
コミュニティの強い反対
今年後半に実施が計画されている大型アップグレード「フサカ(Fusaka)」で、導入についてコミュニティで議論が続いていたEVM(イーサリアム仮想マシン)の改善提案「EOF」を除外することが、正式に決定された。
EOF was removed from the Fusaka network upgrade today. I've articulated my rationale for the decision in the PR to the Meta EIP: https://t.co/GT2Yn41oMI
— timbeiko.eth (@TimBeiko) April 28, 2025
I recommend watching the full call for context: https://t.co/jHnUTVm7Vb
EOFは本日、Fusakaネットワークアップグレードから削除された。私はこの決定の根拠について Meta EIPへのPRで明確に説明した。
フサカ(Fusaka)はFuluとOsakaのネットワークアップグレードを融合したもので、5月7日に実装予定の「ペクトラ(Pectra)」に続くアップグレード。ヴィタリック・ブテリン氏は、ペクトラの完了後、すぐにもブロブパラメータを適用したフサカのテストネットの立ち上げを提案している。
EOFとは「イーサリアム・オブジェクト・フォーマット(Ethereum Object Format)」の略で、イーサリアムのスマートコントラクトのコード構造を標準化・最適化するための提案だ。スマートコントラクト実行の中核を担うEVMに、複数の変更を加えることで、その将来性を高めることを目的とした一連のイーサリアム改善提案(EIP)を指す。
イーサリアムのコア開発者Tim Beiko氏は、EIP-7607に関するアップデートでフサカからEOFを除外した主な理由として、フサカのスケジュールリスクを挙げた。これまでのコミュニティの活発な議論から、イーサリアムの最重要課題がPeerDASの早期リリースであることは明白であり、EOFの仕様議論が続くと、フサカの開発ネットワーク立ち上げに遅れが生じる可能性があると指摘した。
PeerDASとは
イーサリアムにおいて、データが正しく利用できるかを調べる「データ可用性サンプリング(DAS)」メカニズムの一種。レイヤー2含め、ネットワーク全体のデータの一貫性と可用性を向上させることが期待されている。
また、EOFの採用は何度も合意に至ったものの、その度に多くの著名なコミュニティメンバーから反対の声が上がり、疑念が解消されないままEIPの採用に至るというプロセス上の問題があったと述べた。
Beiko氏は、今後の流れとして、フサカの次に計画されているアップグレード「Glamsterdam」で、EOF導入について改めて議論をすることが妥当だと主張。今回のプロセスとしての失敗を教訓として、アップグレード計画の透明性と効率性を高める必要があると述べた。
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イーサリアム財団の組織改革
イーサリアム財団(EF)は28日、理事会と経営陣からのメッセージを公開し、 EFのビジョンと新しいリーダーシップの価値観や役割について、説明した。
1/ Today, we’re excited to share three updates from the EF board and management team.
— Ethereum Foundation (@ethereumfndn) April 28, 2025
EFの開発環境に関しては、元開発者から意思決定が迅速でないなど不満の声も上がっており、財団は組織改革に取り組んできた。
宮口あや理事長とヴィタリック・ブテリン氏は、メッセージでイーサリアムは単なる技術ではなく、プロジェクト、コミュニティ、インフラからなる生き生きとしたエコシステムであり、世界中で安定性、自由、協力を促進する”無限の庭”であるというビジョンを示した。
そしてEFは、そのエコシステムの支配者ではなく、管理人として、分散化エコシステムを強化する役割を果たす。 コミュニティ主導の取り組みを支援・拡大し、EFに継続的に依存することなく、独立したチームが成功できる環境づくりを支援する。
一方、新たな経営陣として、共同エグゼクティブ・ディレクターとなったHsiao-Wei Wang氏とTomasz Stanczak氏は、EFの価値観として、検閲耐性、オープンソースの革新、プライバシー保護とセキュリティの確保を重視する姿勢を表明。その価値観に基づいて、団結して技術的卓越性を追求し、イーサリアムの長期的な成功を支えると強調した。
今後12ヶ月の重点目標としては以下を挙げている。
- メインネットとL2のスケーリング
- UXの向上とアプリケーション層の開発の改善
- 開発者やアプリケーション、ユーザーのサポート改善のため、運営管理や標準、エコシステムとの調整を強化
ブテリン氏の役割
EFは、共同エグゼクティブ・ディレクター体制のもと、透明性、実行力、エコシステム全体の成功に重点を置いた組織改革を進めている。
Stanczak氏は20日のXへの投稿で、リーダーシップ体制変更後は、イーサリアムの共同設立者であるブテリン氏が「日々の調整業務や危機対応から解放され、研究と探究に専念できるように努めている」と述べた。
同氏は、ブテリン氏の提案や発言は、イーサリアムコミュニティ全体の方向性や、 EFの価値観に沿った進展を促す役割があると指摘。また、同氏が示す新しいアイディアや方向性が、イーサリアムの技術的進展を促進していると述べ、イーサリアムエコシステムにとってブテリン氏の重要性を強調した。
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