世界情勢と仮想通貨市況
1日の米株式市場で、NYダウ平均株価は前日比597ドル65セント(1.8%)安と続落した。
ウクライナ情勢を巡る戦争激化が深刻化されるほか、前例のない規模の経済制裁を受け、ロシアがデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が取り沙汰されたことなどから、投資家のリスク回避姿勢が再び強まった。
ロシアと欧米諸国による経済制裁の応酬でエネルギー供給が逼迫するとの懸念から、国際的な指標となる米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は、一時1バレル=106ドルを上回り、2014年以来の高値を付けた。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」の閣僚級会合を控えるが、国際エネルギー機関(IEA)は、「エネルギー市場の状況は非常に深刻」との見方を示している。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年10月に掲載した調査レポートでは、「原油価格の上昇は直接的に企業の投入コストが増加することを意味する。原油価格100ドル/バレルまで上昇した場合、消費者物価は1.7%上昇する。」と結論付けている。
2日の暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン価格は、前日比2.2%高の507万円(44,120ドル)と続伸した。
戦争勃発後からは、米株指数とのデカップリングも確認されているが、一時的なものである可能性は否めない。
フランスのルメール経済・財務相は1日、ウクライナへの軍事侵攻をやめないロシアに対して大規模な経済戦争を仕掛けることを予告した。ロシアの戦費調達手段を絞る狙いがある。一方、これに伴い金融・経済市場の不確実性が一層高まるリスクもある。
有事の暗号資産需要は
Arcane Researchによれば、「最大手取引所バイナンスにおいて、通貨ペア「テザー(USDT)/ルーブル」の大幅増を指摘した。背景には、国際決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの大手銀行が排除されたことがある。
Arcane Researchは、ロシア居住者による経済制裁対策として、米ドルのエクスポージャーを獲得するためのステーブルコイン、もしくは急落するロシアの法定通貨ルーブルへのエクスポージャーを減らそうとするマーケットメーカーの行動が引き起こしていると分析した。
経済対策に伴うロシア・ルーブルの急落やロシア銀行が金利を20%引き上げたことなどの影響から、ルーブル建ての暗号取引量が急増している。Finboldによれば、ルーブル/ビットコイン(RUB/BTC)の取引量は、9か月ぶりの高水準に達した。
関連:ルーブル建てのビットコイン取引量急増、制裁逃れに仮想通貨が利用されるリスクは
ウクライナでも、法定通貨ウクライナ・グリブナ(UAH)による仮想通貨取引量が急拡大している。
Coin Metricsのデータで明らかになった。テザー(USDT)やバイナンス USD(BUSD)といった米ドルにペッグされたステーブルコインのほか、ビットコイン(BTC)の取引量も増加した。
一方、ロシア政府が制裁回避にビットコイン(BTC)を利用するとの見解については、懐疑的な見方もある。
RippleNetのゼネラルマネージャーであるAsheesh Birla氏によれば、「ロシア側のニーズをサポートするのに流動性が不足している。」ロシアが1日500億ドル近くの外国為替取引を行っているのに対し、ビットコインネットワークの1日あたりの取引量は約200〜500億ドルだからだ。先月のBTC/RUB(ロシア・ルーブル)の1日の平均取引量は、わずか1,100万ドルにすぎなかった。
また、ブルームバーグが報じたところによれば、ホワイトハウスの国家安全保障会議と財務省は、コインベースやバイナンス、FTXなどの大手暗号資産(仮想通貨)取引所に対しアプローチを行い、制裁対象の暗号資産ウォレット及びアドレスを識別の上、利用停止措置などの対策を講じ始めた。
クラーケンやバイナンスは、暗号資産の理念からもロシアの一般市民を含む全口座を一方的に凍結することは困難との見解を示しつつ、経済制裁対象者については必要な対策を講じているとした。
関連:ウクライナ政府、仮想通貨取引所に全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求へ
関連:「NFTを国の成長戦略に」自民党デジタル社会推進本部・平将明議員インタビュー
過去に掲載したマーケットレポート一覧はこちら