CoinPostで今最も読まれています

改正金商法の解釈次第で「仮想通貨の板取引規制」に深刻な懸念、JCBAが緊急提言を提出

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨取引所の「板取引規制」に深刻な懸念
2020年上半期に施行予定とされる「改正金商法」に伴い、ビットコイン(BTC)など国内仮想通貨取引所のにおける板取引が全面規制される可能性が浮上。JCBAが緊急提言を提出した。

仮想通貨取引所の「板取引規制」に深刻な懸念

2020年上半期に施行予定とされる「改正金商法」に伴い、ビットコイン(BTC)など暗号資産デリバティブ取引における板取引が、今後規制される可能性が浮上した。

これに対し、国内最大手デリバティブ取引所「bitFlyer」の元CEOである加納氏らは、JCBAとして暗号資産ビジネスにかかわる事業者の立場から、この新たな市場の健全な成長のため、一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)を通じて提言を行った。(提言書

証券会社が保有する「第一種金融商品取引業」の傘下でない仮想通貨取引所、あるいは(解釈次第で)証券会社傘下の取引所も含め、同法に規制されるFX(外国為替証拠金取引)と同様に、板取引が出来なくなる恐れが生じており、金融庁の「拡大解釈」ではないかと市場から問題視されている。

これに対し、仮想NISHI氏は、以下のような見解を述べている。

TAOTAO 荒川社長の見解

仮想通貨取引所TAOTAOの荒川氏は、本件について寄せられた質問に対し、以下のように回答した。

仮に「板取引=市場開設行為」となってしまうと、現行の金商法上は、「第一種金融商品取引業」の登録では駄目で、「取引所」としての免許を取得しなければならなくなります。(金融商品取引法第2条第16項)仮に「公設」取引所(東証や大証、TFXなど)を想定すると、相応に取得のハードルは高いものと想像されます。

現在はJCBAや、仮想通貨交換業協会(JVCEA)を通じてこの論点に限らず、金融庁と協会や事業者間での対話がなされています。今後は、その議論がある程度方向性が見えたところで、金融庁から府令などについてのパブコメが出され、最終的に法律として施行されていくことになるのが通例です。また、改正金商法や資金決済法の施行時期は、来年4月とも6月とも言われていますが、まだこれも明らかにされていません。

ちなみに、JCBAで立ち上げられた「デリバティブ部会」の部会長は弊社取締役が務めています。今後も議論や提言はJCBAを通じてお知らせさせていただくことになると思います。ただ、こと本件に関しては先般より「板取引を検討している」旨のお知らせもさせていただいていますので、弊社としても最大の関心をはらって取り組んでいくつもりです。

JCBAには、暗号資産交換業者のみならず、銀行、金融商品取引業者、暗号資産に関連するビジネスに従事する事業者やビジネス参入を検討する事業者、法律事務所や会計士事務所など、合計115社(2019年9月6日時点)が会員として加入している。

提言書では、「板取引は、店頭デリバティブ(Over-the-counter derivatives:OTC取引)として整理されるべきであり、当該取引を行う場を提供することは、金融商品市場の開設行為には当たらないと解されるべき」だと強調。金商法の規制対象外であるとしている。

提言骨子

▶︎暗号資産デリバティブ取引におけるオーダーブックを用いた取引(価格優先・時間優先の原則に従って注文をマッチングさせる取引)は、店頭デリバティブ取引として整理されるべきであり、当該取引を行う場を提供することは、金融商品市場の開設行為には当たらないと解されるべきである。

▶︎暗号資産デリバティブ取引の履行として行われる暗号資産現物の交換取引(スワップ取引における元本交換、現渡の先物取引やオプション取引など)については、暗号資産交換業には該当しないと解されるべきである。但し、当該暗号資産現物を利用者のために金商業者が預かる場合には、係る行為は(暗号資産のカストディ業務として)暗号資産交換業に該当すると考えるべきである。

