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「大企業がブロックチェーンを避けてきた本当の理由」カルダノ創設者が語るプライバシーという最後の壁|独占インタビュー

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

カルダノ(ADA)創設者チャールズ・ホスキンソン(Charles Hoskinson)氏が、約2週間にわたる日本全国ツアーを終えた。痛風の発作で杖をつきながらも北海道から沖縄を経て東京まで行脚し、毎日12〜14時間のスケジュールをこなしたという。

同氏は、ツアーの最終盤にCoinPostの独占インタビューに応じた。その言葉には、単なるプロジェクト宣伝を超えた業界全体への問題意識が滲んでいた。

「プライバシーとは、オンとオフのスイッチではない。防水加工のようなものだ」同氏はインタビューの中でこの言葉を繰り返した。大企業や政府機関がブロックチェーンを避けてきた本当の理由、それはプライバシーの欠如に他ならないと同氏は言う。

仮想通貨業界が長年解決できずにきた普及の壁の本質を、この一言が端的に表していた。

「30億ドルを失っても気にしない」の真意

インタビューの冒頭、前日に話題となった発言を問われた。資産が約30億ドル目減りしたにもかかわらず「気にしない」と述べたことが、業界内外で波紋を呼んでいた。

「ビットコインが1ドルの時代から仮想通貨に関わってきた。価格が上がろうが下がろうが、私が本当に失ったものは何もない。技術は進歩し、エコシステムは成長し、人々の信頼は変わらない」

同氏は従来の金融システムについて「道徳的にも経済的にも破綻している」と断言した。米国の38兆ドル、世界全体の233兆ドルという債務残高を挙げ、「仮想通貨を売って戻る先は、そのシステムだ。私にはその選択肢はない」と語った。

損益よりも重要なのは、ミッションの継続だという。「カルダノを2100年まで生き続けさせること。それが私の目標だ。死ぬときに持っていけるのはお金ではなく、レガシーだけだ」

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5億人以上が使っているのに、なぜ普及しないのか

世界の仮想通貨保有者は現在約5億5,000万人、市場規模は数兆ドルに達する。それでも「普及していない」という声が絶えないことについて、ホスキンソン氏は明確に整理した。

「保有者という意味では十分普及している。問題は、誰も仮想通貨を基盤プロトコルとして使っていないことだ。スマートフォンにLinuxカーネル(基本ソフトウェアの核となる部分)が入っているように、社会のインフラとして仮想通貨が機能していない」

決済、国家運営、企業経営など、いずれの領域でも仮想通貨はまだ主役ではない。一方でベトナムでは3人に1人、ナイジェリアでは4人に1人が仮想通貨を保有し、アルゼンチンでは7,000億ドルのGDP(国内総生産)に対して1000億ドル相当の仮想通貨が流通している。

「私のアルゼンチン人プログラマーたちは全員、ペソではなくステーブルコインかビットコインで給料を受け取りたがっている。国家ごと仮想通貨を選んでいる現実がある」

残る課題は「ラストマイル」だと同氏は言う。ユーザビリティとプライバシーの二つだ。「流動性や決済インフラという難題はほぼ解決した。ステーブルコインは定着し、米国でも関連法が整備された。2030年には1兆ドルを超えるステーブルコイン市場が生まれる。次の壁がプライバシーだ」

「流動性や決済インフラという難題はほぼ解決した。ステーブルコインは定着し、米国でも関連法が整備された。2030年には1兆ドルを超えるステーブルコイン市場が生まれる。次の壁がプライバシーだ」

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プライバシーを「防水加工」として捉える理由

既存のプライバシー仮想通貨はすでに存在する。では何が足りないのか。

「防水の例えで考えてほしい。既存のプライバシー仮想通貨は、素材の一部にコーティングを施した状態だ。でも隙間があれば水は入る。たとえ取引が匿名化されていても、ネットワーク層が非公開でなければISP(インターネットサービスプロバイダー)に知られる。プライバシーは一部分だけ保護しても意味がない。エンドツーエンドで完結して初めて防水になる」

さらに重要なのが「選択的開示」という概念だ。ホスキンソン氏はこれを現行システムの最大の欠陥として指摘する。

「今のインターネットは、情報を過剰に開示させる構造になっている。年齢確認をしたいだけなのに、パスポートを見せると名前も住所も全部わかってしまう。本来は年齢という一つの事実だけを証明できれば十分なはずだ。ゼロ知識証明(取引内容を明かさずに特定の事実を証明できる暗号技術)を使えば、それが可能になる」

企業における応用も現実的だ。「CEO、CFO、人事担当者は、同じ台帳から異なる情報を見る権限を持つ。プライバシーは全開示か完全秘匿かの二択ではなく、役割に応じた段階的な制御でなければならない。それができて初めて、大企業や政府機関がブロックチェーンを本格採用できる」

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年間5000億ドルのコンプライアンス問題

プライバシーと表裏一体の課題として、ホスキンソン氏が強調したのがコンプライアンスコストの問題だ。

「世界の金融機関が毎年支払うコンプライアンスコストは5000億ドルに達する。コンプライアンス担当者は製品を作らない。顧客を増やさない。むしろ業務を遅らせ、顧客を失わせる。それでも銀行はその人件費を払い続けなければならない」

