- 国税庁が仮想通貨取引の申告漏れ事例を初公表
- 国税庁は、仮想通貨取引で得た利益を適切に申告していなかった不正事案について初公表。会社員男性のケースでは約5000万円の申告漏れを指摘、重加算税を含め約2400万円を追徴課税した。
国税庁が仮想通貨取引の申告漏れ事例を初公表
日本経済新聞の報道によると、国税庁は29日、2018年6月までの1年間に実施した所得税の税務調査結果を発表、申告漏れ総額が前年度1.7%増の9038億円(38万件)、追徴税額は約1200億円に達したと公表した。
また今回は、仮想通貨取引で得た利益を適切に申告していなかった不正事案についても初公表している。
会社員男性が複数の仮想通貨取引所に自分や妻名義の口座を開設したケースでは、妻名義などの利益を申告しなかったという。東京国税局は男性に約5000万円の申告漏れを指摘、悪質性があると判断され、重加算税を含め約2400万円の追徴課税を行なった。
確定申告が遅れたり、税務調査によって判明すると「延滞税」がかかり、最大年利14.6%となるほか、悪質性のある”脱税”とみなされた場合、最大40%の「重加算税」が課されることになる。
検討されている申告漏れ対策
財務省は、仮想通貨の所得税の課税漏れを防ぐべく、以下のような対策強化へ乗り出すようだ。
1. 情報照会制度
2. 取引で得た所得にかかる税を仮想通貨交換業者などが源泉徴収する案
3. 一定額を超える資産を持っていたり、国外送金したりする際に提出が義務づけられる「法定調書」を新たに仮想通貨取引にも設ける案
出典:日経新聞
情報照会制度案は、欧米ではすでに導入されているシステムで、申告漏れの疑いがある人物の”基本情報”を仮想通貨交換業者に請求できる仕組みとなる。利益を得た人が自主的に納税しやすいよう「電子申告システム」を充実させるとともに、悪質な申告漏れを防ぐ狙いがある。
特定口座を利用した源泉徴収の自動システムは、すでに株式市場でも導入されているシステムだ。
基本的に売買損益が一定水準以上ある場合、株式でも確定申告が必要となるが、「源泉徴収ありの特定口座」で、株や投信の売買する場合、取引所が投資家の代わりに自動で納税を行うことができるため、投資家側の負担が大幅に軽減される。
仮想通貨の税制問題
仮想通貨取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分される。そのため、仮想通貨の売却や購入に加え、アルトコインを含む仮想通貨同士の交換を繰り返すことで、所得計算が複雑になることがネックとされてきた。
背景には、仮想通貨取引に関する所得に関するルール整備が、急速に拡大した市場規模などの実態に追い付いておらず、脱税目的の悪質なものだけでなく、(投資初心者の若者や高齢者を中心に)知識不足からくる意図しない所得逃れも相次いでおり、適正な納税義務の履行を妨げていたという指摘がある。
国税庁は対策として、記載データを国税庁サイトの「仮想通貨計算表」に入力すると、申告に必要な所得金額等を簡単に算出できる仕組みを用意する。取引履歴を残しておらず、仮想通貨の購入価額や売却価額がよく分からない、といったケースにも対応できるという。
なお、仮想通貨同士の交換や、ハードフォークでの新通貨付与など、納税義務が発生する各種ケースに関しては、以下の記事で詳細に解説している。
最大税率55%が重い負担に
仮想通貨にかかる税率に関しては、、2017年4月に施行された改正資金決済法で、仮想通貨が正式に「通貨」として定義されたことによって、仮想通貨を決済利用した際の消費税こそ非課税になったものの、仮想通貨トレードによる利益の所得区分は「雑所得」に振り分けられることになった。
累進課税のため、税率は最大55%(住民税含む)となる。
ただし、税率20%の分離課税である「株や為替」と異なり、損益通算もできないため、国内の投資需要を萎縮させてしまう恐れが強い。
2017年のブル相場で利益を確定させた後、2018年のようなベア相場の直撃を被った場合、仮に前年の利益額と翌年の損失額が同等だったとしても、税金だけが重くのし掛かるような事態が多発しているようだ。
このような仮想通貨に関する現行の税制問題は、リスクばかりが突出することで投資家の関心を遠ざけ、将来性の高い国内成長産業を妨げているとの指摘があるほか、株式投資などと比較して不公平な仕組みという見方もある。
また、競争の激化する国際社会において、仮想通貨及びブロックチェーンを推進する他国に遅れをとる懸念もある中、税制改正に取り組む「藤巻議員」が、国会(財政金融委員会)などで警鐘を鳴らしている。
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