▶︎証拠金率(レバレッジ比率)に関しては、金融商品取引業等に関する内閣府令その他の関連法令において、特定の数字又は算定法を明記するのではなく、認定金融商品取引業協会の自主規制規則に具体的な定めを委ねるべきである。

出典:デリバティブ規制に関する提言書

翌年施行される改正金商法の影響

2019年5月31日、仮想通貨交換業者に対する規制強化などを盛り込んだ「資金決済法」と「金融商品取引法」の改正法が、国会で可決した。 改正金商法では、仮想通貨のデリバティブ取引が金融商品デリバティブ取引として定義されており、金融商品取引業のライセンスが必要となる。

同改正法が2020年6月までに施行される見通しであることを受け、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は、仮想通貨FX取引における証拠金倍率を4倍にする自主規制案を提出。bitFlyerは15倍から4倍にまで引き下げた。

仮想通貨特有のボラティリティの高さから、レバレッジ規制がかけられた格好だ。

JCBAは、改正金商法の問題点として、「オーダーブック方式によって暗号資産デリバティブ取引を行う場を提供する行為」が、原則禁止されている金融商品市場の開設行為にあたらないかを挙げている。(金商法第 80 条)。

また、「暗号資産デリバティブ取引において、オーダーブック方式での取引の場を金融商品市場と考えることには大きな弊害がある。」と指摘。公正な価格発見を制約する可能性があり、利用者保護の精神に逆行する恐れを指摘。「そのような場で、公正な価格形成がなさることは期待できない」とした。

金商法の法解釈について

金商法の法解釈については、提言書より重要箇所(反論の要旨)を抜粋してお伝えする。

金商法の条文解釈に基づけば、現在、暗号資産交換業者が提供している暗号資産CFD取引や海外の暗号資産交換業者が提供する暗号資産オプション取引などの暗号資産デリバティブ取引は店頭デリバティブ取引であって、これらの取引の場を提供することは、それがクォートドリブン方式(証券会社などマーケットメーカーが買い気配と売り気配を提示する方式)であるかオーダーブック方式であるかにかかわらず、金融商品市場の開設行為には該当しないと解することが可能。

オーダーブック方式によって暗号資産デリバティブ取引を行う場を提供する行為を金融市場の開設行為と考えることは、暗号資産デリバティブ取引における公正な価格発見機能を制約する可能性があり、業者と利用者との情報格差を拡大する可能性がある上に、我が国における暗号資産デリバティブ取引市場の健全な発展を阻害する可能性がある。

また、条文上も、当該行為が金融商品市場の開設行為と解釈されるものではなく、かかる解釈をすることは、却って従来の店頭デリバティブ取引の解釈と矛盾する可能性がある。よって、そのような解釈は実態的にも形式的にも妥当でないと考える。

デリバティブ取引は、一般に、レバレッジを利用した投機にも利用されるが、リスクヘッジ目的で用いられることも多い。

また、現物取引にデリバティブ取引が加わることで市場間相互に裁定が働くことにより流動性が向上し価格の安定が図られている。このデリバティブの機能は暗号資産デリバティブ取引にも同様に当てはまる。

従って、暗号資産の現物取引及びデリバティブ取引における利用者保護を図り健全な市場を育成するためには、過度な投機や不公正取引を抑制するとともに、リスクヘッジ目的の取引や市場の流動性向上のための取引を円滑に行うことができる環境を整えることが、金商法の理念に適う。

米国では、暗号資産現物を投資対象に組み入れる大学や年金が増加するなど、暗号資産はオールタナティブな金融資産として認知が進んでいる。また、金商法で暗号資産が金融商品に組み込まれ、金融規制の整備が進むことから、日本の金融機関や機関投資家の間で暗号資産現物及びデリバティブ取引が今後活発化する可能性が相当程度ある。

このような流れの中で、今後、暗号資産デリバティブ取引がリスクヘッジ目的で利用される場面が増えることやそれによる暗号資産現物取引及びデリバティブ取引の流動性向上が図られる可能性が相当程度ある。

