
富裕層や企業の投資認める枠組み
ロシアの中央銀行は12日、富裕層による暗号資産(仮想通貨)投資を実験的に3年間認めることを許可する法案を政府に提出し議論を求めた。この動きはプーチン大統領の指示を受けたものだとしている。
この制度の対象となるのは、特に資格のある投資家のみだ。条件としては、証券や預金への投資額が1億ルーブル(約1.7億円)を超えるか、前年の収入が5,000万ルーブル(約8,500万円)を超える者であるとしている。
また、現行法の下で適格とみなされる企業についても、この実験に参加することを提案した。ロシア中銀は、金融機関がリスクを適切に管理できるようにするための追加規則を定める予定だ。
今回の制度の目的は、仮想通貨市場の透明性を高め、サービス提供の基準を構築し、リスクの増加を認識している経験豊富な投資家について、その投資機会を拡大することだと説明している。
さらに、この実験的制度とは別に、すべての適格投資家が、仮想通貨への間接的な投資を行えるようにすることも提案した。具体的には、仮想通貨のデリバティブ商品や証券、デジタル金融資産に投資できるようにするとしている。
今回の提案が実現すれば、ロシア企業についても、一定の条件下でビットコイン(BTC)など仮想通貨現物や仮想通貨ETF(上場投資信託)などを購入できる可能性がある。
ロシアは2024年8月、実験法制度の枠組み内で、仮想通貨による国際決済を許可する法律も承認していた。その後12月、同国のアントン・シルアノフ財務大臣は、仮想通貨による対外貿易取引はすでに開始しており、今後も拡大していく予定だと話している。
関連:ロシア、仮想通貨による国際決済を許可する法律承認 エルサルバドルとも連携か
仮想通貨決済禁止も利用拡大
ロシア中銀は、実験的制度外では仮想通貨決済は依然として禁止されているとも強調した。
仮想通貨はどのような国や当局によっても支えられておらず、ボラティリティ(価格変動)が増大する可能性があると改めて注意を呼びかけた。投資家は、仮想通貨への投資を決定する前に、損失リスクを認識する必要があるとしている。
ロシアは、2021年より仮想通貨を支払いに使用することを禁止している。
ただ、その一方でウクライナ侵攻後は特に、経済制裁を回避する手段としても、仮想通貨の利用を一部で拡大している。
2024年には、仮想通貨マイニングを合法化する法案も成立させた。マイニングが可能なのは、当局に登録されたロシアの法人と個人起業家のみだ。また、登録がなくても、政府が設定したエネルギー消費上限を超えない個人は仮想通貨をマイニングする権利を持つ。
今年2月には、ユーリ・トルトネフ副首相(極東担当)が、極東地域における余剰電力を仮想通貨マイニングに利用することを提案した。
さらに、ビットコイン準備金の創設を要望する議員も存在する。アントン・トカチェフ下院議員は昨年12月、ビットコインの戦略的準備金創設を財務大臣に要望した。
人民元や米ドル、ユーロなどの外貨は制裁やインフレの影響などを受けることがあると指摘。ビットコインは資産としてリターンが高く、保有することで利益を見込めるとも主張している。
関連:「ロシアでビットコイン準備金の創設を」議員が財務大臣に要望提出=報道