世界情勢と仮想通貨市況
9日の米ニューヨーク市場は、ダウ平均株価が前日比653ドル61セント高、ナスダック市場も前日比+3.5%高の大幅上昇となった。
ウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁の余波で発生していた原油急騰が一服したことが背景にある。アラブ首長国連邦(UAE)が、石油輸出国機構(OPEC)に対し、原油増産の検討を働きかける方針を表明した。 原油高が続けば企業や家計のコスト増に直結し、インフレ(物価高)の加速など世界経済への悪影響が懸念されていた。
大きく抑圧されていた金融市場のリスク回避姿勢後退に伴い、過去最高値目前まで急騰していた金(ゴールド)価格も1970ドル台まで大幅下落した。
10日には、戦争が始まって以来初となるロシアとウクライナの外相会談が予定されるほか、米金融政策に影響を及ぼす「米消費者物価指数(CPI)」の発表を控えておりいずれも関心が高い。
2月のマーケットコンセンサスは、前年同月比7.9%の上昇が見込まれるが、ロシアによる軍事侵攻発生は2月下旬であり、経済制裁で原油高に陥ったことによる影響は今後生じてくるものと見られる。ブルームバーグのアナリストは、4月までにCPIが9%台に達する可能性があるとして危機感を滲ませた。
なお、16日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、FRB(米連邦準備制度)は25bp(ベーシスポイント)の利上げを行う公算が高い。
米国が暗号資産関連の大統領令に署名
10日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比3.7%高の474万円(40,852ドル)と反発した。
バイデン米大統領のデジタルドル構想を含むデジタル資産に関する「大統領令」の署名、及びイエレン米財務長官の声明が、市場予想より融和的な内容であったことも相場を後押ししたものと見られる。
バイデン大統領は、連邦部門に米中央銀行によるCBDC(中央銀行デジタル通貨)の可能性を調査するよう指示を出した。
その背景には、21年11月時点で暗号資産(仮想通貨)市場の全体時価総額が3兆ドル規模に達したこと、米成人の16%(約4,000万人)が仮想通貨を取引・利用していること、100超の国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験を行なっていることなどがある。
暗号資産(仮想通貨)市場の影響力と重要性を米政権が十分に認識した上、”責任あるイノベーション”の下に適切な規制・整備が進めば、財源不足が問題視される中で将来的な税収増が期待できるほか、米国内の技術革新が進み、海外企業の流入を促す可能性がある。
世界最大手の暗号資産デリバティブ(金融派生商品)取引所FTXのサム・バンクマン・フリードCEOは、バイデン政権ののスタンスを「デジタル資産における顧客保護と経済面での国際競争力を議論する上で、建設的」と評した。
A constructive EO to discuss customer protection and economic competitiveness in digital assets.https://t.co/rhgm3rZu3N
— SBF (@SBF_FTX) March 9, 2022
投資会社ミラーバリューパートナーズの創設者であるビル・ミラー氏は、世界的な経済制裁の影響でロシアの法定通貨ルーブルが崩落する現状について、「代替資産性のあるビットコインにとって極めて強気である」と強調、これを機に他国が予備資産にビットコインを組み入れる可能性があるとの見解を示した。
2022年1月時点で、ロシア中央銀行の外貨準備に占める金(ゴールド)の割合は20%に達しているとされる。
取引の関心低下
The BlockのSimilarWeb訪問者数データによると、暗号資産(仮想通貨)取引所公式サイトのトラフィックデータは、2月に前月比-20.6%と減少した。
米SEC(証券取引委員会)による「ビットコインETF(上場投資信託)」の初承認を受け、BTC価格が過去最高値を更新した2021年11月の総訪問者数は、5億4660万人だったが、先月時点で3億3940万人まで減少している。ウクライナ情勢の地政学リスクの急激な悪化を受け、金融市場全体がリスクオフとなったことが響いた。
とはいえ、BTC価格が3年ぶりに過去最高値を更新した20年12月の総訪問者数が1億9620万人だったことを踏まえると、依然として高い水準にある。
NFT(非代替性トークン)市場も同様に、一時期に過剰な過熱感は沈静化しつつある。
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