
大企業の「ステーブルコイン・ブーム」
中国電子商取引大手アリババ傘下のアント・グループは6月12日、海外部門アント・インターナショナルを通じて香港でステーブルコイン発行免許の申請を計画すると発表した。同社は創設者ジャック・マ氏が設立し、中華圏で広く利用される決済アプリ「アリペイ」を運営している。
香港では5月にステーブルコイン規制法案が可決され、8月1日の施行後に免許申請プロセスが開始される。アント・インターナショナルは「法定通貨連動型ステーブルコイン発行者免許の申請を予定している」と声明で表明し、シンガポールとルクセンブルクでも同様の申請を検討していると報じられている。
この戦略は同社のブロックチェーン事業強化を目的としている。アント・グループは昨年1兆ドル超のグローバル取引を処理し、うち3分の1をブロックチェーン基盤の「Whale」プラットフォームが担った。同プラットフォームは暗号化技術と人工知能を活用し、資金移転の効率性と透明性向上を図っている。
アント・インターナショナルは2020年のIPO中止後、新たな成長戦略として海外事業を拡大している。同部門は2024年に約30億ドルの収益を計上し、2年連続で調整後利益を達成した。香港上場時の企業価値は80億ドルから240億ドルと予測されている。
一方、米国では、年間数千兆ドル規模の証券取引を処理する金融インフラ大手DTCC(預託信託決済機構)がステーブルコイン開発を検討していると報じられた。両社の動きは大手金融機関によるステーブルコイン市場参入の本格化を示している。
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