問題の根本は「規制の外部委託」にあると同氏は言う。本来は規制当局が行うべき不審取引の監視を、民間金融機関に義務付けた結果、莫大なコストが民間に転嫁されている。

さらに大国がこの仕組みを地政学的に利用するケースも増えているという。「米国がコロンビアに対し、ベネズエラ人の口座を全て閉鎖するよう圧力をかけることがある。コロンビアにとってベネズエラ人顧客は40年来の付き合いがあっても関係ない。規制の武器化だ」

解決策として同氏が提示するのは、スマートコントラクト(ブロックチェーン上で自動実行されるプログラム)による自動化だ。

「政府がルールを設定し、民間がスマートコントラクトを書き、当局がそれを認証する。開発者はAPI(異なるシステム間をつなぐインターフェース)を呼び出すだけで、60カ国の規制に同時対応できる。コンプライアンス担当者も弁護士も必要ない」

規制当局にとっても利点があるという。「スマートコントラクトを認証するには、まず規制の内容を明文化しなければならない。米国の税法は100万ページを超えるが、コード化できない規制はそもそも整理されていない証拠だ。自動化を進める過程で、規制そのものが簡素化される」

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ミッドナイトが目指すもの

こうした課題意識から生まれたのが、カルダノのサイドチェーンとして開発中のプライバシー特化型ブロックチェーン「ミッドナイト」だ。ただしホスキンソン氏はあくまでも「業界全体のインフラ」として位置づける。

「ミッドナイトはイーサリアムのためにも、ソラナのためにも、ビットコインのためにもある。特定のエコシステムを置き換えるものではなく、どのブロックチェーンも呼び出せるプライバシーのAPIだ。スマートフォンアプリが地図機能を自分で作らずグーグルマップを使うように、開発者はプライバシー機能をゼロから実装せずミッドナイトを呼び出せばいい」

技術面ではポスト量子暗号(将来の量子コンピューターによる解読にも耐えられる暗号方式)に対応した格子ベースの暗号システムを採用し、ゼロ知識証明·機密計算·マルチパーティ計算(複数の参加者が互いのデータを明かさずに共同で計算する手法)を組み合わせて提供する。

開発言語にはJavaScriptの一種(バリアント)を採用しており「2026年末には書かれるコードの半数がAIによるものになる。AIはJavaScript系の言語を最もよく理解しているため、開発者の参入障壁が大幅に下がる」と同氏は説明する。

料金モデルにも工夫がある。「現在の仮想通貨は、利用前に手数料を支払う必要がある。グーグルもユーチューブも無料で使えるのに、なぜブロックチェーンだけ先払いなのか。ミッドナイトでは事業者側が手数料を負担できる設計にした。ユーザーは無料でオンボーディングできる」

日本市場での展開についても前向きな見通しを示した。

「選択的開示機能があるからこそ、日本の規制当局と対話できる。ミッドナイトは日本で初めて上場されるプライバシー仮想通貨になる可能性が高い」とし、グーグルクラウド、マイクロソフト・アジュール、アマゾンAWSとの協業も進んでいることを明らかにした。

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AI時代に仮想通貨が果たす役割

インタビューの終盤、ホスキンソン氏は話題をAI時代の課題へと広げた。

「ディープフェイクの画像や音声が急速に精巧になっている。数年後には自分の目や耳で本物かどうか判断できなくなる。誰かがあなたの声を真似して母親に電話し、送金を求めることもありえる。そのとき、何が本物かを証明する手段が必要だ」

仮想通貨の認証技術がその解決策になりえると同氏は言う。「取引の真正性を証明できる技術は、コンテンツの真正性も証明できる。これは投機とは全く関係のない、社会インフラとしての価値だ」

エージェントコマース(AIが人間に代わって自律的に購買・契約を行う経済圏)の台頭も、仮想通貨の役割を押し上げると予測する。

「AIエージェントが自律的に購買決定を下す時代が来る。ニュース記事1本を1セントで取得し、20本まとめて情報収集するマイクロトランザクション(少額の細かい取引)に、クレジットカードは向かない。仮想通貨が唯一の現実的な選択肢だ。2035年には1~2兆ドル規模のエージェントコマース市場が生まれると見ている」

日本のカルダノ保有者へのメッセージ

ツアー全体を通じた最大のメッセージとして、ホスキンソン氏は日本コミュニティへの参加を強く呼びかけた。

「カルダノ保有者の大多数は今も日本にいる。つまり日本人がカルダノエコシステム最大の意思決定権を持っている。にもかかわらず、ロードマップを決定する組織インターセクトへの日本人参加者は少ない。これは大きな問題だ」

DeFi(分散型金融)エコシステムの強化についても具体的な数字を示した。

「現在のTVL(預かり総資産)は約3億ドル、ステーブルコインは5000万ドルにとどまり、ソラナやイーサリアムに大きく差をつけられている。今後3〜6カ月以内にエコシステム全体で優先プロジェクトを選び、10倍の規模を目指す。その決断に日本の声を反映させたい」と述べた。

「技術が生き残るには、人間の体験に溶け込む必要がある。仮想通貨業界はその入り口にほぼ達しつつある」とホスキンソン氏は述べ、2週間にわたる日本ツアーを終えた。

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