- ブロックチェーンとキャッシュレス社会
- 中国最大手企業アリババのジャック・マー会長は、「キャッシュレス社会とブロックチェーン技術により、必要な資金を手に入れるために排除されることなく、持続可能で透明性のある平等な社会を目指す」と言及した。
ブロックチェーンとキャッシュレス社会
9月10日、1年後の電撃引退を発表した中国の電子商取引最大手、アリババグループ(阿里巴巴集団)のJack Ma (馬雲)会長は、「アリババ傘下のモバイル決済アプリ、アリペイ(支付宝=AliPay)と自分自身の仕事は、世界をキャッシュレス社会にすること」だと述べた。
中国のキャッシュレス化は急速に進んでおり、特にスマートフォンを使った”モバイル決済”の成長は目覚ましい。
特に中国都市部では、一般の店舗はもちろん、道端の屋台ですら、QRコードを使った支払いが可能なほどで、現金を持ち歩く必要性がほどんどないと言われている。 また、公共料金の支払いから給与の受け取りまでも、モバイル決済アプリで済ますことができる。
モバイル決済のみで、現金の受け入れが拒否されることも増えてきた首都「北京」では、通常の店舗での支払いはもとより、タクシーを呼び、その料金を支払うのもスマートフォンが必要となっており、「財布よりもスマホの充電器を持ち歩くほうが大切」との冗談も聞かれるという。
そして、そのモバイル決済アプリの主流となっているのが、アリペイであり、金融サービステクノロジー企業であるAnt Financial社によって運営されている。
アリペイは単純な決済だけでなく、投資機能(余額宝=ユアバオ)や融資機能(芝麻信用=信用スコアサービス)などとの連携も充実しており、個人向け総合金融サービスプラットフォームとしても注目される。
Ma会長は、このようなキャッシュレス化の流れを作り出すことを重視しており、その理想を次のように述べている。
「私は、キャッシュレス社会とブロックチェーン技術に特に注意を払っている。
私とアリババ、アリペイの仕事は、世界を”キャッシュレス社会”に移行させること。必要な資金を手に入れるために排除されることなく、持続可能で透明性のある平等な社会だ。」
そして、中国のキャッシュレス化の原動力となったと考えらるのが、スマートフォンの爆発的な普及とそのスマートフォンを利用した新しいサービスを積極的に受け入れたミレニアム世代である。
アリペイを運営するAnt Financial社の Ray Chan副社長は、同社の目を見張るような成長は、ミレニアム世代によるところが大きいとし、次のように述べている。
企業戦略の五つ柱
アリババグループは、企業戦略の五つ柱として、「ブロックチェーン 、AI、 セキュリティ、IoT,、クラウドコンピューティング」をあげ、その頭文字をとった「BASIC」と呼ばれるガイドラインを昨年公開している。
Ma会長は、ビットコインには懐疑的なことで知られているが、その技術基盤であるブロックチェーンは、「実に強力」であると述べている。
そして、Ma会長のブロックチェーン 技術への信頼の大きさは、アリババグループがブロックチェーン技術を利用した数々のプロジェクトに関わっていること、そして、ブロックチェーン技術関連の特許出願数において、ずば抜けていることに顕著に現れている。
2017年のブロックチェーン関連特許出願数、406件のうちの43件は、アリババグループによるもので、中国人民銀行の68件に次ぐ第2位となっている。 その中でも、Ant Financial社は独自のブロックチェーン ・オープンプラットフォームのThe Ant Financial blockchain 2.0をリリースするなど、活発な技術開発を行っている。
キャッシュレス化の基盤を作ることに貢献しているアリペイは、「アリペイ支払いでキャッシュバック」や、「無現金週間」キャンペーンで、抽選で純金をプレゼントするなど、その普及のために莫大なマーケティング費用を投入した経緯がある。
また、ユーザーがスキャンする形の店舗での決済手数料は無料など、ユーザーにとって魅力的なサービスを提供している。
その推進活動の背後には、もちろん、Ma会長のキャッシュレス社会の理想もあるだろうが、マーケティング費用の対効果価値が生み出されるのは、アプリを通して収集されたユーザーデータ=ビッグデータであり、そのデータのAIによる解析により生み出されるマーケティング戦略であると考えられる。
これは、Jack Ma氏の談であるが、AIとともにブロックチェーン技術が、この野心的な目標を達成するのにひと役買うことを信じているのは、ほかならぬMa氏ではないだろうか。