CoinPostで今最も読まれています

ブロックチェーン情報発信を危惧|中国政府が関連企業にユーザー情報の収集を命令

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

中国ネット検閲当局、ブロックチェーン関連業者にユーザー情報の取得を命令
中国ネット検閲当局の新たな規制素案が発表された。これを受け、中国国内で事業を行うブロックチェーン関連業者は、ユーザーの本人情報を収集・保存し、検閲に応ねばならなくなるという。
ブロックチェーンは中国政府の敵か味方か
今回の規制は、北京大学が揉み消しを図ったセクハラ問題について、その公開書簡がイーサリアム・ブロックチェーンに永久保存された事件を発端にするとされる。中国政府は仮想通貨取引を規制するなど、ブロックチェーン関連技術の拡散で国民を管理できなくなるのを恐れる一方、自身の技術開発には熱心である。

中国ネット検閲当局、ブロックチェーン業者からユーザー情報を取集

中国のインターネット検閲当局(Cyberspace Administration of China)は、新規制の素案を先日発表した。

この規制を受け、中国で事業を行うブロックチェーン関連の情報サービス業者は、本名・国民識別番号を含むユーザー情報を今後収集・保存し、当局による検閲に応えなければならなくなるという。

つまり、ブロックチェーン化によってもたらされる政府管理下から外れてしまう可能性を危惧する動きが強まった可能性がある。

ご存知の通り、ブロックチェーン上に保存された情報は「編集・消去不可能」という特性を持っている。

当局によるユーザーデータの管理が困難になるため、そもそもブロックチェーンの特性は中国の法律と相いれないのだと北京在住の弁護士Xu Kai氏が自身のコラムで指摘した。

情報を分散させるブロックチェーンは、中国政府の好む中央集権とは真逆の立ち位置にあり、禁止した仮想通貨だけでなく、ブロックチェーンとの向き合い方がどのように確立されていくかに注目が集まっている。

ブロックチェーンを使った情報発信への恐れ

今回の規制背景にも、ブロックチェーン技術の普及により国民を管理できなくなることへの恐れがあるようだ。

今年4月、この規制の発端とみられる象徴的な出来事があった。北京大学でのセクシャルハラスメントが揉み消しを図られたのに対し、当事者の発信した書簡がイーサリアム・ブロックチェーン上へ永遠に保存されたのだ。

被害者のYue Xin氏はハラスメントを告発したことで大学側から自身や家族に脅迫を受け、これを公開した書簡がWeChatやWeiboなどの中国内SNSで拡散された。

しかし、SNS上の書簡データが次々に検閲を受け削除されたことを受けて、誰かがイーサリアム取引のメモとして添付する形でブロックチェーン上に永久保存したのである。

香港ビットコイン協会の会長Leonhard Weese氏は、イーサリアム・ブロックチェーン上への保存された書簡を読むには手間がかかるため、象徴的ではあるがメッセージの拡散には適さないと指摘するものの、米国発の「Steemit」などブロックチェーン技術を導入されたSNSは既に登場しており、中華圏でも香港で「Matters」が招待者に限定公開されており、その動きは加速している。

つまり、ブロックチェーン技術の登場により、中国政府が国民の情報発信を検閲管理できなくなる日が近付いているのだ。

だからこそ、中国政府はブロックチェーン関連の情報サービス業者からユーザーの個人情報を収集へと動いている可能性が指摘されている格好だ。

中国政府にとって、ブロックチェーンは毒か薬か

この「編集・消去不可能」という特性を上手く活用して、中国政府の検閲や管理から逃れようとする気運を以前にご紹介したことがある。

中国政府は、国家規模の「社会信用システム」を2020年に導入し、国民一人ずつのオンライン・オフライン行動を監視・評価しようとしている。

極端な「監視社会の到来」を危ぶむ声が上がる一方で、中国政府がブロックチェーンを「社会信用システム」に導入するのを期待する人々もいる。

この導入がブロックチェーン普及の引き金となり、周り巡って情報分散化が進んで中央集権が弱まることを期待しているのだ。

実際、中国政府は国民がブロックチェーンや暗号通貨を利用することを制限しながらも、自身の技術開発には熱心であり、その動きは世界的にもかなり進んでいる。

例えば暗号通貨取引は中国内で規制の対象であり、国内取引所の閉鎖が繰り返されてきた。

また今年8月、中国人投資家に仮想通貨取引サービスを提供する国外124の取引所とのアクセスを遮断する意向が示されたこともお伝えした通りだ。

一方で、中央銀行である中国人民銀行(PBoC)のデジタル通貨研究所がブロックチェーン関連や暗号理論の技術を持った人材を募集し、法定通貨に裏付けられた仮想通貨プラットフォームの開発を目指していることも明らかになった。