当該取引が暗号資産交換業にも該当することとなると、これを扱うことのできる業者は、金商法上の兼業承認を得て金融商品取引業と暗号資産交換業の両方の登録を行う必要がある。仮にそうなると、当該取引への参入は難しくなり、少なくとも当面の間は市場の参加者が相当に限定されることになり得る。</p>

暗号資産現物取引のリスクヘッジとして行われるデリバティブ取引は、多くの場合、現物取引を伴う暗号資産デリバティブ取引であること、及び、市場間の裁定が働くは、主として現物取引を伴うデリバティブ取引であることに鑑みれば、暗号資産デリバティブ取引の履行に伴い行われる暗号資産現物の売買・交換を暗号資産交業として扱うことは、暗号資産デリバティブ取引のリスクヘッジ及び市場の流動性向上を阻害することになり、結果として利用者保護を損なう可能性が高い。

しかも、そのような意図がなくとも、より参入が容易な暗号資産デリバティブ取引における差金決済取引について現物を伴う取引よりも推奨することとなり、今回の法改正の趣旨に反した結果を招いてしまうおそれさえある。

仮にbitFlyerなど国内大手デリバティブ取引所で「板取引」が不可となった場合、有識者の方々も指摘するように、ボラティリティの高い特性を持つ仮想通貨市場における「価格発見機能」の喪失などから、市場透明性を著しく損ねかねない。

また、「販売所」形式の仮想通貨取引所は、初心者でも利便性が高いなどのメリットがある反面、スプレッド(購入価格と売却価格の差額)の都合上、個人投資家にとって不利な取引になりやすく、これを嫌気した”海外市場への資金流出”が加速することで、金融庁の掲げる「投資家保護の理念」と相反するおそれが高い。

レバレッジ規制にも苦言

またJCBAは、デリバティブ取引市場における「一律の証拠金率(レバレッジ比率)」についても、「暗号資産現物・デリバティブ取引市場は成長段階にあり、暗号資産のリスクの程度も市場の成長や時間の経過によって変化をしていくことが予想される。」「(このような)市場環境の変化に応じて柔軟にレバレッジ規制を調整する ために、各暗号資産の変動率の計算等に基づく証拠金率の算出及び、その定期的な見直しこそが各暗号資産に適用することが、利用者保護と健全な市場の育成に寄与する。」と苦言を呈し、外部環境の変化に応じた柔軟な規制を求めた。

