- 仮想通貨の次なる応用|データストレージ分野
- nChain社のチーフ・サイエンティストであるクレイグ・ライト氏が、現在仮想通貨業界が直面する問題や業界発展の鍵、ビットコインの匿名性に関する独自見解を語った。
クレイグ・ライト氏、仮想通貨の有望なユースケースを展望
CoinPostはメディアパートナーとして「Japan Blockchain Conference YOKOHAMA Round 2019」に 参加した。
同カンファレンスにて、ブロックチェーン企業nChain(エヌチェイン)社のチーフ・サイエンティストであるクレイグ・ライト氏が登壇し、現在仮想通貨業界が直面する問題、そして同社の業界全体に対するアプローチ、特にビットコインを用いた新たなサービス、プロジェクトについて話した。
クレイグ・ライト氏は、ビットコインSV(以前はビットコイン・キャッシュ)の強力な支持者であり、過去にはサトシ・ナカモトを自称することでも有名であるオーストラリアの実業家だ。
最近では、米商品先物取引委員会(CFTC)に対して、自身がサトシ・ナカモトだとする8ページにわたる宣誓証言の公開も行なっている。
始めにライト氏は仮想通貨業界初期から携わっている者として、この業界は現在「プロトコル戦争の最中にある」と説明。仮想通貨の今後をインターネットの発展の歴史に擬え、結局は1つ(又は極少数)のプロトコルに統一されるだろうと予測した。
続けて同氏は、仮想通貨分野の発展には、特に非中央集権的なオンチェーン・スケーリングでこの技術を業界全体に適用させ、また技術利用により業界自体の大きな発展が見込めるマーケットを見つけることが最優先だと述べ、それに適したマーケットは、データストレージ分野であると、以下のように言及している。
我々はデータを暗号化できる。
仮想通貨市場における取引速度の遅延などのスケーリング問題には、オフチェーンでの拡張性向上手段が有効な解決法として採用されているが、データストレージ業界がビットコインの非中央集権的なオンチェーン・スケーリングを可能にし、またビットコインの発展に最適な業界である理由として、ライト氏は以下の点を挙げた。
ファイバー技術の飛躍的発展
同氏によれば、ファイバー技術の飛躍的発展は目を瞠るもので、現時点での技術に限っても、世界中のインターネット全体で行われている取引が、たった一本のファイバーの束にトランザクションとして収束できるレベルまで精度が上がっているという。
実際に、5Gネットワークの構築が進んでいるなど、ファイバー技術はインターネットの普及と比例するように飛躍的な進化を遂げてきたと説明し、「この技術であればビットコインのオンチェーン・スケーリングに耐えられる」とライト氏は述べた。
では、ビットコインのオンチェーン・スケーリングが大規模に行われ、データストレージ業界に適応されると何が起きるのか。それが、「データの仮想通貨化」であると博士号を持つライト氏は解説。実際にデータを仮想通貨化した際のビジネスモデルとして、動画のネットストリーミング事業を例に挙げた。
現在ネット上でユーザーが視聴したい有料動画がある場合、顧客はそのストリーミングサービス業者が提供するプレビューや他の利用者のレビューなどを参考にして課金をする。しかし、それではプレビューのみが高品質であったり、実際に購入した動画の内容が保証されているわけではない。だが、顧客は既に払ってしまった料金を取り戻せない。
動画コンテンツというデータが、仮想通貨化されていたらどうだろうか。ユーザーは動画を視聴する分だけ課金できるようになる。もし、動画がつまらなければそこで停止し、課金を終えることができる。
ライト氏はデータの仮想通貨化がどのように既存のビジネスモデルに影響を与えられるかを簡潔に説明するために動画ストリーミング事業の例を挙げたが、明らかにその可能性は多岐に渡る。その点を強調しつつ、自身がチーフサイエンティストであるnChain社では、ビットコインを利用したビジネス向けのサービスの開発に注力していると、同社の取り組みについても説明した。
ビットコインは匿名ではない
またライト氏は、ビットコインの利用方法や現存の仮想通貨取引業では、ビットコインの代名詞でもある匿名性が欠落しているから、ビットコインのプライバシーについても言及した。
ビットコイン(のブロックチェーン)には正直な記録が残るため、匿名性はない。
ライト氏はビットコインは記録の残る分散台帳として誕生したため、ビットコインに対して匿名性を求めるのは間違いだと指摘した。匿名性を求めれば、ビットコインを利用した違法行為を懸念して、各政府や規制機関が普及を妨害したり、この革新的な技術の存在さえ消滅させようとするかも知れないからだと論付けている。
しかし匿名性の代わりに「プライバシーに重点を置くべきだ」とライト氏は以下のように述べた。
ビットコインは基本的にプライバシーが確保されている。同時に全履歴が記録されているため、何か問題があれば後からでも照会できる。
これこそが、最大の強みであると言っても過言ではない。その強みを最大限に生かすためにも、ビットコインの匿名性は完全に否定する。
インタビュー内容
カンファレンスでの登壇後、CoinPost編集部はクレイグ・ライト氏にインタビューを行なった。
現在開発に携わるビットコインSVの目標や、登壇した際に言及していた匿名性などについて意見を求めた結果、以下のようなコメントを残している。
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ビットコインSVの開発目標を教えてください。
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ビットコインコアが犯したミスを修正し、拡張性を実現することだ。
今年の中旬までに(1ブロック容量)500MB、年末までには数GB、そして数年後には数テラバイト(TB・1024GB)を目指している。
また将来的には数百万TPS(秒間取引処理数)を実現したい。
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仮想通貨の匿名性についてどうお考えですか。
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ビットコインは本来のビットコインに忠実であるべきだ。
元々、digicash社が発行したEcashは匿名通貨だったがアメリカの法律では、匿名の投資物件は違法である。 そのため、今後匿名通貨を保有していただけで逮捕できる可能性があるだろう。
将来的には匿名通貨を保有するウォレットを持つ事自体が犯罪になると思う。
匿名通貨を開発している人たちはビットコインが嫌いで、ビットコインの築いたモデルを壊そうとしている。
過去に起きたシルクロード事件では、世界中で1000人以上の人が逮捕されており、これはビットコインのブロックチェーンが取引履歴を全て記録していたからだ。
ブロックチェーンは本来、法の範囲内にあるべきなのだ。
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日本のユーザーに一言お願いします。
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開発に集中し、ICOや詐欺プロジェクトへの投資を控えるべきだ。
株式への投資で買う、買わないの判断はティッカーではなく株式企業の基盤となる事業を見るだろう。
ではICOプロジェクトはどうだろうか。プレセールやユティリティートークンのセールを行ったプロジェクトで基盤となるプロジェクトが完成されているものは一つもなかった。
プレセールを行った後に資金を返済しなかった場合、それは詐欺に相当する。しかしブロックチェーンの素晴らしいところは何年経っても、問題を引き起こした人(のアドレス)を特定できる点だ。
規制当局はブロックチェーンを辿って、詐欺を行なった加害者を逮捕できるようになるだろう。
かつてのIPOはICOに様変わりしているが、ブロックチェーンの経歴を調べれば、数年経っても犯人をトラッキングして逮捕するケースは出てくると思う。
仮想通貨市場が法定通貨に依存し続ける現状が続いている中、このような仮想通貨の異なる業界や各ビジネスへの適用は、市場全体の成長にもつながる。現在の業界に全く違ったアプローチを仕掛ける、クレイグ・ライト氏率いるnChain社やビットコインSV開発者グループの動向をこれからも追っていきたい。
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