GMXでAVAX価格操作か
暗号資産(仮想通貨)先物を扱う分散型取引所(DEX)GMXは18日、価格操作の報告を受けていると通知した。18日前後、アバランチ(AVAX)/米ドル(US)のペアがユーザーによる価格操作の被害を受けた形だ。
GMXの公式アカウントは次のように通知している。
We were notified of price manipulation of AVAX/USD on reference exchanges by monitoring systems and community members.
— GMX 🫐 (@GMX_IO) September 18, 2022
While we review the occurrence, open-interest for AVAX has been capped at $2m long / $1m short.
GLP and GMX trading markets continue to operate normally.
AVAX/USDで価格操作が行われたことについて、監視システムとコミュニティメンバーから通報を受けた。
状況を確認する間、AVAXの建玉はロング約2.8億円(200万ドル)/ショート約1.4億円(100万ドル)に制限している。なお、GLPとGMXの取引市場は通常通り稼動しているところだ。
取引所の仕組みに問題があった可能性
仮想通貨コミュニティからは、このような価格操作が起こった原因として、GMXの仕組みに問題があったとの意見も上がっている。
GMXは、永久先物とスポットの取引を低い手数料で提供している。ユーザーは初期証拠金の30倍まで借りることが可能だ。また、Chainlinkの価格オラクルを使用して資産の価格を取得している。
同取引所は「最小限のスプレッド(売買価格の差)とゼロ価格インパクトでポジションを立てたり取り下げたりできる」ことも特徴としていた。
このため、例えば次のような取引が可能だ。あるユーザーはGMXで5,000万ドル(71億円)相当のAVAXを買ってロングポジションを取り、トークン価値が上昇したところで、バイナンスなどの中央集権取引所で、4,000万ドル(57億円)相当のAVAXを購入。
さらに、GMXのロングポジションを清算して利益を得たら、2,000万ドル(28億円)のAVAXショートポジションを立て、トークンが値下がりしたところで4,000万ドル(57億円)相当で売却、さらに利益を得ることができる。こうした一連の取引を繰り返すことも可能だ。
仮想通貨融資大手Genesis Tradingのデリバティブ責任者Joshua Lim氏は、今回の価格操作について次のように分析している。
2/ last night, trader X successfully extracted profits from GMX's AVAX/USD market by opening large positions at 0 slippage, then moving AVAX/USD on other venues in their favor
— Joshua Lim (@joshua_j_lim) September 18, 2022
this created a sinusoidal pattern for over an hour as X switched from long to short 5 times pic.twitter.com/gcFDk4hAwW
価格操作を行ったトレーダーは、GMXのAVAX/USDマーケットから、スリッページ0で大きなポジションを取り、他の取引所のAVAX/USDを自分の有利になるよう動かすことで利益を引き出すことに成功した。
このトレーダーが5回、ロングからショートに切り替えたため、1時間以上にわたって価格の波が観察される。
Lim氏は、トレーダーが約7,000万円~1億円(50~70万ドル)の利益を得たかもしれないと推測。ただし、AVAXの価格を動かすために他の取引所のマーケットメイカーにスプレッドを支払っていたので、正味の回収額はもっと少なくなるだろうと説明した。
さらに、今回のような取引は、GMXが「流動性のコストを反映しておらず、市場と市場の狭間にあるオラクル価格で制限なしに流動性を提供している」ことが原因だと指摘している。
対策としては、流動性のコストをスプレッドとして回収することや、ポジションの額に上限を設けることなどを提案。「DeFiの取引所も、時間をかけて中央集権型のような運営基準を採用していく必要がある」と続けた。