- 議論の続き、仮想通貨は有価証券か
- 米SECの企業金融部門のディレクターWilliam Hinman氏が「仮想通貨は有価証券的な側面を持たずに発展することができる」と発言。その根拠を説明している。
米SEC高官が語るICOの有価証券性
米SECの企業金融部門のディレクターWilliam Hinman氏が、ワシントンDCで行われたSEC主催の「FinTech Forum」にて、「数年前に行われたICOはSECの『取り締まり不執行』に適合する可能性がある。」と発言した。
『取り締まり不執行』とは、SECの「No-Action letter」であり、未登録有価証券としてICOプロジェクトを追求する処罰や訴訟の手段を取らないことだ。4月に、SECは初めて米国内でICOトークンを発行しようとした企業TurnKey Jet社に「不執行」を渡した。しかしこの事例ではSECが設けた制限が通常のICOにとっては過大な負担となると専門家に指摘されていた。
Hinman氏は、仮想通貨の有価証券性は時間や事象とともに変化しうるものであるが、仮想通貨がこのまま発展していく過程で、有価証券としての規制が必要なくなる可能性がある説明している。
同氏は2018年の演説で同様の発言をしている。イーサリアムはローンチでICOを実施した時は有価証券に似た性質を持っていたが、その後、非中央集権的であることが明確になった。その点からも有価証券性を帯びずに発展していることがわかると語っている。
しかし、ここでいう「非中央集権」の定義と応用範囲に関しては、不明瞭であり、SECが4月に発表した初の「ICOガイダンス」ではこれについて全く触れていなかったため、仮想通貨界隈の弁護士や専門家は「非中央集権」を根拠にSECと対峙するのは不利であるとも批判している。
今回のフォーラムではイーサリアムについて言及しなかったが、上述のTurnkey Jet社の例を挙げて自身の発言の根拠を説明した。Hinman氏は、同社のトークンの性質、ネットワーク、機能がしっかり考えられており、完成度が高かったと説明している。例えば、3年前に同じトークンでも熟考されないまま発行されていても、有価証券としてみなされていた可能性は低いと述べた。
当初は有価証券的な側面を持つ通貨も時間とともに発展し、ネートワークの分散化が進むことで、その性質は変化しうるとHinman氏は上記の演説で述べていた。SECのClayton長官は今年の3月、Hinman氏のイーサリアムに対する「イーサリアムが有価証券に該当しない」との発言に初めて、賛同の見解を示した。
仮想通貨がこれから発展していく過程で、影響力が強い機関である米SECのメンバーが示した道筋を辿れるかということも、仮想通貨の普及や業界の発展には重要だろう。
一方、SECによる局部的規制の不明瞭と矛盾さを背景に、2017年に独自の仮想通貨「Kin」のICOを行ない有価証券を巡って米SECと会談を重ねていた人気メッセージアプリのKik財団は、米SECを告訴するための資金募集を開始している。
米国において裁判先例は成文法と同等の法的拘束力を持つため、Kik社のトークンが有価証券に該当するかとの判決は今後の大きな業界前例となる可能性が高いだろう。米国のみならず、世界においても注目度の高い規制面での動きと予想される。