- Bitmainが傘下の採掘所でAsicBoostを使用か
- 9月5日、中国のマイニング機器大手Bitmainが、傘下のビットコイン採掘所AntPoolでAsicBoostを使用したと見られることが分かった。ビットコインネットワークの脆弱性を衝いたこの採掘手法は、これまでにもしばしば議論の的になってきた。今回の件に関し、Bitmain社からは9月7日時点でコメント等は行われていない。
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- ASICとは
- ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は、マイニング専用の電子的回路(集積回路)のこと。FPGAの100倍のハッシュパワーを持つとされている。今回のBitmainはASICA機器製造の世界的大手。ASICマイニング分野では世界の70%から80%のシェアを持つとされる。
- Mainnet/Testnetとは
- Mainnetとは、ビットコインネットワークの本番環境のこと。ここで採掘されたビットコインには実際の交換価値が生まれる。Testnetとは、これに対し、開発や実験を行うための環境のこと。ここで採掘されたビットコインには交換価値はなく、他にも計算手法などMainnetとの違いがいくつかある。
ブロック#540032
マイニング機器大手の中国企業Bitmainが9月5日に、傘下の採掘所AntPoolでAsicBoostと呼ばれるビットコインの採掘(マイニング)手法を用いたのではないかと議論を呼んでいます。
AsicBoostはビットコイン採掘のPoWアルゴリズムを「ハック」することにより、採掘効率を20%程度高める手法で、中国ではBitmainが特許を保有しています。
しかしこの手法はビットコインネットワークの脆弱性を悪用するものとして、ビットコインコミュニティなどでしばしば批判の的になってきました。
AsicBoostによる採掘結果を追跡する「AsicBoost Block Explorer」は、ブロック#540032がAntPoolで採掘されたものであり、そこでAsicBoostが使われたことを示しています。
これまでのBitmainの主張
Bitmainは過去にもAsicBoostを使用し、そのことは昨年2017年にも度々批判されてきました。
批判の中心的立場にいたのがBlockstreamのグレッグ・マクスウェルCEOであり、彼はビットコインネットワークの脆弱性を衝いて収益を得る同社の姿勢を非難しています。
これに対しBitmainは公式声明で反論を行いました。
「BitmainはAsicBoostを試したが、それはあくまでもTestnet(ビットコインネットワークのテスト環境-CoinPost編集部注)でのことだ。マクスウェル氏がほのめかしているようなMainnet(ビットコインネットワークの本番環境-同)での使用は一切ない。そのような根拠を欠いた主張は誰からのものであれビットコインコミュニティを毒するものであって、当社としては証拠を要求したい。また、マクスウェル氏が主張の中で用いた計算式は不正確なもので、Mainnetで用いられているものとは異なっている」
さらにBitmainは同社が中国で保有するAsicBoostの特許についても言及しました。
「当社はAsicBoostの特許を中国で保有している。当社の採掘所で行われる採掘と、クラウドマイニングを一般に有償提供することによる収益は、合法のものである。収益を上げているからといって、得られるビットコインの質は他のものと変わらない」
AsicBoost使用の背景には
いくつかの観測筋は、今回のAsicBoost使用の背景には、このところのビットコインの価格急落があると見ています。
すなわち、それによる運営資金の減少と、運用コスト上昇によるBitmainの経営圧迫です。
しかし、ビットコインの価格やBitmainの経営状況に関わらず、採掘競争はとどまることなく、未採掘のビットコイン量は日に日に減少していきます。
その中で少しでも早く、より多く、採掘収益を上げたい――そうせざるをえない同社の、ある種の合理的な経営判断が今回の背景にあるのではないかと、BitMEX Researchのレポートは示唆しています。
9月7日時点で、Bitmainはブロック#540032を含め、AntPoolでのAsicBoostの使用に関して、発表やコメントを行っていません。