CoinPostの関連記事

『日本の仮想通貨市場復活のために』業界最先端のトレーディングツール、デコチャート開発秘話
仮想通貨業界の有志が共同開発する、最先端の仮想通貨トレーディングツール「DECOCHART」プロジェクト。CoinPostの取材で、開発の舞台裏や今後のビジョンが明らかとなった。
金融庁長官、仮想通貨に関連したグローバル対応やブロックチェーン国際会議の主催に言及|フィンサム2019
金融庁長官は東京で開催中のFIN/SUM2019にて、暗号資産に関連したグローバル対応などを進めるとともに、G20議長国としてブロックチェーンラウンドテーブルなどの国際会議を主催する」などと言及した。
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
06/05 月曜日
14:40
バイナンスのWeb3起業家コンテスト、「zkPass」が優勝
大手仮想通貨取引所バイナンスは、メタバースで開催したWeb3起業家コンテスト「Build The Block」の優勝者を発表。ゼロ知識証明を開発する「zkPass」が助成金を勝ち取った。
12:39
露大手銀行ロスバンク、仮想通貨を利用したクロスボーダー決済サービスの提供開始=報道
ロシアの大手銀行ロスバンクは、同国の主要銀行として初めて、仮想通貨を利用したクロスボーダー決済システムの運用を開始した。同行はすでに企業及び個人の顧客との取引を試験的に行なっているという。ロシアのビジネス紙「Vedomosti」が報道した。
12:01
三菱UFJ信託銀行ら3社、ステーブルコインのクロスチェーン基盤構築へ
三菱UFJ信託銀行は2日、DatachainおよびTOKIと提携して、ステーブルコインのクロスチェーンインフラを構築していくと発表した。「Progmat Coin」を利用するトークンを対象とする。
11:58
ビットコインのボラティリティ、30日間変動率が過去最低水準に
米債務上限問題をめぐるデフォルト回避や利上げ停止観測で米株指数や日経平均株価が上昇する中、ビットコイン価格は今ひとつ冴えない。ボラティリティの30日間変動率は過去最低水準まで低下した。
06/04 日曜日
11:30
センチメント悪化でビットコイン下落、米ファンダ背景とした下げ止まりに期待|bitbankアナリスト寄稿
国内大手取引所bitbankのアナリストが、センチメント悪化で370万円付近まで下落した今週のビットコイン相場を解説。米ファンダメンタルズ好転で来週シナリオに楽観的な見方も。ビットコインチャートを図解し今後の展望を読み解く。ビットコイン・オンチェーンデータも掲載。
11:00
週刊ニュース|JPモルガンのBTC価格分析に注目集まる
今週は、JPモルガンのアナリストによるビットコイン価格分析について書いた記事が最も多く読まれた。このほか、国内仮想通貨取引所のトラベルルール対応など、一週間分の情報をお届けする。
06/03 土曜日
17:00
サンドウィッチ攻撃とMEVとは?
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム基盤の分散型取引所ユニスワップなどで猛威を振るい手数料高騰の要因となっているMEV。サンドウィッチ攻撃など、分散型取引市場の脅威について詳しく解説する
14:00
Uniswapの手数料分配案、合意に至らず
分散型取引所(DEX)Uniswapで、一定以上の取引量を処理する流動性プールに対し、手数料収益の分配先を変更し、コミュニティ全体に還元するという提案についての投票が終了した。
13:00
米Marathon、採掘ビットコイン量が前月比77%増加
ナスダック上場の米仮想通貨マイニング企業マラソン・デジタル・ホールディングスは最新の事業報告を発表。5月のビットコイン生産量はOrdinalsの台頭も背景に増加した。
12:00
米下院議員ら、仮想通貨規制を明確化する法案を発表
米下院の共和党幹部らは、ビットコインなど仮想通貨の規制に関する法律草案を発表した。証券とコモディティの区別など、仮想通貨規制の明確化を図る法案となる。
10:50
米コインベースデリバティブ、機関投資家向けにビットコイン等の先物取引を提供
米国のコインベースデリバティブエクスチェンジは、仮想通貨ビットコインとイーサリアムの先物取引を機関投資家向けに提供する計画を発表した。CMEによれば、22年は仮想通貨の先物・オプション取引の約33%が米国外で行われていたが、2023年には35%に上昇する傾向にある。
10:05
イーサリアム仮想マシン「Kakarot」、資金調達を完了
仮想通貨イーサリアムの仮想マシンKakarotを開発するプロジェクトは、プレシードラウンドの資金調達を完了。ヴィタリック・ブテリン氏や、L2プロジェクトStarkWareらが出資した。
08:40
米債務上限停止法案が大統領署名へ 米国株続伸
本日のNYダウは+701ドルと大幅に続伸。ナスダックも+139.7高で取引を終えた。米債務上限問題は法案が上院で可決されたことや強い雇用統計が好感された模様だ。
06/02 金曜日
15:59
札幌開催のWeb3カンファレンス「B Dash Crypto」、ピッチコンテストの結果は
Web3特化型カンファレンス「B Dash Crypto」が札幌で開催された。ピッチイベント「Crypto Arena」で優勝に輝いたのは、高速ブロックチェーンAptosとSuiで分散型取引所(DEX)アグリケーターとして機能する「Umi Protocol」だ。
13:13
オリーブオイル生産業者、DeFiプラットフォームでステーブルコイン建債券を発行
オリーブオイル生産業者ラマ・オリーブオイルは、分散型金融プラットフォーム「Obligate」を利用して、オンチェーン債券を発行した。この社債は、ユーロ連動のステーブルコイン「 EUROe」建で発行された。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
重要指標
一覧
新着指標
一覧