トロン(TRX)とは
トロンは、2017年にジャスティン・サン氏が創設したブロックチェーン。スマートコントラクト機能を備えており、dApps(分散型アプリ)を稼働させるためのOS(オペレーティングシステム)のようになることを目指している。コンセンサスの仕組みには「Delegated Proof of Stake(DPoS)」を採用した。
TRXはトロンのネットワークで使用されているネイティブ通貨。ステーキング、DeFi(分散型金融)での担保、NFT(非代替性トークン)取引の支払いなど幅広く使用されている。
価格
- 現在価格(2024年11月29日時点):0.20ドル(約30円)
- 年初来高値(2024年11月):0.2248ドル(約34円)
- 年初来騰落率(YTD):+97.06%
- 過去最高値(2018年1月):0.274ドル(約41円)
価格動向
22年5月:トロン基盤のステーブルコイン「USDD」がローンチ TRX前週比+35%に
24年11月:XRP・SOL・ADAなどのL1アルトコイン、米大統領選後に価格が急上昇=CryptoQuant
時価総額|関連銘柄
トロンの時価総額は2024年11月時点で約170億ドル、「スマートコントラクト」セクターの中では7位に位置する。同セクターで1位のイーサリアム(ETH)の時価総額は約4,290億ドル。5位はエイダ(ADA):約380億ドル、6位はアバランチ(AVAX):約180億ドルである。
主な出来事
- 2022年10月:ドミニカ国、トロン(TRX)など国家通貨として承認 ビットコイン以外では初
- 2023年3月:米SEC、トロン創設者ジャスティン・サン氏らを提訴
- 2024年8月:トロン、過去90日間のネットワーク報酬がイーサリアム超え
- 2024年11月:ジャスティン・サン、「トロンDAO」がトランプ一族のWLFIに46億円投資したことを発表
エコシステム支援組織
トロン財団:トロンのサポートを行ってきたがDAO(自律分散型組織)を確立できたとし、2021年7月に解散したとサン氏が発表。そのため財団の公式サイトなどは確認できないが、トロンのウェブサイトには、コミュニティと共にガバナンスを担当して、技術的なサポートも行うという説明が残されている。
トロンDAO:2021年12月に誕生。コミュニティが運営する分散型組織で、創設者はサン氏。トロンのプロジェクトがトロンDAOになったという位置付けである。
トークンアロケーション
トロンのICOは、2017年の8月から9月に行われ、1TRX=0.0019ドルで合計400億TRXが販売された。約860億TRXの初期発行分はICOに約40%が割かれた他、約15%がプライベートセールで売られている。
残りはトロン財団に34%、Peiwo Huanleという企業に10%を配分。Peiwo Huanleはサン氏が所有する企業である。
Arkham Intelligenceによると、サン氏は2024年11月時点で21億TRX超(630億円相当)を保有している。
Total Value Locked(TVL)
Total Value Locked(TVL)は、DeFi(分散型金融)プラットフォームやプロトコルの価値を評価するための重要な指標の一つ。2024年11月時点、トロンのTVLは78億ドル。プロトコル別のTVLトップ3は以下の通り。
- JustLend(50億ドル):レンディングプラットフォーム。ユーザーは資産を提供して金利を稼いだり、担保を預けて資産を借りたりできる。また、TRXをステーキングすることも可能。
- JustStable(20億ドル):ステーブルコイン「USDJ」の分散型金融システム。ユーザーは無料のアカウントを作成してUSDJを所有し、トロン上のサービスにアクセスができる。また、USDJ所有者はガバナンスに参加が可能。
- SUN(7.5億ドル):スワップ、イールドファーミング、セルフガバナンスのための統合型プラットフォーム。ドミニカ国で認可されたデジタル通貨に対応している。
- 資金調達総額:約7,600万ドル
- 投資ラウンド:(2017年8〜9月、ICO)
- 投資家:ジハン・ウー氏、フェン・リー氏らのエンジェル投資家
出資している主なVC
トロンの将来性
ロードマップ
トロンは、以前ホワイトペーパーに10年間にわたる計画を記載していたが、公式ウェブサイトにある「ホワイトペーパー 2.0」には書かれていない。ビジョンとしては、真に分散化されたインターネットと、そのためのインフラを構築していくと説明している。
以前のロードマップは2017年8月から2027年9月まで6段階に分けて計画を示していたが、期間が長すぎるとし、実現性に疑問の声が上がっていた。また、サン氏は否定したが、ロードマップに盗作疑惑が浮上したこともある。
期待される今後の動向
一方で2024年11月にはコア開発者が、2025年のロードマップを公開。トロンはすでに強固なスマートコントラクトプラットフォームではあるが、発展の途上であるとし、今後もセキュリティ、処理能力、可用性の向上に特化していくと説明した。また、長期的に並列処理を導入する計画にも言及している。
また、同月にはサン氏が、ドナルド・トランプ氏の一族が中心となって進めるプロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)」のトークンを3,000万ドル分購入したと発表。この投資は、トロンの米国市場での存在感強化を図りながら、トランプ陣営との政治的な親和性を示唆する戦略的なメッセージと言える。
他にも、サン氏は2024年2月に、トロンがビットコインのレイヤー2ソリューションを開発する計画を発表。すでにビットコインとトロンのネットワークは接続できるようになっているが、仮想通貨の相互運用性を高めるとしている。
投資リスク、懸念材料
米証券取引委員会(SEC)は2023年3月、未登録証券を提供・販売したとして、サン氏やトロン財団らを提訴。TRXとBTTの両トークンを未登録証券とみなしており、この裁判がまだ継続している。
また、SECはステーキングを投資契約とみなしており、今後の訴訟によってはTRXへの投資手段が制限される可能性がある。
一方、2024年の米大統領選で、仮想通貨を支持するドナルド・トランプ氏が勝利したことで、SECのメンバーが変わるとみられる。トランプ政権下では仮想通貨に友好的な規制ルールが整備される可能性があるため、係争中の裁判の進展に注目が集まっている。