著名投資家の保有資産が盗難被害に
NBAのチーム「ダラス・マーベリックス」のオーナーで、著名投資家Mark Cuban氏の暗号資産(仮想通貨)ウォレットが不正アクセスを受け、合計で1億2,800万円相当の仮想通貨が流出したと報告されている。
Cuban氏は16日、海外仮想通貨メディアDL Newsに対して、約87万ドル相当のトークンを流出したことを確認した。
ブロックチェーンのトランザクションデータによると、23日間の無活動だった「Mark Cuban2」のウォレットから、16日に大量の送金が突如として発生した。流出した主要な仮想通貨として、338.21 stETH(約8,200万円)、12,360 MATIC(約100万円)、5 ETH(約100万円)そしてステーブルコインとして175,000 USDC、4,340 USDC、4,860 USDT(合計約2,700万円相当)等となっている。
普段から大量の送金が行われないアドレスから、突如として大量の送金が発生する場合、ハッキングの可能性が高まる。Xユーザー「WazzCrypto」がこの異常を最初にキャッチし、公然とアラートを発した。流出した資産の送付先のアドレスには、「フィッシング詐欺」のラベルが既に付与されたが、これらのトークンはDEXで売却され、さらに他のアドレスへ移動されている
この事件の経緯について、Cuban氏はDL Newsの取材で、公式でないWeb3ウォレット「MetaMask(メタマスク)」をダウンロードしてしまったことを認めた。Cuban氏はGoogleでMetaMaskの代わりにCircleを誤って検索したと話している。
近年では、詐欺師がフェイクのサイトやMetaMaskアプリを作成し、ユーザーから秘密鍵やシードフレーズを取得するケースが増加している。これらの情報を手に入れると、犯罪者は容易に仮想通貨ウォレットの資産を盗み取ることができる。
Cuban氏は、この事件がスマートフォンを使って彼のアカウントを確認中に発生したと話している。「MetaMaskは何度か動作を停止した。その後、DL Newsからの通知があり、OpenSeaでNFTを保護する措置を取った。そして、ポリゴンネットワーク上の全ての資産を移動させた」と同氏は述べた。
確かに、分析会社Arkham Intelligenceによると、Mark Cuban2ウォレットは別のブロックチェーン(ポリゴン)で250万ドル分のUSDCを保有しており、Cuban氏は迅速にこれをコインベースカストディに移し、被害を食い止めることに成功している。
Cuban氏は仮想通貨やブロックチェーン技術に対する高い関心を公言してきたが、以前にはトラブルに巻き込まれている。特に、2021年には時価総額が20億ドルにものぼったステーブルコインプロジェクトTITANで流動性提供者として関係していたが、「バンクラン(取り付け騒ぎ)」によりTITANの突如ゼロになったことで、キューバン氏の持ち分も棄損した。
2021年4月には、彼の保有する仮想通貨のポートフォリオが「ビットコイン(BTC)60%、イーサリアム(ETH)30%、その他10%」であると公表していた。
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Metamaskとは
MetaMask(メタマスク)は、デジタルトークンの管理、送付、交換が可能で、また分散型アプリケーション(dApps)へのログイン手段としても利用される自己管理型ウォレット。 Chromeなどのブラウザへの拡張機能として、またはアプリとして携帯端末にダウンロードして利用できる。 2022年に世界で3,000万人のユーザーを突破した。
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著名投資家の保有資産が盗難被害に
仮想通貨ユーザーをターゲットとする詐欺の事例は後を絶たない。今月初めには持ち主不明の単一ウォレットアドレスから、約36億円相当のイーサリアム(ETH)関連トークンが不正に移動された事件も発生している。
この被害に遭ったユーザーは、詐欺的なウェブサイト上の「increaseAllowance」というスマートコントラクトを不用意に承認し、その結果として攻撃者に自由に資産を移動させる権限を与えた。この事件は、仮想通貨における詐欺被害としては過去最大と見られている。
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