ジュピター幹部が発言を訂正
ソラナ(SOL)ブロックチェーン上のDEXアグリゲーター「Jupiter(ジュピター)」のカッシュ・ダンダ最高執行責任者は7日、「伝染リスクゼロ」を主張するプロジェクトの公式投稿は不正確だったと認めた。
ダンダ氏は動画声明で「隔離された金庫により伝染リスクがゼロであるという内容のソーシャルメディア投稿があった。それは100%正確ではなかった」と述べ、問題の投稿はすでに削除されたことを明らかにした。同氏は「さらなる拡散を避けるために削除したが、振り返ってみれば、削除と同時に訂正を発表すべきだった」と反省の意を示している。
「伝染リスクゼロ」とは、あるポジションや資産が損失した時に、その損失が他の利用者や他の資産に波及(伝染)しない状態のことである。
DEXとは
ブロックチェーン上に構築される非中央集権型取引所。「分散型取引所」の英訳である「Decentralized EXchange」から「DEX」とも呼ばれる。中央管理者を介さずに当事者間で直接取引を行う。
この背景には、ジュピターがリスクゼロとしたことについて、ジュピターの競合でもあるレンディングプロトコル「Kamino」のマリウス・チュボタリウCEOが、ジュピターの各機能の金庫(ボールト)は完全に互いに隔離されているわけではなく、再担保を行っていると指摘し批判したことがある。
これに伴い、Kaminoはユーザーを守るためとして、ジュピターからの資金移行ツールをブロックしている。
これを受けてダンダ氏は今回、ジュピタープロトコルでは預かった担保資産を別の貸付や運用に再利用していること(再担保)を認めている。担保の利回りはここから生じていると述べた。
ダンダ氏は、各金庫が独自のLTV、清算ペナルティ、資産上限などの設定を持つため「隔離されている」と主張。再担保は担保の利回りを生み出すために行われており、伝染リスクは「非常に限定的」だと強調した。また、10月10日の市場急落時にジュピター・レンディングが「不良債権ゼロ」を記録したことを、プロトコルの安全性の証拠として挙げている。
しかし、Kaminoのチュボタリウ氏は、そうした慣例は「隔離」とは呼べないと応じた。また、コミュニティからは「再担保」の問題により、Stream Financeの利回りステーブルコインxUSDと関連資産のデペッグを引き起こした事例も指摘された。
チュボタリウ氏は、ジュピターからの移行ツールのブロックを解除することには前向きだ。ただ、ジュピターは「ユーザーとソラナエコシステム全体を誤解させるのをやめ、移行ツールを双方向にする必要がある」とも述べた。
また、ジュピター・レンディングの技術基盤を提供するFluidの共同創業者サムヤク・ジェイン氏も、各金庫は独自の設定、上限、清算しきい値、清算ペナルティを持つという点で「隔離されている」と説明。資本最適化のために再担保を採用しているが、これは多くのプロトコルで採用されている手法だと述べた。
この論争の核心は「隔離」の定義の違いにあるとされ、ジュピター側は設定の独立性を重視する一方、チュボタリウ氏は再担保が行われている以上、完全に隔離された金庫とは言えないとの立場を取っている。
ジュピターのダンダ氏は、12月11日にアブダビで開催される「Solana Breakpoint」カンファレンスの後に、追加資料と説明ビデオを公開するとしている。
記事執筆時点では、こうしたやり取りはジュピターへの資金流入などに特に影響を与えていない模様だ。ジュピターのレンディングプロトコルへは、12月6日に3,650万ドル(約54億7,500万円)、7日に2,600万ドル(約39億円)が流入している。
ソラナ財団の反応
なお、ソラナ財団のプレジデントを務めるリリー・リウ氏は、ジュピターとkaminoのやり取りに対して、内輪の争いを止めるよう働きかける内容をXに投稿。次のように述べた。
私たちソラナのレンディング市場規模は合計で約50億ドル(約7,800億円)だ。イーサリアムはその約10倍である。伝統型金融(Tradfi)の担保市場はさらにその何兆倍もある。
お互いを批判し合うこともできるが、仮想通貨市場全体から市場シェアを獲得し、さらにTradfiのシェアも奪えるように注力することもできる。
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