
証券トークン化のルール
米証券取引委員会(SEC)の暗号資産(仮想通貨)タスクフォースを率いるへスター・パース委員は9日、ブロックチェーン技術でトークン化された証券は証券に分類されると発表した。
ブロックチェーン技術の可能性を認めながらも、原資産の性質を変えることができる能力まではブロックチェーンは備えていないと指摘。トークン化した証券を扱う市場参加者は証券法に従うように事前に注意を促している。
株やETFといった証券のトークン化は最近の仮想通貨領域の大きなトレンド。例えば、米上場企業ではロビンフッドが今月、未公開の銘柄を含めた株やETFをトークン化したサービスを、EU(欧州連合)のユーザー向けにローンチしたことを発表した。
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パース氏は発表の冒頭で、ブロックチェーン技術について、トークンという形式で証券を取引できるようにするための新たなモデルを構築したと指摘。そして、資本形成を促進したり、投資家が資産を担保に使う能力を強化したりする可能性があると評価している。
そして、この可能性によって、新しい企業や多くの既存企業がブロックチェーン上の商品を受け入れ始めていると指摘した。
ルール見直しに前向きな姿勢も
パース氏は今回、証券のトークン化の例を紹介。投資企業などが自社の株をトークン化する場合や、株を保有する他社がトークン化する場合があるという例を挙げている。その上で、他社が発行するトークンには、カウンターパーティリスクなどの固有のリスクがあると指摘した。
カウンターパーティとは
「取引相手」の意味。デリバティブ取引や外国為替取引などの相手方の金融機関らを指す。相手方の事情により契約上の取り引きが成立せず、損失を被るリスクを「カウンターパーティーリスク」と呼ぶ。
他にも、トークン化証券を提供する場合は、証券法に基づいた開示義務を果たす必要があることにも言及。そして、トークン化証券の購入者も含め、市場参加者は証券の性質と証券法の影響を考慮すべきだと主張した。
パース氏はブロックチェーンのトークン化は新しいが、証券の性質を持つ商品の発行は以前から行われてきたと指摘。そして、これらの商品はオンチェーンでもオフチェーンでも、同じ法的要件が適用されると説明している。
その上でパース氏は、トークン化証券を取り扱う予定がある企業らに対し、SECの委員やスタッフと事前に対話することを検討するよう呼びかけた。
そして、ブロックチェーン特有の側面によって既存ルールの変更が必要であったり、規制要件に時代遅れな部分や不要な部分があったりした場合は、市場参加者と協力して、適切な免除規定の作成やルールの更新を検討する用意があると説明している。
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