- 米SECとビットコインETF
- SECコミッショナーの一人Hester Peirce氏が、「最初のビットコインETFの実現は近い将来十分に可能」だと言及した。また、これまであまり明かされていなかったHester氏の考える仮想通貨への期待感と向き合い方、また申請状況に関する動きを徹底解説している内容は必見だ。
クリプトママが語る仮想通貨とビットコインETF
年末を前に仮想通貨市場は大きく暴落、年初来安値を断続的に更新する状況に陥っていることから、これまで市場における起爆剤として注目されていた「ビットコインETF」を期待する声も小さくなってきている。
しかし、GraniteShares、Proshares、Direxionによる計9つのビットコインETFの申請に対して、再審査を行う旨を発表している他、最も期待されているVanEck版CboeビットコインETFの審査期限も2期残している状況にあり、米SEC側も積極的に取り組んでいる姿勢を示している。
SECの中で審査に関する意見交換を行うコミッショナーは現在4名いるが、その中でビットコインETF推進派として知られるHester Peirce氏(クリプトママ)の最新インタビューが、海外でポッドキャストを運営するwhatbitcoindidで公開された。
本記事での注目点は、「最初のビットコインETFの実現は近い将来十分に可能」だと言及した点にあるが、これまであまり明かされていなかったHester氏の考える仮想通貨への期待感と向き合い方、また申請状況に関する動きを徹底解説した。その中で言及された注目の内容を厳選し掲載する。
SEC コミッショナーの構成と最終判断までの流れ
SEC のコミッショナー構成は代表であるチェアマン一人とコミッショナーが4人の計5人からなる。
4人のコミッショナーは民主党と共和党から二人づつ選ばれており、バランスの良い意見交換が出来るように構成されており、新しい規制の決定や古い規制の変更などを行う際は、コミッショナーにより検討した上で、意見が一致しない場合投票により最終決定が行われる。
Winklevoss兄弟が申請をしていたBitcoin EFT議論時も、Hester氏は認めない動きに対し「NO」に投票したと言及している。
その当時より彼女がSECの否決判断に反対する理由として以下の見解を述べた。
私はイノベーションを阻害する役割になる事を拒否します。特にこの役割が我々が本来するべき投資家の保護、資本の育成、効果的で統一の取れたフェアな市場の促進をする役割とは異なり、またはその意向が一貫していない場合は、反対の声をあげたい。
彼女の見解としては、SECは投資家や市場を守るための必要最低限の規制は必要だが、過剰に干渉するのはイノベーションを抑制する事になり、現在様々なイノベーションに促されたダイナミックな経済を破壊しかねない、という懸念を示していることになる。
イノベーション支持
「クリプト・ママ」の愛称でも知られ、仮想通貨に対する理解を示している彼女だが、実際には仮想通貨支持派というよりもイノベーション支持派として革新的な仮想通貨に注目している旨を明らかにした。
ビットコイン支持かイノベーション支持か?という質問に対し以下の様に述べている。
私はイノベーション支持派です。ただ仮想通貨とそれを支える技術には大きな可能性があると感じています。今後どう発展するか楽しみではありますが、仮想通貨技術のどこが成功するか、という事を特定する立場には立つことはありません。
これらの見解からもわかるように、今でも仮想通貨の勉強を欠かさない一方で、ビットコインなど仮想通貨の所有していないという。
物事を客観的に見る立場からも、仮想通貨に限らず、金融関連の投資全般にどこまで関与するかという点に、細心の注意を払っているとコミッショナーとしての責任感を示した。
SECの決定に関する3つの鍵
否決されたWinklevoss兄弟のETFを含めSECの決定に関する3つを重要なカギとして挙げた。
Section 6B
Winklevossから提出された提案は証券取引法のSection 6B を満たしている点。
1934年証券取引所法でのSection 6(b)(5)という条項は、「不正や価格操縦を防ぐことで投資家などの利害を守る仕組み」といった内容が記載されている。
不承認の決定は今後の制度化を阻害
2つ目に挙げたのが、不承認の決定は今後の制度化を阻害につながり、投資家の保護への阻害も意味するとする点で、彼女は以下のように見解を述べている。
