仮想通貨の税務捜査が増加
米内国歳入庁(IRS)は3日、暗号資産(仮想通貨)課税について、現在数百件の捜査事例に取り組んでおり、まもなく公開すると述べた。
IRS犯罪捜査部門長のジム・リー氏は、こうした捜査は仮想通貨を法定通貨と交換する取引や、仮想通貨で給与などを支払われていることを報告していない場合などに関係していると話した。
リー氏は、この3年間で、仮想通貨に関する捜査事例が変化してきたことにも触れている。以前はマネーロンダリングに関連するものが多かったが、現在は税務案件が約半分を占めると続けた。
仮想通貨ディーラーsFOXらの顧客を調査
IRSの仮想通貨捜査に関わる最近の動きとしては、米連邦地裁判事が9月、IRSがM.Y. Safra Bankに対して、仮想通貨ディーラーsFOXの顧客情報提出を要請することを許可したものがある。
M.Y. Safra Bankは、2019年にsFOXと提携し、sFOXユーザーに現金を預け入れる銀行口座を提供していた。IRSは、納税のさいに仮想通貨取引を報告していなかったsFOXユーザーを少なくとも10人特定し、ユーザー情報を求めていた格好だ。
IRSは8月、sFOX自体にも顧客情報を求める認可を受けていた。sFOXとM.Y. Safra Bankに対する要請は、匿名の召喚状の形で行われている。特定の個人について情報を求めるのではなく、調査対象を匿名として、あるグループの人々の名前や身元の情報を請求するものだ。
なお、M.Y. Safra BankやsFOX自体が法律違反を問われているわけではない。
IRSは以前、仮想通貨取引所クラーケンやコインベース、ステーブルコインUSDCを発行する米サークル社などにも同様の召喚状を送っていた。
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捜査体制を強化中
IRSは近年、仮想通貨に対する捜査体制を強化中だ。2021年には、「サイバー犯罪鑑識サービス室(Office of Cyber and Forensic Services)」を設立した。
仮想通貨などのデジタル資産調査、サイバー犯罪調査などの部門を1つにまとめたものである。リー氏は、この部署があらゆる仮想通貨取引を追跡することが可能だと話している。
リー氏は、2022年にはこれまで1兆円(70億ドル)相当の仮想通貨が押収されたとも続けた。2021年には、35億ドル相当の仮想通貨を押収していたところだ。押収額は2倍に増えたことになる。
国税庁の指摘
日本では、国税庁が10月29日に「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」の1つとして、仮想通貨取引に対するものを挙げた。
「海外の取引所で行われた取引に関する情報が入手しづらい」ことで、課税にあたって取引実態を掴みにくい現状などを指摘している。