また国内企業のブロックチェーン関連特許申請も米国と並んで世界屈指の登録数を有していることも有名だ。

このように、ブロックチェーンや暗号通貨技術は、中国の自益にも大きくつながることが期待されていることで大きく動いている現状があるが、一方で国民管理を難しくする。

まさに中国政府にとっては諸刃の剣であり、ちぐはぐな態度は今後も続くだろう。

CoinPostの関連記事

仮想通貨禁止の中国でビットコインのみで生活するドキュメンタリーが反響を集める
仮想通貨が厳しく禁止されている中国で、とある女性が21日間、0.21BTC(約15万円)だけで生活するという挑戦が中国のドキュメンタリー番組で行われている。その中で仮想通貨コミュニティ内で大きな助け合いがあった。
中国InVault:「禁止令」をかい潜り、仮想通貨資産管理サービス提供へ
中国の金融および市場規制当局は最近、国内の仮想通貨に対する弾圧を強化したにも関わらず、中国の仮想通貨企業は、オフショアから中国の投資家にサービスを提供し続けている。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/08 水曜日
20:31
日本最大のWeb3カンファレンス「WebX2024」、先着順の読者限定割引コードを配布開始
国内最大手暗号資産(仮想通貨)メディアCoinPostが企画・運営するWeb3カンファレンス「WebX2024」。先着順の読者限定割引コードを配布開始しました。
15:06
EVM互換のZKロールアップとして関心を集める「Zircuit(ザーキット)」とは
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム財団からL2研究助成金を獲得し、大手VCのPantera Capitalなどから出資を受ける「Zircuit(ザーキット)」について解説。ステーキングプロトコルは約2ヶ月で30億ドル以上を集めた。
14:35
懸念強まる仮想通貨業界へのSEC執行範囲、民主党と共和党議員が激論交わす
米国下院金融サービス委員会は、SECの暗号資産(仮想通貨)を念頭にした執行活動に関する公聴会を開催。民主党と共和党議員のスタンスの違いが鮮明となった。
12:50
FTXが再建計画書提出、すべてのユーザーに100%以上弁済の見込み
破綻した仮想通貨取引所FTXは、米破産裁判所に再編計画の修正版を提出した。すべての債権者が請求額の100%を受け取れるとしている。
11:25
米金融大手サスケハナ、1500億円相当のGBTCを保有
米大手投資・トレーディング会社サスケハナが約10億ドル相当の仮想通貨ビットコイン現物ETF「GBTC」を保有していることが確認された。
10:40
イーサリアムは穏やかなインフレ傾向に ETH焼却量減少で
仮想通貨イーサリアムは、主に取引手数料の低下により、焼却されるETHの量が大幅に減少している。DencunアップグレードやL2の活発化が背景にある。
09:30
「BTC相場は回復に転じた可能性」SCB銀が分析
「仮想通貨ビットコインの相場は回復に転じた可能性がある」とスタンダードチャータード銀行が分析。米大統領選の影響や今後の価格も分析している。
08:10
トレーダーに利回り提供へ、BybitがUSDeを取引担保に採用 
ENAトークン一時急騰 仮想通貨(暗号資産)取引所Bybitは7日、新しいステーブルコイン「USDe」をデリバティブ取引の担保資産に追加すると発表した。トレーダーに利回りを提供…
07:25
「仮想通貨市場には詐欺や問題が多い」ゲンスラー委員長
米SECのゲンスラー委員長は、仮想通貨の投資家保護の必要性を改めて強調。一方、イーサリアムの証券性については明言しなかった。
06:45
ワールドコイン過去一週間で35%上昇、その背景は
OpenAIのライバルであるGoogleは、5月15日に大規模な開発者カンファレンス「Google I/O」を開催する予定だがこれに先駆けChatGPTの検索エンジンを発表する観測だ。
06:10
米ビットコイン現物ETFに330億円純流入、2日連続プラスに
米ビットコインETFに回復の兆し。米月曜日、すべての仮想通貨ビットコイン現物ETFはプラスの資金流入を記録した。
05/07 火曜日
17:54
米決済大手Visa「ステーブルコイン取引高の約9割はbotによるもの」
決済大手Visaは、仮想通貨ステーブルコインについての記事を発表。ステーブルコイン取引活動の90%はボットなどによるものだと分析している。
14:32
米SEC、Invescoの「イーサリアム現物ETF」の可否判断を最終期日まで再延期
米国証券取引委員会は、InvescoとGalaxy Digitalが共同で申請した イーサリアム現物ETFの可否判断をさらに延期すると発表。次回の期限は7月5日で、これが最終期限となる。
14:22
米マラソンデジタル、ケニア政府とビットコインマイニングで協議
米上場ビットコインマイニング企業マラソン・デジタルは、ケニア政府と、仮想通貨政策やデーターセンター開発などで話し合っていると述べた。
12:30
前週末にかけてビットコイン大幅反発、ETFフローに好転の兆し
暗号資産(仮想通貨)相場は前週末にかけてビットコインが大幅反発し、暴落していたアルトコイン値を持ち直した。グレースケールGBTCへの資金流入など、ビットコイン(BTC)現物ETFのフローにも好転の兆しが見られる。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア