ビットコイン(BTC)トレジャリー企業のメタプラネットは3月12日、完全子会社メタプラネット・ベンチャーズ(Metaplanet Ventures)を通じ、日本円建てステーブルコイン「JPYC」の発行元であるJPYC株式会社のシリーズBラウンドへ最大4億円を出資する基本合意書を締結したと発表した。出資は2026年4月に実施された。
CoinPostはこの提携を機に、メタプラネット代表執行役CEO・取締役会議長のサイモン・ゲロヴィッチ(Simon Gerovich)氏と、JPYC株式会社代表取締役の岡部典孝氏の両名にインタビューを実施した。両者が語ったのは、単なる資本提携を超えた「ビットコイン経済圏と日本円の融合」という構想だ。
提携の経緯
メタプラネット側です。私たちはビットコイン企業として、取引・決済を含むエコシステム全体において、オンランプ・オフランプの重要性を常に意識していました。日本でその役割を担える企業として、規制上の課題に長年取り組んできた岡部さんのJPYCを見つけ、Xを通じてコンタクトを取ったのが始まりです。日本初のライセンス取得済みステーブルコインとして、ビットコインのインフラ層において極めて重要な役割を果たすと確信していました。
私たちとしても、ビットコインエコシステムとの接続は以前から課題として認識していました。JPYCをビットコインネットワーク上で発行できないか、といった構想も以前から温めていましたが、リソースの集中が必要なため準備が追いついていなかった。
2025年8月にライセンスを取得し、シリーズBの資金調達を進めるタイミングで、日本最大のビットコイン企業であるメタプラネットさんからLOI(意向表明書)をいただいたことは非常に意義深かったです。株主総会でJPYCエコシステムとメタプラネットエコシステムが繋がる大きな絵を描けたことも、大きな興奮の一つです。
メタプラネットの25万人の株主は、すでにビットコインや仮想通貨への理解度が高い方々です。実際、メタプラネットの株主がJPYCの口座を開設してくださったり、JPYCの仕組みを広めてくださるケースがすでに生まれています。まだ何も仕掛けなくても相乗効果を感じています。質・量ともに非常に親和性の高い株主基盤です。
左:サイモン・ゲロヴィッチ氏(メタプラネット)、右:岡部典孝氏(JPYC)
ビットコインとステーブルコインの関係
コインの表裏というイメージがわかりやすいと思います。一方にビットコインという資産があり、もう一方にトランザクションを可能にする決済手段がある。ステーブルコインなしにはビットコインエコシステムは機能しません。米国でエコシステムが発展している理由の一つは、USDTやUSDCという大型ステーブルコインの存在です。日本にも同様の存在が必要で、それがJPYCです。
具体的な活用モデルとして、ビットコインを担保にJPYCを借り入れ、日常の支払いに使うというレンディングの仕組みが考えられます。ビットコインの価値は上昇し続ける一方、ステーブルコインの債務は固定されるため、資産価値を損なわずに消費できる。
私は9歳の娘に「ビットコインの第一ルールは絶対に売らないこと」と教えていますが、売らずに価値を活用できるこのモデルは非常に理にかなっています。今の日本にはまだこうした市場が存在しないので、これから構築されていくことを楽しみにしています。
エルサルバドルではDaimoなどのPSP(決済サービス提供事業者)を通じて、ビットコインネットワーク上でJPYCが利用できる環境がすでに生まれています。両エコシステムが繋がれば、世界規模の機会が広がります。
また、ビットコインを売らずにJPYCを借りることは、売却ではないため課税イベントが発生しない、つまり税務上のメリットもあります。日本の個人の税率は非常に高いので、この点は多くの方にとって重要な要素になると思います。
政府は法定通貨で課税しますから、法定通貨との接点は引き続き必要です。だからこそビットコインとJPYCの協業が意味を持つのです。
メタプラネット・ベンチャーズの投資戦略
今回はメタプラネット・ベンチャーズが今後2〜3年で総額40億円を国内ビットコイン関連インフラ企業に投資する計画の第一号案件です。投資原資はビットコイン保有から生まれたインカムであり、BTC購入資金からの転用ではありません。株式希薄化もない。投資対象として考えているのは、決済・レンディング・カストディ・デリバティブ・ステーブルコインなど幅広い領域です。
