- TenX CPO Paul Kittiwongsunthorn氏インタビュー
- TenX CPOのPaul Kittiwongsunthorn氏にCoinPostがインタビューを行いました。TenXという会社のこれまでや、社内の理念、そして規制などにも触れつつブロックチェーン市場に対するコメントもいただきました。
TenXについて
シンガポールの会社であるTenXとは、仮想通貨を世界中で円やドルといった法定通貨のように決済できることを目標としている企業です。
TenXウォレットに仮想通貨を入れ、決済する時は、直前で自動的に仮想通貨→法定通貨に変えられて引き落としがされます。
2017年の注目ICOとしてその名を広めたTenXは、ウォレットアプリによる決済機能の発表、またVISAとの提携といった発表により更に話題となりました。
また、TenXカードは、BTC以外の通貨も利用可能、手数料・年会費無料、0.1%還元といった特徴で、数ある仮想通貨デビットカードの中でも一定のシェアを獲得していました。
しかしその後、仮想通貨カード業界でトップクラスのシェアを誇っていた大手カード発行会社WaveCrestがVISAライセンスを失った影響で、仮想通貨デビットカード界隈は大打撃を受け、殆どの仮想通貨カードは発行停止となっています。
TenXカードもその影響で発行停止となりましたが、ウォレットサービスは継続しており、また現在は再始動に向け尽力している最中となります。
今回は、そんなTenX社CPOのPaul Kittiwongsunthorn氏に独占インタビューを実施しました。
インタビューにご協力いただいたPaul Kittiwongsunthorn氏に御礼申し上げます。
インタビュー内容一覧
- ―日本に来て取引所とは話しましたか?
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いくつかの取引所とは話しましたが、他もまだまだ歓迎しています。
我々は取引所とはとても良いシナジーがあると思っています。
人は仮想通貨を購入または取引するために取引所に行きます。
そこでカードがあれば、かなり楽になるでしょう。
銀行口座に移す方法や何日かかるかを考える必要がなくなります。
- ―当然あまり詳しくは話せないとは思いますが、計画を実行する時期の目安とかはありますか?
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はい。今話せることとしてはパートナーシップのラインアップがあることです。
各パートナーシップを組み立てているところです。
日本では遅くて2019年には計画を実行しようと考えています。
- ―TenXカードが日本で利用できるようになるのはいつになると思いますか?
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おそらく2019年になります。
- ―現在はどの国を対象としていますか?
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前まではヨーロッパに送っていましたが、カード発行問題が起こり、今は停止しています。
そこで新たなカードを再発行し、アジアに送っています。
そのうちまたヨーロッパにも送ると思います。
日本はかなり特別な市場だと思っています。
そのため、他とは別の取り組みが必要だと考えています。
- ―そのカードはVISAとしても使えますか?
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その通りです。
VISAカードであるためレストランなど、VISAを受け付けているところであればどこでも使えます。
しかし、中身は法定通貨ではなく仮想通貨です。
- ―なぜただのウォレットにしなかったのですか?
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ウォレットも作れました。実は最初に始めた時はウォレットを作ろうと考えていました。
ただダウンロードするだけでウォレットは完成しますが、それでは仮想通貨が本物であると実感できる人が少ないことに気づきました。
カードは使うことも触ることもできるため、仮想通貨が本物であることを証明しやすいです。
- ―これまで会社としてどのような壁にぶつかりましたか?
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TenXでは銀行、VISA・Mastercardや他のブロックチェーン関連の企業間で動いています。
つまり、我々が管理できるのは自分達でブロックチェーン上に作ったものであり、ビジネス側のものは管理できません。
それは学びました。
昨年我々のカードは二度稼働しました。
しかし、パートナーなどを管理することができなかったため、停止することになり、今現在は進行中のプロセスです。
これはビジネスの世界では普通だと思います。
さらに我々はスケーリングがかなり早く、それにより会社の社風を維持することができ、皆が働き続けてくれます。
一緒に働くというよりも核となる社風およびコミュニケーションのことです。 5人と50人ではコミュニケーションは全然違います。
今はそれを学んでいる途中ですが、どの会社もそうだと思います。
私が思うにはそれが壁ですね。
- ―つまり何が管理可能で何がそうでないか。 社風を維持および管理することですね。
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はい、成功した人に「時間を戻せたら何に力を入れますか?」と聞いた場合、必ず社風、社員、そして会社と答えるでしょう。
今はそのような人たちから学び、必ず成功しようと考えています。
なぜなら結局は人がプロダクト、そして会社を作るからです。
- ―社風についてお話いただきましたが、TenXの社風とはどう言ったものですか?初めと今とで違いはありますか?もし変わるのであればどのように変えたいと思いますか?
