日本の抱える米国債問題に着目
暗号資産(仮想通貨)取引所BitMEXの創業者で前CEOのアーサー・ヘイズ氏は21日、日本の銀行が抱える米国債の問題を背景に、ビットコインなど仮想通貨市場が上昇するとの独自見解を語った。
ヘイズ氏は、日本の農林中央金庫が、2025年3月期に約10兆円の欧米国債の売却を行う意向だというニュースに言及している。
農林中金は、米国債と欧州債の帳簿上の損失が大きくなったため、売却を行う計画だ。背景には、米国と欧州の金利が上昇したために、債券価格が大きく下落したことがある。
国債下落の影響事例として2023年には、米国のシリコンバレー銀行(SVB)が保有していた国債などが金利上昇により下落。SVBは約2,870億円(18億ドル)の損失を出して破産申請を行っていたところだ。
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米ドル供給量が増加するシナリオ
ヘイズ氏は、農林中金の件は氷山の一角ではないかと考えている。IMFの調査によると、日本の様々な銀行が2022年始め時点で合計8,500億ドルの外債を保有しており、そのうち米国債は約4,500億ドル(約72兆円)とされることを指摘した。
さらに、これらの米国債の価値が下がっているにしても、米国のジャネット・イエレン財務長官は、大規模な米国債の売却を受け入れるつもりはないだろうと意見している。
市場で米国債の大規模な売却があれば、需給バランスなどによりその利回りが急上昇し、米国政府の資金調達が高くつくようになる恐れがあるからだ。
ヘイズ氏は、イエレン氏が日本銀行に対して、日本の商業銀行から、彼らの保有する米国債を購入するよう要求するのではないかと推測している。
さらにもし仮にこれが実現した場合、日本銀行は米連邦準備制度(FRB)が2020年に設置した「対外通貨当局(FIMA)レポファシリティ」制度を活用するだろうと続けた。
FIMAレポファシリティは、米国以外の中央銀行が米国債を担保にして米ドルを調達できる仕組みだ。FIMA口座を持つ各国は、米国債を市場で売却することなく米ドルを供給できることになる。
ヘイズ氏は、こうしたシナリオが起きた場合、米ドルの供給量が水面下で増加することになり、その分が仮想通貨市場にも流れ込むのではないかと推論する格好だ。今後のFRBの動きが注目されると続けている。
ヘイズ氏は6日には、日本以外のG7の中央銀行が高い政策金利を引き下げることで、仮想通貨が強気相場に移行する可能性があるとも論じていたところだ。
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FIMAレポファシリティとは
米FRBが2020年に設立した制度。FIMA口座保有の各国中銀が米国債を一時的に米ドルに交換し、国内の諸機関が利用できるようにする。米国の金融市場に影響を与える可能性のある、世界的なドル資金調達市場の圧力に対処するとされる。
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