はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

モネロ:ASIC問題から緊急ハードフォーク実施|分裂した通貨は5つ以上

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

匿名通貨MoneroがASICマイニングをめぐり分裂か
セキュリティに強みを持ち、世界中で広く支持されている仮想通貨Moneroが岐路に立たされました。ASIC耐性を維持する仕様変更に関して緊急ハードフォークが行われ、ASIC耐性を備えた新チェーンのMoneroや、分裂前のチェーンを引き継ぐMonero Classic(XMS)など、計5つ以上の通貨へ分裂しました。

仮想通貨の本質を脅かすASICとは

今回の問題に言及するにあたり、ASICの抱える問題について触れなくてはなりません。

ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの頭文字をとったもので、「特定の目的のために作られた集積回路」という意味を持ち、マイニング関連以外にPC関連機器にも搭載されているチップです。

仮想通貨関連で用いられるASICは、マイニングを行うために最適化されているチップのことを指し、PoW方式のマイニングアルゴリズムに対応しています。

ASICは一部のマイナー間に非常に人気なマイニングチップです。

その理由として、ことマイニングの性能に関しては、GPUやCPUなど既存の機器に使われていたチップとは比べ物にならないほど高性能だからです。

ASICの利用により、コストを下げ、かつ大量にマイニングを行うことができますが、その一方で大きな問題があるのも事実です。

仕様変更によるASICの形骸化

一つは技術的な問題です。

ASICのマイニング性能が高い理由は、その機能を一部に特化しているからです。

GPUやCPUは、ASICと比較して、そのマイニング性能は劣ります。

しかも、マイニングを行うには非常に高性能なチップが必要なため、ユーザーの負担はより膨らんでしまいます。

その一方で、これらのチップは柔軟性を持っており、容易にブロックチェーン技術の仕様変更にも乗り切ることができるのです。

しかし、ASICは変化に弱く、僅かな仕様変更により使用が制限されてしまう事があります。

これは仮想通貨の今後を考えた場合、大きな問題といえるでしょう。

仮想通貨の黎明期につくられたビットコインでさえ、いまだに試験的な段階であり、今後も継続的に仕様変更が行われる予定です

仕様変更や改善は仮想通貨の有用性を今後も担保していくためにも重要なことです。

しかしながら、ASICを利用したマイニング方式ではこれに対応していくことができない可能性があります。

ASICの製造状況

もう一つは、現在のASICを搭載したマイニング機器の製造環境における問題です。

現在ASICは一社独占といえる状態にあり、さらに規制の強い中国に拠点を置くビットメイン社がその製造を独占しています。

昨今の仮想通貨人気の高まりを受けてか、仮想通貨ASICの生産に使うチップに関して、ビットメイン社はGPU大手のNVIDIAの営業利益を上回ったことでも有名です。

仮想通貨の本来的な役割や特徴の一つに非中央集権的で、既存の金融市場のように特定の利益団体や国家の影響を受けづらいというものがあります。

ASICマイニング機器はブロックチェーン技術の外部の機器であり、表面的には、仮想通貨の有用性を揺るがすものではないでしょう。

しかし、マイニング機器は仮想通貨の根幹に関わり、それが一社独占の状況下にあることは、容易に利権構造が出来上がってしまい、仮想通貨の仕様、方向性が同社に左右されてしまう可能性を示唆しています。

その一つが、ビットコインとビットコインキャッシュの分裂であったことは皆さんがご存知の通りです。

Segwitはスケーラビリティ問題、マリアビリティ問題というビットコインが抱える大きな問題を解決するために期待された技術です。

ですが、Segwit実装によって、従来ビットコインで行われてきたASICを利用したマイニングが困難になるという問題も抱えていました。

そのために、Segwit実装を反対したマイニングプール側と、当初の理想に基づき、Segwit実装を支持したビットコインコア派の対立が深まりました。

結果としてSegwitに対応するビットコインと、Segwitには対応せず、ブロックサイズの変更によってスケーラビリティ問題等の問題に取り組んだビットコインキャッシュが生まれ、ハードフォークが起こったのです。

