分散型ステーブルコインの競争
イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が2日、分散型ステーブルコインプラットフォームReflexer Financeで改善提案を行ったことが注目されている。この提案は、圧倒的シェアを誇るMakerDAOの需要の一部をターゲットとしている。
「MakerDAOは初めてのステーブルコイン発行プロジェクトとして確固たる地位を築いているが、RAIがターゲットとするミニマリスティックなニッチ市場は戦略的に合理的だろう」とブテリン氏は述べた。
ブテリン氏は同日、MakerDAOのネイティブトークンMKRを約58万ドル(約6,700万円)で売却。この決断は、MakerDAOの共同創設者でCEOのルーン・クリステンセン氏がソラナ(SOL)の基盤技術を用いて新しいチェーンを作成するという提案を発表した直後に行われた。
MakerDAOは、イーサリアムやその他の仮想通貨を担保にステーブルコイン「DAI」を発行。データ分析サイトDeFiLlamaによれば総資産額(TVL)が約58億ドル(約8,500億円)でDeFiイーサリアムDeFi市場の2位に位置する。
クリステンセン氏によると、この新ブロックチェーンへの移行は「Endgame」と名付けられた大型改革計画の最終段階とされている。この目的は、イーサリアムのチェーンが抱える技術的制約、例えば取引遅延や高額なガス料金を解消することだ。
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ブテリン氏のMKRトークンの売却は、MakerDAOの今後の方向性に対する同氏の不信感を反映しているようだ。「MakerDAOは奇妙な方向に突き進んでいる」と彼はReflexer FinanceのDiscordチャンネルで発言し、同時にReflexerに対する改善提案も行っている。
ブロックチェーンデータによれば、ブテリン氏は分散型取引所を介して500 MKRを353.4 ETH(約58万ドル)で売却した後、MKRの価格は一時的に急落。それでも、過去一週間で約8%上昇している。
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Reflexer Financeとは
Reflexer Financeは、2021年にMakerDAOのDAIをフォークして設立され、ステーブルコインRAIを発行している。このステーブルコインにはいくつかの独自の特徴があり、ブテリン氏自身もこれまでRAIの分散型モデルや清算メカニズムを評価して資産運用に用いてきた。
彼はReflexerのコミュニティに対し、担保オプションの拡充の提案を行い、「ステイクドETH」の導入を強調している。このステイクドETHは、プルーフ・オブ・ステークメカニズムによりイーサリアム(ETH)がステークされた量を表すLSDトークン。
LSDとは
リキッドステーキング(LSD)とは、仮想通貨のステーキング報酬を受け取りながら、スマートコントラクトを通じて1:1で発行されたデリバティブトークン(LSD)を受け取り、DeFiで運用できるメカニズム。 LSDはPoS(プルーフオブステーク)を採用するブロックチェーンで採用されているが、特にイーサリアム上で発展している。
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ブテリン氏はさらに、「主流プラットフォームであるLidoを避け、分散化を高める形で」行われるべきだと提言している。LidoはステイクドETHの約3分の1を占めており、その集権化が懸念されている。
CoinGeckoのデータによれば、ブテリン氏の支持を受けたReflexer Financeの独自トークン「Reflexer Ungovernance(FLX)」は、価格が約80%上昇した。
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