

SWIFTの進化とフラグメンテーションの脅威

SWIFTは1973年にベルギーで金融機関が出資して設立された協同組合形式の組織だ。茅花氏は、SWIFTの本質的な価値は国際取引を成功させるための「データ基盤」にあると説明。さらに、どの国のどの銀行がメッセージを受け取っても共通の理解で処理できるようにする「標準化」がもう一つの重要な役割だと述べた。

そのSWIFTは近年、大きく進化している。茅花氏は現在の取り組みを2つの軸で説明した。第一に、既存レールの進化だ。従来「高い・遅い」というイメージがつきまとっていたが、従来は電文ごとに個別管理していた国際送金を、一つのトランザクションとして送金元から受取口座までエンドツーエンドで追跡する「トランザクションマネジメント」の概念を導入。

その結果、国際送金の75%が10分以内に受取銀行に到達していることが判明したという。ただし受取銀行から受取人の口座に入金されるまでの「ラストマイル」には各国の規制対応で時間がかかるため、金融機関や規制当局と連携しながら短縮に取り組んでいるとした。

第二に、デジタルマネーの台頭への対応だ。茅花氏は、既存のメッセージインフラを補完する形で、ブロックチェーン上に共同レジャー(共同台帳)を構築する取り組みを進めていると明かした。

この共同レジャー構想の背景には、デジタルマネー領域で独自のインフラやルールが乱立する「フラグメンテーション(分断化)」への危機感がある。

茅花氏は、このまま進行すれば2030年までに世界経済に数兆ドル規模の損失が生じるとの試算を示した。各プレイヤーが独自に構築した小さなエコシステムが「デジタルアイランド」として孤立する事態を避けるため、相互運用性の確保は非競争領域であるとの認識を提示。

解決策として、昨年国際送金分野で完全導入されたISO 20022によるメッセージ標準化に加え、11,500以上の金融機関が接続するSWIFTの既存ネットワーク、ID基盤、セキュリティといった既存の資産を組み合わせることで、新たに立ち上がるエコシステム同士をつないでいく方針を示した。

現在30行以上のグローバル銀行とデジタルマネーの相互運用性確立に向けた取り組みを進めており、その一環として共同レジャーの開発を行っている段階だという。数ヶ月以内にロードマップを公表する予定だとした。

CBDCの論点、ホールセールとリテールで異なるユースケース

杉村氏はクロスボーダー送金の選択肢を俯瞰した。従来の銀行間送金に加え、各国のインスタントペイメント同士のリンク、Wiseなどノンバンクの資金移動業、さらにドル建てステーブルコインによる送金(特に途上国で利用が広がる)があると整理。

そのうえで、ブロックチェーン技術を銀行間送金に適用する試みとして、BIS(国際決済銀行)主導の実証実験「プロジェクト・アゴラ」を紹介した。7つの広域エリアから40以上の金融機関が参加し、民間銀行の預金と中央銀行預金を共通の分散台帳プラットフォームに載せてアトミック決済の実現を目指しており、2026年第2四半期頃に報告書を公表予定だという。

鳩貝氏はこのプロジェクト・アゴラの位置づけを、CBDCの2類型から説明した。ホールセール型は最近「トークナイズド・セントラルバンクマネー(トークン化された中央銀行預金)」へと名称が変更されており、アゴラはこのホールセール型に該当する。トークン化資産(RWA)のオンチェーン取引が拡大する中で、中央銀行マネーによるファイナリティ(決済の最終確定)への需要が高まっていると指摘した。

一方、リテール型について鳩貝氏は、都市部ではQRコード決済や前払式支払手段など利便性の高い手段が普及しているものの、いずれも店頭の端末やユーザー側のリテラシーが前提になると指摘。「リテラシーのある人しかお金にアクセスできないのは社会としての問題かもしれない」と述べた。

人口減少地域では金融機関の撤退やATMの減少が進み「決済空白地帯」が生まれるリスクがあり、リテールCBDCがそのセーフティネットとして機能する可能性を示した。

公的セクターと民間の棲み分けは

セッション後半では、公的セクターと民間の役割分担について議論が交わされた。

齊藤氏は金融市場を学校の「クラス」に見立て、SWIFT・日銀・財務省といった公的セクターを「学級委員長」に、民間プレイヤーを目立つ「生徒」に例えた。その上で、巨大なネットワークやファイナリティといった力を持つ公的セクターが新たな領域に進出した場合、民間にとってどのような影響が生じるのかを問いかけた。CBDCが登場すればステーブルコイン発行者は不要になるのではないか、SWIFTが相互運用性(インターオペラビリティ)を担えば民間プロジェクトの存在意義はどうなるのか、といった懸念だ。

これに対し鳩貝氏は、文化祭を例えに応答した。公的セクターの役割はあくまで「踊り手(民間)が踊りやすい舞台を整えること」であり、「学級委員長が突然バンドのステージで歌い出したら相当しらける」と述べ、民間の領域に踏み込むのではなく舞台設計に徹する姿勢を明確にした。民間マネーは流行り廃りの中でサバイブし続けなければならない厳しさがある。そうした事業者が活動しやすい環境を整えることこそが公的セクターの仕事だとの認識を示した。

各登壇者が描く決済の未来像

セッション最後に齊藤氏が「グローバルな決済・マネーの世界で死ぬまでに何を成し遂げたいか」と問いかけた。

杉村氏は、技術の進歩による果実を得ながらも、真面目に経済活動をしている人が安心して使えるシステムを提供し続けたいと回答。

茅花氏は「Instant and frictionless transaction(即時かつ摩擦のない取引)」というSWIFTのモットーを挙げ、法定通貨でもデジタル通貨でも世界中で摩擦なく価値交換できる世界の実現を掲げた。

鳩貝氏は、舞台(インフラ)が踊り手(民間)の活動を支え、そこで生まれた収益の一部がインフラに還流し、さらに良い舞台が踊りを進化させ、最終的に利用者の喜びにつながるという「大きな循環」が生まれることが夢だと語った。

MoneyX

MoneyXは、ステーブルコインの正式認可が切り拓く「通貨の新時代」をテーマとした次世代金融カンファレンス。国内外から金融業界の有識者、大手金融事業者、スタートアップ、投資家、規制当局が集結し、技術革新・制度設計・社会実装をめぐる議論を展開する。

参加登録は無料・承認制。日本最大のWeb3カンファレンス「WebX」を主催するWebX実行委員会が主催し、JPYC、Progmat、SBIホールディングス、CoinPostが企画・運営に携わる。

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