米大統領選と仮想通貨
デジタル資産運用企業のETCグループは11日、11月5日に迫る米国の大統領選が暗号資産(仮想通貨)市場に与える影響についてのレポートを発表した。
まず、過去データを見ると、ビットコインは2012年、2016年、2020年の過去の大統領選挙後、勝利した政党には関係なく、比較的良好なパフォーマンスを示したと述べた。
ただ、米国の選挙サイクルは、約4年ごとに訪れるビットコイン半減期や、米国の製造業の経済指標である「ISM製造業指数」の谷とも一致していると指摘する。
つまり、大統領選よりもむしろ、半減期によるビットコイン供給減や、景気が底を打って回復傾向にある際のリスク選好の増加が、過去のパフォーマンスに貢献した可能性が高いと論じる格好だ。
ビットコイン半減期サイクルや、FRBが実施する金融政策の転換による景気好転などの背景が、2025年に入るまでビットコインやその他の仮想通貨に追い風をもたらすとの見解を示している。
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半減期とは
ビットコインなど仮想通貨のマイニング報酬(=新規発行量)が半分に減るタイミングを指す。仮想通貨にはインフレを防ぐために「発行上限」が定められているものが多く、一定周期で訪れる半減期の度に、新規発行量が半分に減る仕組みになっている。供給量が減ることで希少価値が大幅に上昇し、価格が高騰しやすくなるため、仮想通貨特有の注目イベントでもある。
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トランプ氏勝利で約10.7%プラスと予想
一方で、ETCグループは、今回の大統領選は仮想通貨がトピックとなった初めてのものであるとして、選挙予測市場におけるトランプ氏とハリス氏のオッズと仮想通貨のパフォーマンスの関連を分析した。
その結果、トランプ氏が勝利した場合、ビットコインのパフォーマンスは約10.7%プラス、ハリス氏が勝利した場合には逆に、約10.5%マイナスになると推定している。
分析にあたっては、オンライン予測市場「Polymarket」および「PredictIt」の賭けオッズの平均を調整して使用している。その結果、主要な仮想通貨銘柄のパフォーマンスは、トランプ氏のオッズの上昇と正の相関関係にあり、ハリス氏のオッズの上昇と逆の相関関係にあることが示された。
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ETCグループは、ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄のほとんどが、賭けのオッズに対して統計的に有意なほどには相関しているわけではなく、選挙以外の要因の影響が大きいとみられるとも注意を促した。
ただ、過去数週間にわたって、仮想通貨と選挙オッズの相関関係は高まっており、11月5日が近づくにつれて、さらに高まり続けるだろうと予想する格好だ。
米資産運用会社グレースケールも、トランプ氏が勝利すれば、規制当局から業界の支援が見込まれ、財政赤字拡大の可能性もあるため仮想通貨に追い風となる可能性があると意見していたところだ。
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金融緩和局面では、インフレ・ヘッジとしてビットコインが注目され資金流入が増える可能性は、以前より指摘されている。
なお、記事執筆時現在「Polymarket」ではトランプ氏勝利予想が61.7%、ハリス氏が38.3%だ。ただETCグループは、両候補の全国世論調査平均の差は依然として「誤差の範囲内」であり、選挙結果は「予測できない」状態としている。
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