ただ、こうした流れとは違い、当初からこのASICの流れに一貫して反対を続ける仮想通貨がありました。

それが匿名通貨として知られるMoneroです。

ASIC耐性維持に努めていたMonero

Moneroは、匿名性を重視し、圧倒的なセキュリティ体制を誇っています。

他の仮想通貨にはない強みを持ち、一部の富裕層など特定の層からの支持を集めていました。

もともとこのMoneroはASIC耐性という、ASICをマイニング方式に採用することができない特徴を持っており、これを維持するために徹底してきていたのです。

2018年2月11日、Moneroは公式にASIC対策のため、マイニングアルゴリズムを変更することを発表しました。

それは1年から2年間隔で、利用しているPoWタイプのアルゴリズムの仕様変更を行い、ASIC耐性を維持し続けていくというものです。

これはMoneroやその他仮想通貨が抱く懸念をよそに、機器の製造を続けているビットメイン社に対する、ある種の対抗措置でもありました。

この仕様変更後も、ビットメイン社は開発を続け、3月にはMoneroのマイニングアルゴリズムCryptonightに完全に対応したCryptonightASICを発表しました。

この事実を受け、Moneroはさらなる緊急の仕様変更を行っています。

Monero以外にもイーサリアムが、ASICに対する対策を講じており、創業者の一人がネット上でその使用変更に対して、ユーザーから投票を募ったばかりです。

イーサリアムでは過半数のユーザーが、ASIC耐性を維持した仕様変更に多くが賛同しました。

多くのイーサリアム投資家がASICに対抗するハードフォークに賛同
イーサリアムの創設者の一人であるVlad Zamfirが新たに行った投票によれば、多数のイーサリアムユーザーが、イーサリアム対応ASICを利用したマイナーを排斥するためのハードフォークへの賛同の意をを示しています。

しかしながら、Moneroではそうではなかったのかもしれません。

公式では80%ほどの支持が集まっているとしていましたが、結果として今回の分裂騒動が起こっています。

仕様変更を続ける運営側の仮想通貨がMonero、仕様変更を行わず、ASICへの対応を行うマイナーに根差したものがMonero Classic(XMC)となりました。

Monero Classic(XMC)とは

Monero Classicは、シンガポールのあるMonero支持団体(開発者や一部のマイナーを含む)によって始動しました。

Monero Classicの代表であるBento Tan氏は、Bitcoin Magazineの取材に対し、ASICの開発は健全なものであり、市場をより活性化させるために必要であると主張しています。

また彼は、ハードフォークによるASIC機器対策は、マイニングの中央主権化よりも大きなリスクを伴う可能性があると指摘しています。

さらに、上記のハードフォークに加え、以下の4つのハードフォークプロジェクトが始動しているようです。

  • Monero Classic(XMC)(上記の同名プロジェクトとは異なる)
  • Monero Original(XMO)
  • Monero 0(XMZ)
  • MoneroC

仮想通貨の有用性をどのようにして守るのか

今回のMoneroの問題だけでなく、仮想通貨はマイナー側の利権問題によって大きく動いてきた事実があります。

マイナーは仮想通貨の運用に必要不可欠ですが、その一方で昨今の仮想通貨の爆発的な市場価格の高騰によって、必要以上に金銭的なインセンティブが生まれてしまったのも事実でしょう。