投資先の選定基準は3点あります。まず規制の枠内で事業を構築していること、規制を回避しようとする企業は対象外です。次にビットコインとの関連性があること。そして長期的・スケーラブルなビジネスを構築できる優れた創業者であること。岡部さんはまさにその条件を満たしています。
また、国内子会社はベンチャー投資にとどまらず、起業家向けのインキュベータープログラムや、開発者・研究者・コミュニティ関係者へのグラントプログラムも運営します。グラントは株式取得なしの純粋な贈与で、月例ミートアップを主催してビットコイン教育に取り組む方なども対象になります。
アジアと欧米の資本市場を繋ぐ資産運用プラットフォームを目指しています。私が最も注目しているのは「デジタルクレジット」という新しい商品カテゴリです。ストラテジー社が展開する「STRC」——ビットコインを担保に安定した高配当を提供する優先株は安定した価格と固定配当を持つ商品で、現在年利11.5%を提供しています。
チームは投資銀行やヘッジファンド出身のメンバーで構成されており、アジアと欧米の資本市場を繋ぐ橋渡し役を目指しています。具体的な取り組みについては、準備が整い次第、順次発表していきます。
サイモン・ゲロヴィッチ氏(メタプラネット)
ビットコイントレジャリー企業の現状と競争環境
ストラテジー社が5年前に先駆者として始まり、私たちが2年前に続きました。昨夏には100社を超える企業が一気に参入しています。全く同じ戦略で競合が増えると差別化は難しくなりますが、私たちには日本市場というユニークなポジションがあります。円建ての資本コストが米国より低いため、より有利な条件でビットコインを積み上げることができます。
また、急成長する株主基盤、そして実際の営業利益を持っていることも大きな強みです。単にビットコインを保有するだけの企業とは異なります。
新規参入の小規模プレーヤーが継続できなくなるケースは出てくるかもしれません。ただ大局的に見れば、世界中でより多くの人がビットコインを学ぶことが重要です。個人投資家による保有は今後も増加すると見ています。
最も注目しているのは国家による購入です。エルサルバドルはその先駆けですが、他にもビットコインを購入し始めている国があります。金が伝統的な国家の価値保存手段だったように、ビットコインがその役割を担う時代が来る。最後にビットコインを買う国が最も弱い国になる、という競争原理が働くことになるでしょう。
JPYCの取り組みと今後の展望
取引量は順調で、1日数十億円規模の取引が行われており、過去には1日200億円を超えた実績もあります。ただ課題は流通残高の伸び悩みです。オフランプ、つまり日本円への換金目的の利用が多く、発行残高が積み上がりにくい構造が続いています。流通量と流動性を高めるには、他のエコシステムとの接続が不可欠です。
規制面では2点、要望しています。一つはJPYCを「金銭」とみなす扱いを他省庁にも拡大すること。金融庁はすでにほぼ金銭として扱っていますが、他省庁でも同様の扱いが広がれば、たとえばJPYCでの出資が可能になるなど、新しい取引形態が合法化されます。
もう一つが、電子決済手段の発行・償還に課される1回100万円の上限規制の撤廃です。これはもともと銀行への配慮から設けられた歴史的な名残で、世界展開・通貨主権確保の大きな障壁になっています。
ただし現行法の範囲内でも活用できる仕組みはあると考えています。JPYCとビットコインの直接交換は暗号資産交換業に該当するため、この制限の対象外になると予想しています。ビットコインを担保にJPYCを借りるレンディングも発行・償還ではないため制限がかからない。海外取引所でのJPYC/BTC取引も日本法の管轄外です。「100万円制限の外で大きなビジネスができる可能性がある。これを脱法的と言うのではなく、きちんと認めてほしい」と規制当局にお伝えしています。
当社は現在、第二種資金移動業者として登録を受けておりますが、さらなる事業拡大を見据え、現在は第一種資金移動業ライセンスの取得準備も進めております。取得後は1億円・10億円規模の発行・償還が可能になる見込みです。
