テザー(USDT)の概要
テザー(USDT)は、米ドルの価値に1:1で連動するステーブルコインです。つまり、1ドル=1USDTに安定するように運営されています。
開発したのはテザー社で、USDTは2015年にローンチされました。USDTは、ステーブルコインの時価総額では1位の座を長期に渡って維持しています。
テザー社はビットコイン支持者らが創設。創設の目的は法定通貨をデジタル上で使えるようにすることです。同社はUSDT以外にも、ユーロに連動する「EURT」、中国人民元に連動する「CNHT」などのステーブルコインも発行しています。
ステーブルコイン「USDT」
USDTは、24年5月時点で時価総額世界第3位の仮想通貨です。これは仮想通貨全体の順位で、ビットコイン、イーサリアムに次ぐ順位を維持しています。
ドルと価値が連動するように発行・運営されているため、市場に循環しているUSDTは、全てドルや現金同等物によって裏付けられているとテザー社は説明しています。また、時には他の資産を裏付けに使っているとも述べています。
USDTなどのステーブルコインにとって、裏付け資産が100%所持されているかは非常に重要です。裏付け資産がないと、ユーザーの償還に即座に応じられない事態が起こりえます。
テザー社を巡っては過去に、裏付け資産のないUSDTを発行しているとの疑惑がありましたが、現在は公式ウェブサイトで裏付け資産の金額を常に公開しており、四半期ごとに監査企業に調査もしてもらって、透明性向上に努めています。
5つの注目点
1.ステーブルコインで時価総額1位、増え続ける供給量
上述した通り、USDTはステーブルコインの中では時価総額が1位です。24年5月現在でUSDTの時価総額は1,100億ドル(約17兆円)。ステーブルコインで時価総額2位のUSDコイン(USDC)は330億ドル(約5兆円)で3倍以上の差があります。
1USDTは1ドルになるように運営されているため、米ドルの時価総額と供給量はほとんど一致しています。USDTは発行が一時的に落ち着いたり、供給量が減少したりすることもありますが、長期間で見れば増え続けています。つまり、それだけ需要を維持しているということです。
2.テザー社の業績好調、23年の純利益はゴールドマン・サックスの8割
USDTの発行元であるテザー社は業績が好調です。24年1Q(1月から3月)のグループ全体の利益は45.2億ドル(当時のレート約7,053億円)で、これは過去最高だったと説明しています。
この利益に最も貢献しているのは、ステーブルコインの発行・運用で保有している米国債。決算発表では、直接・間接的に保有する米国債は900億ドル(同約14兆円)相当で、ここから前例のない利益を得たと述べています。また、同社はビットコインも購入・保有しています。
23年の純利益を巡っては、米大手投資銀行ゴールドマン・サックスの同年の純利益の78%に及ぶとのデータが公開されました。テザー社の社員の人数は約100人で、4.9万人のゴールドマン・サックスと比べると、一人当たりの利益率が相対的に高いことが判明しています。
3.仮想通貨取引での高い需要、支払いでの利用も進む
ステーブルコインであるUSDTには、多くのユースケースがあります。代表的な用途は、仮想通貨取引における基軸通貨としての役割です。海外の取引所では、USDT建てで多くの銘柄の取引ができるようになっています。
また、仮想通貨としての特徴を有しているため、相場が急落した際、現金化する代わりに資産の逃避先としてUSDTが使われることがあります。ほかにも、取引所間での資金の移動を迅速に行うことができるため、アービトラージトレード(裁定取引)に使うことも可能です。
さらに、USDTは米ドルの価値に連動していることから、米ドル以外の法定通貨を(米ドルに対して価値が高いときに)USDTに交換することで、FXスタイルの取引もできます。
ほかにも、支払いに使いやすいこともステーブルコインの大きな特徴の1つ。過去にはスイスのマクドナルドやアルゼンチン・ブエノスアイレスの中央市場にUSDTが導入されたことが明らかになっています。
4.ユーザー体験の向上へ、マルチチェーンに対応
テザー社は、USDTを発行・利用できるブロックチェーンを増やすように努めています。24年5月現在でイーサリアム、ソラナ、アバランチなど、多くの著名なチェーンで使用できるようになっています。
公式サイトでは、チェーンごとの循環量を公開。これはテザー社の透明性を高める取り組みの一環です。
5.テザー社が新部門創設、USDT超えて最先端技術提供へ
業績が好調なテザー社ですが、24年4月には、ステーブルコインを超えた包括的な幅広いインフラ・ソリューションを世界で提供していくとして、事業部門を4つに再編する計画を発表しました。
取り組む分野としては、個人・コミュニティ・都市・国のニーズに適応する持続可能なソリューション、ビットコインマイニング、人工知能(AI)インフラ、分散型通信プラットフォームを挙げています。
ステーブルコインについては、「テザーファイナンス」という部門で運営すると説明。これはデジタル資産サービス部門で、従来からのステーブルコイン製品と金融サービスを提供し、今後は資産トークン化プラットフォームなどの金融インフラにも取り組んでいく予定だと述べています。