ビットコイン高騰で差額の返金強いられる
スウェーデン当局が、犯罪に関連するとして押収した暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の大部分を、麻薬の売人とされる男に返還することを余儀なくされたことが分かった。英メディアThe Telegraphが報道した。
2年前に、この男性は違法の薬物をインターネットで販売し36ビットコインを稼いだとして有罪判決を受けた。当局は、被告人の保有していたこの36ビットコインを押収し、当時130万スウェーデン・クローナ(約1,600万円)に相当すると評価。
その上で当時の検察官は、被告人からスウェーデン・クローナでこの金額を没収するべきだと主張して認められた。
ところが、ビットコインが競売にかけられた際には価格が急騰しており、支払いが命じられた130万スウェーデン・クローナを補うには、3BTCのビットコインを売却するだけで足りてしまった。このため、裁判所は残りの33BTCを被告人に返還することになったという経緯だ。現在の時価で約1.8億円にも相当する額を返すことになる。
「法定通貨を基準にすべきではなかった」
当時の検察官Tove Kullberg氏はラジオ番組に出演して「自分が選択した訴訟方法により、予測できない結果を招いてしまった」と話している。法定通貨相当額ではなく、ビットコイン自体の額を被告から犯罪収益として没収するべきだったという。
Kullberg氏は、仮想通貨が社会でより広く採用されるようになっている現在、検察当局は仮想通貨セクターについて、職員を教育した方がよいとも主張。組織内の知識を高めれば、今回のようなミスを防ぐことができると指摘している。
ロシアの事例
今回のように、仮想通貨についての対応方針が整っていないために、犯罪収益の返還が行われなかった事例は、過去にロシアでも起きた。
ロシアで2018年に起きた事件に関係するものだ。犯罪グループがロシア連邦保安庁のエージェントを装って被害者を誘拐し、身代金として500万ルーブル(約740万円)と99.7BTC(現在の時価で約5.4億円)を受け取った。犯人は逮捕され、実刑判決を受けている。
しかし2020年夏に裁判所は、仮想通貨はロシアの法律では「法定通貨またはその代替物」として認められていないため、被害者へのビットコイン返金を認めないとした。500万ルーブルについては犯人に支払いを命じている。
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その後ロシアではMikhail Mishustin首相が政府の会議で、仮想通貨を財産と認められるよう、税法を改正することを促した。
税法を改正することにより「デジタル金融資産が財産として認められ、その所有者は、違法行為が行われた場合に法的保護を頼りにしたり、法廷で財産権を守ることができるようになる」との方針を示した格好だ。
なお現在のところ、ロシアではDFA法により、仮想通貨取引は合法だが、商品やサービスの支払いに使うことは違法とみなされている。
DFA法(デジタル金融資産関連法)
ロシアで2021年1月に施行された仮想通貨関連の法律で、On Digital Financial Assetsの略。仮想通貨は「決済手段として受け入れることができる電子データの集合体」として取引が合法化された。一方で、商品やサービスの決済に使用することは禁止される。
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