- 英国政府、王立造幣局が発行する金担保型仮想通貨の計画を凍結
- 王立造幣局によると、米国CMEグループとのパートナーシップに失敗したことを受け、金担保型仮想通貨RMG・トークンの計画凍結が明らかになった。仮想通貨RMGは、1千億円相当の金を担保としたトークンが発行済だった。
- 英国内の規制は不透明なまま
- 英国国内の仮想通貨取引所に対する規制は現状まだ整っていない。英国政府は規制の必要性を認識しているものの、伝統的金融市場の中心であるが故に、リスクをとって新たな市場のリーダーを目指すべきか判断に時間をかけている模様だ。
金担保型「Royal Mint Gold」トークンの計画破綻
英国の王立造幣局による、金担保型の仮想通貨計画が凍結されたことをロイター通信が明らかにした。
この計画凍結は、米国の取引所グループCMEとのパートナーシップに失敗したことを受けて、英国政府が差し止めたものである。
「Royal Mint Gold(ロイヤル・ミント・ゴールド」(以下RMG)トークンと名付けられた仮想通貨は、造幣局が保管する金を担保に10億ドル(約1,100億円)相当のトークンが発行済だった。
計画中止を受けて王立造幣局の広報担当者は、以下のように述べている。
「残念ながら、現在の市況では発行計画が実現可能だとは証明されなかった。 しかし、また市場がふさわしい状態になった時には再計画することになるだろう。」
CMEグループはシカゴ・マーカンタイル取引所を筆頭とし、世界最大のビットコイン先物市場も管理している。
しかし昨年秋、CMEがこのパートナーシップを発効直前に延期し、造幣局が発行したRMG計画は宙に浮いてしまった。
取引を可能にする為、一時造幣局は仮想通貨取引所との提携も視野に入れていたが2018年前半に英財務省から英国政府の評判へのリスクを危惧して、英国財務省が計画打ち切りを指示したのである。
複数の先進国造幣局による金担保型の仮想通貨計画
RMG計画は、先進国政府が直接仮想通貨取引所に関与する最初の取り組みであった。
既に発行された10億ドル(約1,100億円)分のRMGは最も価値のある仮想資産の一つとされ、現在の評価額ではNEOやイーサリアム・クラシック(ETC)に続き、仮想通貨時価総額ランキング15位近くの規模となっていた。
英国政府が本計画の中止を決めた後、Anne Jessop氏が新たに王立造幣局のCEOに選出され、凍結を実行に移した。
今年3月には計画関係者が4人、その後5月、更に7、8人が解雇されたという。
一方で、カナダやオーストラリアの造幣局も、金担保型の仮想通貨計画を同様に推進しており、フィンテックのスタートアップ企業の提供する技術を利用して取引する模様。
なお、担保となる金の資産規模は現段階では明かされていない。
英国|仮想通貨への規制は不透明のまま
英国政府は、変わらず仮想通貨、及び仮想通貨取引所に対する規制の方針を決めかねている。
規制当局である金融行動監視機構(FCA)は消費者に仮想通貨詐欺への注意喚起を行っているのが。
しかし以前CoinPostで取り上げた通り、先月9月にも財務省特別委員会で 仮想通貨市場への規制の必要性が会議されている。
仮想通貨市場の規制に手を出さないという英国政府の対応は、持続不可能であると述べられ、伝統的金融市場の中心である英国がリスクを冒して仮想通貨市場の中心を目指すべきか見極めが重要だというのである。
伝統的金融市場のリーダーを担ってきたイギリスが、信頼を損なうのを恐れて守りの姿勢を保持したがるのは想像に難くない。
今回の計画凍結も、英国政府が規制の不十分な仮想通貨市場に関わることを恐れた為という声も一部では出ている。
国際基準の無い仮想通貨市場では仮想通貨の高い価格変動性、取引所のハッキングのリスクの他、マネーロンダリングや金融テロへの悪用リスクがある為、これらの側面を危惧し、仮想通貨を不安視する政府機関は未だに多いのが現状だ。