この可能性がある市場を認めないのであれば、それに対する制度化へも繋がらない。
(適正な)規制がなければ投資家へ安定した保護を約束出来ない事に繋がる。
確かにこの市場はユニークで、機関による規制などの制度化などに反対する意見も多く、現存の金融システムとは隔てたいとの考えも強い。
しかし様々な投資家への魅力や一般人のポートフォリオとしての魅力を提供している事は様々な意見の交換に繋がり市場発展に欠かせない点であり、その為にはある程度の規制は必要で、経験豊富な機関による適切な制度化は逆に市場を育む事につながる。
要するにETF承認による制度化の恩恵は多大である点を主張している。
不承認決定はイノベーションをも抑制する
イノベーションの発展は重要であるが、規制を課すというコミッショナーの立場としては、新しい市場を公認した後、もしもそれがうまくいかなかった場合に直接自分たちへ苦情やクレームが来るという問題もあることは理解している。
しかし、彼女はアメリカが世界のイノベーションセンターとなる事を望んでおり、バランスをうまく取れるようにしていく事が今後の課題となるであろうと言及した。
米SECの仮想通貨へのアプローチ
米SECとしては、仮想通貨に対しても様々なエキスパート(専門家)の意見を取り入れて、今後市場の扉をオープンにしていきたいと考えている旨を明らかにした。
ETF申請
Winklevoss兄弟によるETF申請は却下されたが、ケースはまだオープンであると強調した。
その他も多くのケースが申請されており承認待ちになっている点や、ウェブサイト上でも閲覧できる点、意見書としてコメントを添える事も出来ることについて触れ、投資家への積極的な関心、または参加を促した。
実際に彼女も寄せられたコメントの多くを読んでいるようで、特によく考えられた意見やアイディアは今後、実際のSECの行動にも繋がるとして重要視している。
コミッショナー同士の会議
米SECでは、サンシャイン・アクト(Sunshine Act)という法律があり何かを討議する際、法的制裁などを課す場合以外は一般公開で話し合わなければいけない決まりがあり、他のコミッショナーも彼女の仮想通貨に対する考えも共有しているという。
申請中のケースについても、それぞれ異なるの課題などがあることから、各申請ごとケース・バイ・ケースで話し合う事になるとしたうえで、近い将来に最初のETFが承認される事も十分可能であると言及した。
ガイダンス
彼女が最も強調したい点として挙げたのは、「我々は法の執行により圧力をかけるのではなく、ガイダンス(案内役)としての役割を担いたい」という点だ。
法的な処置はできるだけ避けたいというのが本音であるとし、その意味として、SECの方針は明確である事が重要で、ICOなどもSECのコンプライアンス部門が、企業や参加者へ分かり易く理解してくれるように努めていくとしている。
他機関との協力
SEC以外の規制機関においても、仮想通貨に対する規制に関してお互いに課題などを話し合いながら協力しているようだ。
また国内のみならずに全世界の機関へ、前例的な法案などを共有しながら、ボーダーレスの仮想通貨の取り扱いに関して研究している。
特にこれまでの金融資産と異なる特徴を持つ仮想通貨への研究は、日本の金融庁でも研究会を開くなどして、研究を行っているが、過度な規制を課さないために、極めて重要な動きであることは間違い無いだろう。
今後への期待
最後にHester Peirce氏は、仮想通貨業界に対する今後の期待を、自身の言葉で述べた。
様々なイノベーションのアイディアから、どの様に社会を改良していけるかという事を信じて開発しているのが仮想通貨のコミュニティであり、そこが彼女が特に期待している所だ。
もちろん全てがうまくいくわけではないが、ポジティブなアイディアを生み出そうと尽力しているのが仮想通貨コミュニティであり、これまでの金融市場と違い、全く新しいフレッシュなアイディアが次々に出てきているのを見ているのはとても楽しい経験である。
私がこの仕事に情熱があるのは、いかに世界を良くしていけるか、というアイディアを持った人達を、如何に助けていけるかということで、とてもやりがいがある。
また意見交換なども積極的にしており、コミッショナーと話し合いたいのであればいつでも来て話しあう事を奨励しています。
と言及し、メールアドレスを提示、コミュニティによりそうイノベーション重視の考えを今後も一貫していく姿勢を示した。
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