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変わることはないですね。
我々が今やっていることをやっているのは仮想通貨が大好きだからです。
本当に新しいお金になると思っています。 それも毎日成長するようなお金。
核心ではより多くの人に利用して欲しいという考えがあります。
会社にいる皆はそれを目指して頑張っています。
そのため、社風は変わりません。 しかし、それを強化することはあります。
例えば率直さや信用。
会社が大きくなると一つのことに集中してしまう傾向があります。 例えばプロダクトを作ることに集中し、コミュニケーションがおろそかになる可能性があります。
しかし、一人一人がしっかり自分の仕事ができることを信じなければなりません。
そしてそれを強化することも大事です。
良い人を雇ったのだからその人達を信じるべきです。
そうやってチームが成り立ちます。
率直さというのは徹底的な正直さのことです。
我々が会社の意義に含んでいるものです。
良い心がけでしっかりフィードバックをすることがとても重要であると思います。
- ―今会社では何人が働いていますか?
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現在52人です。
- ―どの国に拠点を置いていますか?
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ほとんど(85%)はシンガポールでヨーロッパにも数人います。
- ―エンジニアは何人いますか?また、日本人のエンジニアやスタッフはいますか?
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30か40%がエンジニアで20%ぐらいがプロダクトを担当しています。 つまりプロダクトおよびエンジニアが半数以上を占めています。
日本人のエンジニアやスタッフは現在はいませんが、探しています。 興味がある人がいれば雇います。
- ―日本人や日本メディアとインタビューしたことはありますか?
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一回か二回はあると思いますが私の分野ではありませんでした。 私はプロダクト担当ですが、インタビューは技術担当の話についてでした。
しかし、インタビューはいつでも歓迎しています。
- ―カードなどについての困難についてお話がありましたが、成功についても教えてください。
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昨年の大きな成功は人々のためのプロダクトであるカードが稼働したことでしょう。
それ以外では世界レベルの人々を会社に入れたことだと思います。
募集は楽ではありませんが、良い人を獲得するとかなり変わると思います。
しかし、もっと力を入れたいこともあります。
プロダクトおよびプラットフォームを作ることには成功したと思いますが、今年はより多くのブロックチェーン会社と話し、エコシステムの築くことにも貢献したいと考えています。
今年中にはプロダクトが完成すると思うので、そうしたらパートナーなどを探し、この業界を改良することにも力を入れたいです。
- ―協力についてお話いただきましたが、競合会社はいますか?そして業界全体を改良するためにはそれらの会社とどのように協力したらいいと思いますか?
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現在カードを作っているため、多くの人が我々をカード会社と比べています。
しかし、我々はプロダクト会社であり、カードはプロダクトの一つにすぎません。
仮想通貨界において必要とされているプロダクトを我々が提供しているだけです。
最初はカードから始めたため、カード会社と比べられることが多いですが、内部では競合会社の話はしていません。
しかし、良い例だと思う会社は見ます。
例えばRevolutやN26などのデジタル銀行。
それらはより多くの人に財界をデジタル的に届けることに長けていると思います。
ちょうど良い基準だと考えています。
我々は他の誰よりも良い結果を出したいです。
- ―つまりデジタル銀行が競合者ということですね。 では、自分たちを他とどのように区別できると思いますか?
