「トークン販売の安全港」の更新版
米SECのPeirceコミッショナー(愛称:クリプトママ)は暗号資産(仮想通貨)の販売規制に関する「セーフハーバー・ルール」の提案を更新したことを発表した。新たなSEC長官が就任する直前の動きだ。
セーフハーバー・ルールとは、特定の状況下、または一定の条件などの基準を満たした場合に、既存の規則等に抵触しない「承認領域」の措置を設ける措置を指す。Peirce氏は2020年の2月に初めて、仮想通貨やブロックチェーンのイノベーションに米国が乗り遅れることを危惧し、このルールを提案。トークンの販売に3年間の規制猶予期間を設けることなどの政策を目指した。現時点ではSECには採用されておらず、実用に至っていない。
今回更新された提案では、「ネットワーク開発者が3年の間、非中央集権的ネットワークへの参加を促進し、機能の開発を行うことは連邦証券法の登録制から免除される」点を追加した。
また、変更された内容では、「トークン購入者の保護にアたり、プロジェクトや開発者が開発における半期報告およびネットワークにおけるブロックエクスプロラーを提供する報告義務を必要とする」、「3年後にネットワークがなぜ機能し、非中央集権的になったのかに関する、外部顧問によって作成された報告書の開示」、そして「非中央集権的でない場合は、有価証券として登録する必要がある」などの点も新たに加わえた。
Peirce氏は今回の更新版について、「規制に関する線引きではなく、個々のネットワークを分析し報告するための指針だ」とコメント。2020年に初版が発表されて以来、複数の仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトは有価証券法違反としてSECに取り締まられていたが、セーフハーバー・ルールが導入され、プロジェクトに活用された事例は特にみられなかった。Peirce氏もこれまでSECがより明確なルールを制定していない状況を指摘し、委員会内部で自らの観点を訴え、ルール作りを促した経緯がある。
しかし、Peirce氏は新長官の就任が米国の仮想通貨に関する方向性を変える転機と見ている。「新長官が新たなアジェンダを作るため、今こそ委員会がブロックチェーンという新技術に対するルールの修正を行う絶好なタイミングだ」と述べた。
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