ハマスがビットコインで資金調達
米国下院で、パレスチナのイスラム主義政党「ハマス」が暗号資産(仮想通貨)を含む手段で資金調達することを防止する超党派の法案が提出された。52人の議員が支持しているが、まだ提出されたばかりで審議は初期段階だ。
法案を主導するJosh Gottheimer議員のプレスリリースによると、ハマスは国際的な経済制裁を回避して資金調達するためにビットコイン(BTC)を用いている。議員はウォールストリートジャーナルの報道も引用した。
ウォールストリートジャーナルによる最近の取材で、あるハマス幹部は、イスラエルとの対立が激化しイスラエルによるガザ空爆なども報道された5月以降、ビットコインによる寄付が急増したことを明かしている。
今回提出された「ハマス国際金融防止法」は、ハマスに財政的支援を提供する個人および団体についての制裁措置を定める法律を拡張するものだ。
ビットコイン寄付状況の推移
仮想通貨トランザクション関連の分析・セキュリティ企業Ellipticが最近発表したレポートによると、2019年1月以降、10万ドル(約1,100万円)を超えるビットコインがハマスの軍事部門であるアル・カッサム旅団(AQB)に寄付されているという。
2019年1月に、AQBはビットコインによる資金調達キャンペーンを開始。最初はビットコインのアドレスをソーシャルメディアに掲載する方法を取り、その後、寄付方法を説明する動画を掲載した資金調達専用のウェブサイトまで立ち上げていた。
2020年8月に、米国はこのウェブサイトや、資金洗浄に使われた仮想通貨口座を取り締まったと発表。しかしAQBはわずか1カ月後にビットコイン募金キャンペーンを再開していた。
上図が示すように、寄付額はしばらく低調だったものの、今年5月10日に新たな紛争が勃発して以降、寄せられた資金は急増している。
「ブロックチェーンは資金を追跡可能」
分析を発表したEllipticは、こうしたビットコイン利用事例があるからといって仮想通貨を「完全に禁止」することは間違いだとも指摘した。ブロックチェーンは、他の決済手段と異なり、リアルタイムで監視・追跡することができることを強調している。
Ellipticによると、アル・カッサム旅団(AQB)のような組織がこれらの寄付金を利用するためには、仮想通貨取引所などで法定通貨に変換する必要がある。しかしこのことは難しいと指摘。Ellipticは、現在ほとんどの取引所が厳しく規制されており、さらに多くの取引所はユーザーからの入金がテロ資金調達など不正活動に関連するかを分析するツールを採用していると理由を挙げた。
Ellipticは「テロ組織は、ビットコインを使って匿名で資金調達できると考えているかもしれないが、大きな間違い」だとして、次のように述べている。
法執行機関は、ブロックチェーン分析やその他の捜査技術を用いて、AQBなどテログループに属する数百万ドル相当の仮想通貨を追跡し、押収することに成功している。
AQBへの直近の寄付の場合、大部分は規制された大きな仮想通貨取引所に送られているので、こうした取引所は資金を凍結し、また法執行機関に関連情報を与えることもできるだろう。