日本はもともと発行体による利回り付与を禁止しています。ただ、発行体以外、たとえば取引所などが利回りを提供することは認められています。
SBI VCトレードが2026年3月より国内初のUSDCレンディングを開始し、サービス開始記念の初回募集では年率10%、通常時も年率5%程度の利回りを提供しています。こうした先行事例がすでに生まれています。
JPYCも電子決済手段ですから、将来的に同様の仕組みは可能だと考えられます。また社債発行を通じた間接的な利回り還元も検討できます。米国の議論が整理されることは、日本の事業者にとって不利にはならないと思っています。逆に、ステーブルコインの貸し借りに関しては、日本は今のところイノベーションを重視する比較的緩やかな規制のもとにあり、先進的な環境とも言えます。
岡部典孝氏(JPYC)
日本の規制環境と市場の将来
日本は2009年、2010年からデジタル資産の先行者でした。FTX破綻時にFTX Japanだけが顧客資産を完全保護した事実が、日本の規制の堅牢さを証明しています。保守的なアプローチは正しかった。
USDCやUSDTが世界的な成功例となったことで、日本も独自のステーブルコインが必要だという確信が生まれた。今後ビットコインが金融資産として正式に認定されれば、日本での活動は爆発的に増加すると見ています。規制当局へのメッセージとしては、「今こそグローバルステージでリーダーになるチャンスを逃さないでほしい」ということです。
自民党内でも規制緩和の議論が進んでいます。AIが発展する世界においてデジタル日本円の重要性は高まる一方で、100万円制限をいつまでも維持することへの疑問は政界でも共有されています。銀行ともコミュニケーションを取りながら、緩和の方向性についてディスカッションを続けています。最終的には政治家と金融庁の調整が鍵になります。
MSCI(世界的な株価指数提供企業)が昨年末、デジタル資産企業を指数から除外しようとしたものの、市場参加者の意見を聞いた結果、除外を見送りました。JPX(日本取引所グループ)も同様の評価を行っており、現在パブリックコメントを募集しています。
一点明確にしておきたいのは、TOPIXから除外されるという議論ではなく、デジタル資産企業が将来的に追加されるかどうかという議論だということです。今年追加されなくても、それが永続するわけではありません。
重要なのは、ビットコインをコアの財務資産と位置付けつつ、その周辺でキャッシュを生む事業を構築することです。当社にはすでにビットコイン関連事業において営業利益を計上しており、今後もこうした取り組みを積み重ねることで、規制当局や取引所にとって理解しやすく、馴染みのある企業像へと発展していけるものと考えております。
短期・長期ビジョン
短期では1年以内に、複数の仮想通貨交換業者でJPYCが取り扱われ、100万円制限の範囲外でビットコインが購入できる環境を実現したいと思っています。これはメタプラネットの株主にとっても、JPYCのユーザーにとっても、双方にメリットがある。パーミッションレスで繋がれるオンチェーンの特性を活かせば、1年以内に大きく進むと確信しています。
長期的には、ビットコインを担保にJPYCを借りるレンディング市場の構築、訪日外国人がビットコインをJPYCとして国内で使い、消費税還付もJPYCで受け取れるようなエコシステムを目指しています。「この1年が日本のオンチェーン金融にとって重要な1年になる」という思いは、サイモンさんとも共有しています。
長期的な目標から話すと、日本のエコシステムを共に構築していくことに尽きます。ステーブルコインはビットコインのインフラ層において不可欠な存在です。機能するステーブルコインなしには、ビットコインの上に何も構築できない。
私たちには現在25万人の株主がいます。この数はさらに増えていくと見ています。この株主基盤がJPYCのユーザーとして繋がれば、非常に大きな力になります。JPYCとの協業は資本参加にとどまらない形に発展させていきたいですし、岡部さんを全力でサポートしていきたいと思っています。
これから具体的なコラボレーションの可能性を話し合っていきます。可能性は無限大だと思っています。



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