金銭的な目的に重きを置きすぎれば、仮想通貨の基幹技術であるブロックチェーンの影響力は容易に無為になってしまう可能性もあります。

ただ、既存の大手企業が仮想通貨市場に参入していないため、こういった状況は今後健全化されていくかもしれません。

大手金融機関やIT企業の参入によって、仮想通貨を取り巻く環境がどのように変化していくか、そして各仮想通貨とASICを含むマイニング関連の問題を注視していく必要があります。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/02 火曜日
18:36
AIがスマートコントラクト脆弱性6億9000万円分を発見 防御活用にも期待=レポート
Anthropicの研究で、AIエージェントがスマートコントラクト脆弱性6億9000万円分を発見。2025年3月以降の34件で460万ドル相当の攻撃に成功し、新たに2件のゼロデイ脆弱性も発見。攻撃収益は1.3カ月ごとに倍増しており、防御活用が急務に。
17:42
FRBが3年半にわたる量的引き締め(QT)終了、仮想通貨市場に流動性改善の可能性
米FRBが12月1日、3年半にわたる量的引き締め(QT)を終了した。約2.4兆ドル規模の資産縮小後、仮想通貨市場への流動性改善が期待される。2019年QT終了時はビットコインが短期下落後に上昇した経緯があるが、専門家は政策効果の遅延やインフレ動向など不確実性に慎重な見方も示している。
16:04
走行映像でGARコインを還元 ドラレコアプリ「セトラス」が地方創生DXモデルを始動
セトラスが市民のドラレコ映像を行政業務に活用し、専用暗号通貨「GARコイン」で報酬を還元する地方創生モデルを発表。実証実験に参加する自治体を3枠限定で募集している。
13:55
コインベースへの情報開示請求が過去最多の1.2万件、欧米で協力要請急増 実態判明
コインベースが2025年透明性レポートを公開し、60カ国以上から12,716件の情報開示請求を受領し、前年比19%増加となったと報告した。米国の件数がトップだが、米国外からの請求は53%を占め前年比2%増加した。
13:15
米FDIC、ステーブルコイン規制「ジーニアス法」運用規則案を12月下旬に公表予定
米FDIC代行議長がステーブルコイン規制「ジーニアス法」の運用規則案を今月に公表する予定だと表明。トークン化預金や仮想通貨業界のデバンキング問題についても対処を説明した。
12:29
カルシ、ソラナ上で予測市場トークン化を開始 仮想通貨の流動性取り込みへ
米予測市場カルシがソラナ上で予測市場契約のトークン化を開始。オンチェーン取引により匿名性が向上し、開発者のサードパーティ構築も可能に。評価額110億ドル、約3500市場を運営する同社は仮想通貨ユーザーの流動性獲得を目指す。
11:00
米トランプ政権の仮想通貨特命官サックス氏、利益相反報道を否定
米トランプ政権のAI・仮想通貨特命官デビッド・サックス氏がNYタイムズの利益相反報道を否定した。名誉毀損専門の法律事務所に対応を依頼し、倫理規定遵守を主張している。
10:40
ゴールドマンがイノベーター買収、ビットコイン連動ETFも取得で仮想通貨事業拡大
ゴールドマン・サックスがETF大手イノベーターを20億ドルで買収すると発表した。買収にはビットコイン連動ファンドQBFも含まれ、ゴールドマンの仮想通貨関連商品ラインアップが拡大。
10:14
リップル、シンガポールでライセンス範囲拡大 XRPとRLUSDによる決済事業を強化
リップルがシンガポール金融管理局から主要決済機関ライセンスの拡大承認を取得。XRPとRLUSDを活用した決済サービスを強化。アジア太平洋地域のオンチェーン活動は前年比70%増で、同地域での事業拡大を加速。
10:02
ビットコイン100万円幅急落、yETH流出事故で大規模清算|仮想NISHI
ビットコインは軟調な推移が続いている。1日には一時8万5,000ドルを割り込み、日本円ベースでも24時間比で100万円超の下落となった。背景には、イーサリアムが「フサカ・アップデート」を目前に控えロングポジションが積み上がる一方、Yearn FinanceでyETHの流出事故が発生し、ロングポジションの清算が連鎖したことがある。
09:20
リミックスポイント、12億円規模のWeb3関連事業投資を中止へ
リミックスポイントは、事前に予定していた12億円規模のWeb3関連事業投資の中止を決定。仮想通貨ビットコイン購入以外の調達資金使途を変更した。
08:40
ハッキング被害から3.7億円相当回収、ヤーン・ファイナンス
ヤーン・ファイナンスがyETH関連のハッキングで盗まれた資産のうち約240万ドル相当を回収した。回収作業は継続中で被害者への返還を予定している。
07:35
mNAV1倍割れでも「最後の手段」に、ストラテジーがビットコイン清算条件を明示
ストラテジー社のフォンレCEOがビットコイン売却の具体的条件を初めて明言した。株価が保有資産を下回り資金調達が不可能になれば売却も選択肢の1つとなる。
07:05
ストラテジー、約2240億円の米ドル準備金を確保
ストラテジー社は、優先株の配当と負債の利子の支払いのために約2,240億円の米ドル準備金を確保したことを発表。目的を説明し、仮想通貨ビットコインの買い増しも報告した。
07:00
チェーンリンク初のETF、NY証券取引所に上場予定
仮想通貨チェーンリンク(LINK)に投資する上場投資信託(ETF)が12月3日にニューヨーク証券取引所で取引を開始予定。NYSEアーカがグレースケール・チェーンリンク・トラストETFの上場を認証した。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