ビットコイン半減期後の重要指標を振り返る
ビットコイン(BTC)は5月、マイナーのブロック承認報酬が12.5BTCから6.25BTCに半減する「半減期」を迎えた。
半減期後には、利益があげられなくなった非効率なマイナーがマイニングの停止を余儀なくされ、保有しているBTCも売却される懸念がある。さらにマイナーの撤退が相次げば、一部のマイニング企業に計算力が集中し、「51%攻撃」などのネットワークの安全性を脅かす問題が発生する可能性がある。
このような理由から、半減期後のハッシュレート推移はBTCの価格形成に大きな影響を及ぼす。
以下では、半減期後のハッシュレートなどの重要な指標を振り返る。
ハッシュレートとビットコイン価格の関連性
ハッシュレートとBTC価格には相関がみられる。それには以下のような理由が挙げられる。
マイナーの楽観がハッシュレートを押し上げる
マイナーが新規参入をする際には、マイニングマシンなどへの投資に多くのコストが発生する。したがって、投資のリターンになる将来のBTC価格に明るい見通しが立たない限り、マイナーは新規参入をしにくい。逆に、マイナーが将来のBTC価格に楽観的になれば、新規投資が行われ、ハッシュレートが向上する。
ハッシュレート上昇によるネットワーク価値の向上
ハッシュレートの上昇時には、マイナーの新規参入などによって、ネットワークの承認能力が多くのマイニング企業に分散する傾向がある。一部の企業によってネットワークの承認を操作することが困難になれば、ネットワークの安全性が向上する。
長期的に見れば、BTC価格の上昇とともにネットワーク全体のハッシュレートも急速に成長してきた。
ハッシュレートの推移
半減期によってBTC報酬が半減したことを受けて、マイナーの一部がビットコインネットワークでのハッシュパワーを減少させている。半減期前に125.7 EH/sだったネットワーク全体のハッシュレートは、5月20日現在87.0 EH/sまで低下した。
一方、主要マイニングプールのハッシュレートのシェアには大きな変化が見られない。これは、大手マイニングプールで一様にハッシュレートが20%から30%低下したことによるものだ。そのような中で、中国拠点のLubianなど大きくシェアを伸ばしている新興マイニングプールの存在が目立ってきている。
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採掘難易度の推移
半減期後初となる採掘難易度調整は5月20日に行われた。
BTCでは1ブロックの生成時間を一定(10分)に調整するため、計算速度を表すハッシュレートが低下(上昇)したときには採掘難易度も低下(上昇)する関係が成り立つ。
したがって、半減期に伴うハッシュレートの低下によって掘難易度が低下することが事前に予想されていた。実際の採掘難易度の下落率は約6%と、コロナショックによる相場下落後の採掘難易度下落率(19%)に比べて限定的だった。
マイナー収入の動向
BTC新規発行による報酬と取引手数料を足し合わせて計算される1日当たりのマイナー収入は半減期直前の1720万米ドルから大幅に下落。5月20日時点では880万米ドルで推移している。
内訳をみると、半減期直前に79万米ドルだった取引手数料は5月20日時点で186万米ドルまで上昇しており、半減期に伴うBTC報酬の減少の一部を取引手数料の増加で補っていることが分かる。
ハッシュレートに影響を及ぼす今後の材料
中国の雨季
中華系マイナーが多く立地する四川省は5月から雨季を迎える。雨季には水力発電によって電力供給が増加することから、中国マイナーの電力コストが低下する可能性がある。
中国四川省に位置する雅安市では最新のガイダンスで、地元政府が過剰な電力を消費するために、ブロックチェーン企業に協力を要請していることを発表している。雨期の電力余り(長期蓄電ができない)を補うため、マイニング等で電力を生かす方針を取る可能性が指摘されている。
米国マイナーの新規参入
BTC報酬の減少に伴って一部のマイナーが撤退をする中で、米テキサスでのマイニングに注目が集まっている。
テキサスでのマイニングに期待が集まる理由は、運営コストの約8割を占めると言われる電気代だ。テキサスの一部には、産業用の電力料金が約0.04米ドル/kWhと格安な地域がある。これは大手マイナーが集中する中国四川省の基本電気料金0.05米ドル/kWhを下回る水準だ。
最近では、2月に米PayPalの共同創業者Peter Thielが出資したマイニングスタートアップLayer1 Technologyが参入。2021年の終わりまでに30%のシェアを獲得することを目標としている。このような企業は、半減期後も収益化の目途が立っている考えられ、ネットワーク全体のハッシュレート増加に寄与する可能性が高い。
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