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AIによる2028年経済崩壊シナリオに米金融大手が反論、世界で議論白熱

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 2028年の大量失業シナリオを否定
  • AIは人間を代替せず「補完」に

AIの劇的な進化がもたらすもの

世界有数のマーケット・メーカーであるシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)は24日、シトリニ・リサーチによるディストピア的な人工知能(AI)進化と経済崩壊のシナリオ「2028年世界知能危機」に対し、正式な反論を発表した。

シトリニ・リサーチはSubstackで15万人のサブスクユーザーを抱える独立系マクロ経済・テックアナリスト。23日に発表された記事は、AIの急速な進化が、2028年までにホワイトカラー労働者の大量失業を引き起こし、失業率10%以上、S&P500株価の急落、消費崩壊などの経済危機が起きるという仮定のシナリオを描いたものだ。

2028年の未来から現在(2026年)を振り返るマクロ経済メモという形式をとったこの記事では「今朝の失業率は10.2%と発表」や「S&P500指数の累積下落率は2026年10月の高値から38%に」といった具体的な数字の提示から始まる。「わずか2年で世界経済は激変し、かつての常識は崩壊した」と続き、危機以前の経済を冷徹に事後分析する試みとして構成されている。

シトリニ・リサーチは、これは「思考実験」として書かれたシナリオであり予測ではないと強調。「自分が間違っていることを強く願って書いた初めての記事」だと述べている。

しかし、このAIによる既存経済の崩壊を事後分析するというアプローチで書かれたこの記事は、市場に大きな不安を呼び、AIによる代替リスクを指摘されたセクター(SaaS企業や決済ネットワークなど)の株価急落を招いたとされる。

関連:「AIによる破壊的イノベーション」と「脱グローバル化」が仮想通貨市場の重要な要因に=ウィンターミュート

シタデルの反論

シタデル・セキュリティーズのグローバル・マクロアナリストであるフランク・フライト氏は、「2026年世界知能危機 」と題した洞察記事を発表し、シトリニの論考スタイルを踏襲するかたちで、各論点を丁寧に論駁した。

フライト氏は、未来シナリオではなく「現在のデータ」から分析を始める。

2026年時点で、米国失業率は4.28%であり、AI関連設備投資はGDPの約2%(約6,500億ドル)を占め、AI関連商品価格が2023年1月以来65%上昇した。

米国内で建設予定のデータセンターは約2,800件に上るが、AIによって代替されると予測されるソフトウェアエンジニアの求人件数は、前年比11%増と拡大している。

同氏は、技術が進歩することと、それが経済全体に急速に浸透することとは全く別の問題だと主張。「差し迫った雇用破壊」という物語はAIの導入が指数関数的に加速するという前提に依存していると指摘する。

しかし、歴史的に見れば技術革新は直線的ではなく、S字カーブを描いて進展していく。初期の導入は高コストで時間がかかる。その後コスト低下やインフラ整備が進み成長は加速するが、最終的には飽和状態に達し、成長は鈍化する。

市場は直線的な技術の普及加速を予測しがちだが、統合コスト、規制、収益性で導入のペースは停滞することが歴史的に示されている。そして、導入ペースが緩やかであるほど、AIによる急激な雇用代替のリスクは低くなると同氏は指摘した。

さらに、ホワイトカラーの業務を代替するには、現在の利用レベルを大幅に上回る膨大な計算リソースが必要となる。急速に自動化すると、コンピューティング需要も増加し、限界費用を押し上げる。そのコストが人の雇用コストを上回る場合、人間からAIへの置き換えは起こらず、自然な経済的限界が形成されていくと同氏は説明。以下のように述べた。

たとえアルゴリズムが自己補完的に向上したとしても、経済的な導入・展開は、物理的な資本、エネルギーの供給、規制当局の承認、そして組織の変化といった制約に縛られ続ける。能力が再帰的に向上したからといって、導入が再帰的に進むわけではない。

フライト氏は、過去の技術革命と同様に、AIは人間の労働者に取って代わるのではなく、「多くの分野で労働力を補完する存在となる可能性が高い」と述べた。「この議論を正しく捉えるには、Microsoft Officeの登場はオフィスワーカーを補完するものだったのか、それとも代替するものだったのか、という問いにシンプルに答えることができる」とフライト氏は付け加えた。

関連:アーサー・ヘイズ、AIによる金融危機を警告 ビットコインは「流動性の火災報知器」

さまざまな反論

ライオントラスト・アセット・マネジメントのグローバル・イノベーション運用チーム共同責任者クレア・プレイデル=ブヴェリー氏は、新たなテクノロジーは一部の雇用を奪う一方で、新しい職種も生み出されていると指摘。シリコンバレーでは、2年前には存在しなかった、プロンプトエンジニアや推論最適化の専門家など、新しい職種が生まれていると述べた。

ドイツ銀行のマクロリサーチ・テーマ別戦略責任者ジム・リード氏は、シトリニの議論は確固たる証拠よりも物語性や感情的な訴えに大きく依存していると批判。ホワイトハウス経済諮問委員会議長代行のピエール・ヤレド氏は、シトリニの記事は「興味深いSF作品だ」と言い切った。その上で、内容を精査すると、経済学の基本的な会計原則に反する部分があると指摘した。

また、フィデリティ・インターナショナルのマクロ戦略責任者、サルマン・アーメド氏は、政治指導者らは、AIによって職を失う労働者を守ために行動するだろうと述べ、急激な大量失業シナリオを否定した。さらに、莫大なエネルギー供給の限界や、既存システムとの統合コストといった物理的限界により、シトリニで言及されたような労働市場への突然のショックは抑制されるだろうと付け加えた。

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