メインネット公開に向けて開発進む
スマートコントラクトの匿名化に焦点を当てているEnigma(ENG)は23日、P2Pテストネットを開始した。6月の開発者用テストネットのリリースに続き、2020年予定のメインネットリリースに向けて着実に開発を進めている。
また、このテストネット上で安定的なノード運営を行なったユーザーに対し、メインネットリリース時の初期ノード運営者の認定を行う。数は50ノードに制限し、ガバナンスと分散性のバランスをとる予定だ。
Genesis Game(ジェネシスゲーム)
テストネットで安定的にノードを運用していると見なされた、初期50のノード運営者を「ジェネシスノード」と呼び、その選定方法として「ジェネシスゲーム」を予定している。
ジェネシスゲームではテストネット期間中のノードの稼働時間やENGのステーキング量に基づいたスコアが算出され、上位30ノードがジェネシスノードに選出される。また、重大なバグの発見などエニグマエコシステムへの貢献に応じて20ノードが選出される。
ジェネシスゲームに参加しジェネシスノードの運営者として選定されるためには、8月26日~9月24日のタイミングでEnigma(ENG)を保有していたユーザーに配布されたテストネット用のトークンを25,000ENG以上有している必要がある。
現在ジェネシスゲームの開始日時は未定だが、今回のテストネットリリースによって大きくジェネシスゲーム開始に近づいた。
テストネットのローンチにあたりEnigmaの技術的に注目すべき点は、ゼロ知識証明や完全準同型暗号などの暗号学的に先進的である一方で実用化までのハードルが高いものを用いるのではなく、最先端のハードウェア技術を用いて秘匿化を行っている点である。
Trusted Execution Environment (TEE)と呼ばれるCPU内部の特殊な領域で行われた計算は、オペレーションシステムなどの外部から観測することができないため、暗号化されたデータで通信をしながらもTEEの内部で復号して計算処理をすることで、従来であれば信頼できるサーバーが必要だった処理がトラストレスに実行できる状態になる。
Enigmaは昨年6月にIntelと技術提携を結び、このTEEとしてIntel SGXを用いることを発表した。TEEの従来の用途としては、パソコンの指紋認証ログインなどがあったが、Enigmaはこれをブロックチェーンに応用することで、スマートコントラクトに秘匿性を持たせることに成功した。
Enigma(ENG)とは
Customize this widget匿名通貨を除く、ビットコインやイーサリアムなどほとんどの仮想通貨では取引内容がブロックチェーン上に誰でも参照可能な形で記録されていてプライバシーがほとんど無い。
プライバシーにフォーカスしたMonero、Dashといったいわゆる「プライバシーコイン」が送金を匿名化する一方、エニグマはスマートコントラクトの中身を秘匿化する。
スマートコントラクトの匿名化に焦点を当てているEnigma(エニグマ)は、コンセンサスアルゴリズムとしてPoSを採用しており、ネイティブトークンのENGはステーキングとSecret Smartcontract(秘匿化されたスマートコントラクト)のガスとして使用される。
カナゴールド氏インタビュー
Enigma Collective 日本代表を務めているカナゴールド氏は、コインポストの取材に応じて次のように背景を明かした。
サトシ・ナカモトは管理者のいない自由なお金としてビットコインをデザインしようとしたが、プライバシーが一切ないことから実質的に不自由な存在になってしまった。
イーサリアムのスマートコントラクトは、通常の送金だけではなく様々な条件付の資産の移転を可能にしたが、全ての情報が公開されていることから、実現可能なサービスの幅が限られ、DeFiの市場規模も限定的なものとなってしまった。
しかしながら、Enigmaの秘匿スマートコントラクト、すなわちシークレットコントラクトを適切に利用することで、これらの課題を一挙に解決し、多様なブロックチェーンサービスの実装、プライバシーが守られたDeFiの実現、更にはビットコインに再びプライバシーを取り戻すことさえ可能となる。
参考:Announcing the Launch of Enigma’s First Networked Testnet!