「ETHは有価証券に該当しない」
米国の金融規制機関であるCFTC(商品先物取引委員会)のロスティン・ベナム委員長は24日、ニューヨーク近辺で複数のイベントに参加して暗号資産(仮想通貨)の法体制についてコメントした。
米SIFMA(証券業金融市場協会)の年次会合で登壇したベナム委員長は、暗号資産市場で時価総額2位の「イーサリアム(ETH)は有価証券に該当しないと提案した」とコメント。
その上で、「SEC(証券取引委員会)のトップであるゲンスラー委員長はそうではないと考えているだろう。少なくとも、一方の見解を明確に宣言しているわけではない」とリップル裁判の事例を暗示した。
SECは2020年12月、「米リップル社のXRP販売は、”未登録の有価証券”による資金調達に該当する」として提訴した。
これに対しリップル社は、同社が関与しなくてもXRP台帳は存続できており、トークン価格は企業のパフォーマンスと関係していないなどと否定。裁判は約2年に渡り続いており、早期解決に向け、2022年9月にはSECとリップル社双方から略式判決の申し立てがなされた。
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仮想通貨規制の課題
また、同日にはラトガース大学や小村圭氏の所属するローウェンスタイン・サンドラー法律事務所などが主催したイベントでも登壇。
仮想通貨相場が「春先の急落前の状態に戻るのは時間の問題」とコメント。経営破綻したレンディング大手のセルシウスやベンチャーキャピタルのスリー・アロー・キャピタル(3AC)、その他のファンドのような状況の中で規制面が追い付いていなかったが、今度(そのような暴落が発生する際には)「しっかり準備した状態で迎えたい」と方針を語った。
その上で、CFTCは現状の仮想通貨業界における課題の一つとして一つの仮想通貨企業・団体が複数の役割を担っている点はリスクが高いと指摘。以下のようにコメントした。
クリプト業界における取引所は、取引所だけではなくディーラー、カストディアン、そして銀行などが一体になったものと考えられる。
伝統金融では多くの矛盾が生じる為、こうした状況は本来ならあり得ない。そのため、このような課題は解決する必要がある。
このような点は市場構造に関する多くの興味深い政策的な問題を提起している。だからこそ、私は従来の金融市場と遜色ない法的な枠組みを考案する必要があると思う。
ベナム委員長は以前から仮想通貨市場でも伝統的な金融業界と同様の法整備が必要と述べてきた。22年10月に発表された年次報告書ではCFTCの過去1年間における執行措置の20%以上が仮想通貨関連だった。
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SECとCFTCの管轄争い
ICOや多数の仮想通貨プロジェクトを1934年に策定された米証券法に基づいて、未登録の有価証券として取り締まりを執行し、ビットコイン(BTC)の現物ETFを承認していないSECとは対照的に、CFTCは仮想通貨を早期からコモディティとして認知するなど、友好的な姿勢が目立つ。
現職のベナム委員長の就任以前のジャンカルロ元委員長は2017年にビットコイン先物を承認したことなどから、「クリプト・パパ」の愛称で界隈から親しまれてきた。
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バイデン政権の発足時に就任したSECのゲリー・ゲンスラー委員長は24日のスピーチでも仮想通貨業界における「集権化」を問題視していると言及。引き続き多くの仮想通貨が事実上の有価証券とみなされるケースが存在すると述べ、規制していく姿勢を強調していた。
米議会では今夏、仮想通貨に関する多数の法案が多数提出されてきたが、中間選挙が11月初頭に控える中、法案が議論される可能性は低くなっている。
超党派の女性議員らが提出した「包括的なデジタル通貨法案」やCFTCの監督権限を拡大する法案など、業界にとって肯定的なものある中、バイデン大統領が22年3月に命じた大統領令で提出が見込まれる政府機関のレポートなどのファクターも絡んでくると言える。