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一つとしてはプロダクトがあることだと思います。
この分野において唯一ではないでしょうか。
それだけでも区別はできていると思います。
昨年Gatorを通して資金を集めた会社が多かったですが、我々はまず最初に何かを作りたいと考えていました。
自分たちがしっかりプロダクトがあることを証明したかったのです。
それが大きな違いでしょう。
確かに我々のような会社からはより多くを期待できるかもしれませんが、成長速度はかなり早いと思っています。
そして会社を評価するときは半年や一年単位ではなく、5年や10年で見るべきだと思います。
我々はカード会社ではありません。
我々はプロダクト会社であり、ユーザーが必要としているものを開発しています。
今はそれがカードということになります。
現在オーストラリアにCOMITという純粋なRND研究所があります。
我々は新技術に力を入れており、外部からの影響を受けて欲しくないため、研究所ではシンガポールやプロダクト会社で行なっていることには触れさせていません。
オーストラリアでは新技術を作り出して欲しいです。
今年現れる可能性がある新たな試みはブロックチェーンの連結だと思います。
この業界において新たな基礎となる可能性もあると思います。
特に今年、規制が増えるであろう中、多くの人が流れ込んでくるでしょう。
そして同時に分散型の側面も見ることになると思います。
つまり今年は両面を見る年になると考えています。
- ―規制についてお話がありましたが、日本の規制についてはどう思いますか?
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日本はすごいと思います。政府はとても前向きだと思います。
遅かれ早かれ全ての国が規制について考える必要が出てくるので早めに行動することはとてもいいことだと思います。
オープンテクノロジーにおいては良い人と悪い人が必ずいます。
そのため、規制が重要になってきます。
そういう意味ではスポーツに似ています。
全ては公平で必ずルールがあり、そのルールに従って行動しないといけません。
これは新しい技術であるため、人に参加してもらう前に新しいルールも作らなければなりません。
業界にとってはそれが一番良いと思います。
シンガポールは米国などと比べてとてもオープンでした。
中国もインドもそれぞれの取り組みをしてきました。
要するにこれはかなりグローバルなことです。
規制をイノベーションひいきにし、悪い人を取り除くことが重要だと思います。
- ―シンガポールはどうですか?シンガポールの政府について教えてください。仮想通貨やブロックチェーンなどのイノベーションには寛容に見えます。
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はい。シンガポールの中央銀行はシンガポール金融管理局(MAS – Monetary Authority of Singapore)です。
いくつかの中央銀行は訪問を許可しています。
Eメールまたは電話を通じて面会を設定することができます。
そのようなことをする中央銀行は世界にほとんどないと思います。
なのでそういったところがシンガポールの長所になっていると思います。
さらに、行動起こす前に業界のいうことを聞くところも良いと思います。
- ―日本ではそのようなことは起きていません。少なくとも聞いたことはありません。強いて言えば、いくつかの取引所にはそのような制度はあるかもしれません。
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現在日本には16の認可された取引所がありますよね?これらの取引所がFSAと連絡が取れると聞いています。
それ以外では、業界および消費者にとって安全な環境を作ることに成功していると思います。
- ―我々と同年代の人は仮想通貨に対してどのような反応をしていますか?韓国や日本のように投資していますか?
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シンガポールでですか?シンガポールではとても広い範囲の年齢層が関わっていると思います。
10代から40代、98歳のユーザーもいます。
若い世代には2種類の人います。
一方は技術そのものに興味があり、もう一方はいわゆる投機師です。2017年には技術が足りていないにも関わらず、多くの投機が行われました。
私は2011年からビットコインを追っています。そのため、市場が上下するところも何度も見てきました。
市場がうまくいく時は人も増え、技術も成長しました。
皆、10年後には価値が上がると考えています。それに関しては良いことも悪いこともあります。
良いこととしては、より多くの人を引きつけることです。
その一部は開発者にもなります。
今回はICOが流行りましたが、次は何が流行るかわかりません。
- ―日本の話に戻りますが、日本の市場を対象として何か特別な取り組みはしていますか?
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はい。私が今ここにいるのはSlushが理由ではないです。
日本で計画を始めたいと思っています。
そのためにパートナーも探しています。
日本の市場はとても興味深く、どちらかというとビットコインを受け入れているように見えます。
日本はこの新たな技術に寛容であり、政府も規制に関してはかなり協力的だと思います。
だから我々は今日本にいるのです。
- ―最後に日本へ向けてメッセージをお願いいたします。
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はい、もちろん。
仮想通貨はとてもすばらしい技術だと思うのでより多くの人が実際に経験し、利用することを望んでいます。
会社としてもそのような取り組みをしています。
誰でも利用できるような形で提供しようと努力しています。
市場もすでに仮想通貨の受け入れ方を習得しているので後はそれを広めるだけです。
知人などにもためしてみるように言ってください。
自分自身が仮想通貨を持っていないのであれば、買ってみてください。
百円でも千円でもいくらでもいいのでまずは経験してみることをオススメします。