仮想通貨マイニングの気候変動リスク
米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が、気候変動リスクに関する情報について、同局が監督する組織へ書面で周知した。
「気候変動は、重大な経済的リスクももたらし得る」と指摘した上、個々の金融機関の安全性と健全性への影響、および金融に対するより広範な金融安定性の影響について検討するにあたり、暗号資産(仮想通貨)マイニングの気候リスクについても触れている。マイニングを行う場所や機器について、透明性を高める必要があるという。
書面は銀行の他、送金業者、住宅ローンバンカーなどの企業、そして仮想通貨企業にも送付されている。
「採掘地や機器について透明性を」
仮想通貨マイニングが環境に及ぼす影響は「運輸セクターなどと比較して小さいものの、影響力は十分」と推定しており、ビットコインネットワークの年間エネルギー消費量(業界でのカストディ、取引などに必要な電力は含まない)は、ニュージーランドやベネズエラの電力使用量に匹敵すると指摘。
そこで、仮想通貨企業はエネルギー問題に取り組むため、ビットコイン採掘が行われる場所やマイニング機器について透明性を高める必要があるという。
また、環境に配慮することが投資家へのインセンティブにもなるとし、次のように説明した。
機関投資家は、気候変動に対する速やかな行動の必要性や、社会的、環境的、ガバナンス的要因を投資判断に組み込む方向へ向かっている。
彼らは、持続可能性と気候に配慮するポートフォリオが、投資家により良いリスク調整後のリターンを提供できると考えている。
二酸化炭素排出量の多い仮想通貨企業は、投資や取引機会の喪失に直面する可能性があり、それが業績に悪影響を与える可能性もある。
最後に、仮想通貨マイニング業者の中では、環境リスクに対応するため持続可能なエネルギーを活用する試みもみられる点についても触れた。
昨年、NYDFSは、「金融システムをグリーン化するための中央銀行および監督者のネットワーク」(NGFS)に参加しており、「中央銀行と監督当局のグループは、自主的にベストプラクティスを共有し、金融セクターが環境・気候変更リスクをコントロールするにあたって貢献する用意がある」とも表明。
ただ、今回の書面によって具体的な規制が行われるわけではないようだ。法律上NYDFS自体には何か強制力がある規制を執行する権限はないという指摘もされている。
尚、NFGS(the Network of Central Banks and Supervisors for Greening the Financial System)は2017年に、気候変動リスクに対応するため、各国金融監督当局と中央銀行が共同で立ち上げたもの。現在は日本銀行、欧州中央銀行(ECB)、中国人民銀行など含め74の機関が参加している。
マイニングを支える水力発電
仮想通貨マイニングの欠点として、電力消費が多い(環境への悪影響)であるという論調や指摘については、業界から反論もなされている。
例えば、仮想通貨投資会社Coinsharesの2018年度報告では、ビットコインマイニングの大部分は安価な再生可能エネルギー、特に水力で賄われているという。
また、同社の2019年12月のレポートでは、ビットコインネットワークの電力に使用される電力の73%が再生可能エネルギー源であり、その3分の2が中国にあると推定されている。中国は豊富な水力発電によるマイニング工場で知られている。
また、中国以外でも安価な自然エネルギーを利用したマイニング施設が誕生している。例えば米国テキサス州も風力発電を利用したマイニングの舞台の一つである。「持続可能なマイニング」を掲げて急成長中のNorthern Bitcoin社も、安価な風力発電による電力を理由として、同州に1ギガワットの発電容量を可能にする施設を建設中だ。
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また寒冷な気候と豊富な水を活かしたシベリアでも、水力発電によるマイニングが行われている。
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今後、世界の金融機関で気候変動への取り組みが進むにつれ、ますます自然エネルギーによる仮想通貨マイニングへの需要が高まるかもしれない。