リップル社CEOインタビュー
米リップル社の最高経営責任者(CEO)、Brad Garlinghouse氏がYouTubeの暗号資産(仮想通貨)チャンネル「Thinking Crypto」に出演し、インタビューに答えた。現在、係争中の米証券取引委員会(SEC)の訴訟を中心に、仮想通貨に関わったきっかけから、ビットコインに対する思いなど、1時間弱にわたり見解を語った。
まず、SECの訴訟全般について、SECは事実及び法律において「間違っている」とし、これまで訴訟が進展する中で、少しずつこの「間違い」が明らかになってきていると述べた。また、司法プロセスは時間のかかるものだが、時間と共にSECとの対話を持つ機会も増えるため、より建設的な結果が出ることに希望を持っているとGarlinghouse氏は話した。
中でも、訴訟の進展に最も重要な要素は、この2〜3週間で下された裁判所の裁定だと指摘。SECがビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を有価証券と見なさないとする根拠に対して、リップル社側の証拠開示請求が認められたことに言及した。
関連:リップル訴訟に進展、裁判官がSEC(米証券取引委員会)に証拠開示手続きを要求
さらに、この訴訟がClayton前SEC長官の離任前日に起こされたことは、非常に苦々しいことだが、これまでの訴訟の進捗には満足しており、事実が「正しい結果」をもたらすだろうと述べた。なお、Clayton氏に対しては、「仮想通貨業界の友人でなかったことは明らかだ」と述べたのに対し、新長官として承認されたGary Gensler氏(MIT教授、仮想通貨・ブロックチェーンに精通)は、業界にとって「とてつもなく貴重な人材だ」と高く評価した。
XRP投資家がリップル社を支援
仮想通貨XRPの投資家グループが、訴訟への介入申請をした件について尋ねられると、Garlinghouse氏は、「自分にとってもリップル社全員にとっても驚きだった」が、非常に興味深い展開だと答えた。
また、同氏は、SEC訴訟によって150億ドル(約1.6兆円)という価値がXRP市場から流出し、多くの取引所がXRPの取引を一時停止するなど、エコシステムに破壊的な影響をもたらしたと批判している。
関連:「投資家保護に反する」XRP投資家ら、米SECに抗議【リップル裁判】
理想的な結末とは
番組のホストから、この訴訟の「理想的な結末は何か」と尋ねられたGarlinghouse氏は、仮想通貨規制の「明確性と確実性」だと答え、それこそ、リップル社が近年、繰り返しSECに求めてきたものだと述べた。そして、良きにつけ悪しきにつけ、裁判の決着をはっきりつけることで「明確性」を達成したいと強調した。
また、SECには規制整備という選択肢があったにもかかわらず、訴訟という形で規制に明確性をもたらそうとしているのは、非常に効率が悪い方法だと批判した。この訴訟で解決されるのは、リップル社の事例のみであり、前例は作るかもしれないが、他の仮想通貨のための解決とはならないという。
さらに明確な規制整備という観点からは、連邦議会による法律制定の方がより大きな効果を発揮すると付け加えた。
XRPエコシステムの進展
Garlinghouse氏は、SEC訴訟によって米国内では、大口の提携先であったマネーグラム社との関係解消など、逆風にさらされたと述べる一方で、昨年1年間のRippleNetのトランザクション数は300万以上を達成し、国外の顧客数は訴訟開始後も20以上増加したと評価。今年はリップル社が大きく成長する年になるだろうと自信をのぞかせた。
また、特定は避けたものの、世界中の多くの政府機関との対話を重ねており、「効率がよく拡張性のある」リップル社の技術は、プライベートなネットワーク構築にも適用できるため、中央銀行が独自のCBDCを発行・管理することも可能だと語った。
ビットコインについて
エネルギー効率が懸念されるPoWを採用しているという点において、ビットコインを指摘するGarlinghouse氏だが、ビットコインそのものに対しては支持しているだけでなく、「非常に強気」であると主張し、ビットコインの保有も明らかにした。そして、ビットコインに対して否定的な態度をとるBill Gates氏やYellen米財務長官を「是非、説得してみたい」と、その本気度を改めて強調した。
関連:「暗号資産業界のパリ協定」リップル社、ブロックチェーンの脱炭素化イニシアチブ参画へ