決済とフィンテックに関する報告書
世界銀行と国際決済銀行(BIS)決済・市場インフラ委員会(CPMI)は、革新が進む金融テクノロジーを、決済を通して、金融包摂を促進する方法をまとめた報告書を公開した。
「フィンテック時代における決済の観点からの金融包摂」と題されたこの報告書では、決済に関連する新たな技術開発の動向について説明するとともに、それらの技術が創出する機会と課題、そして対処法について新たなガイダンスを提示している。
注目される技術は
報告書では、フィンテックを「新しいビジネスモデルやアプリケーション、プロセス、製品の開発を促進することで、金融サービスの提供方法を変革する可能性のある技術面での進歩」と定義している。
この報告書では、2016年に作成された「決済面における金融包摂」(PAFI)の指針を基盤に、関連する次のような技術開発に焦点を当てている。
- API
- ビッグデータ分析
- バイオメトリック技術
- クラウドコンピューティング
- 非接触型決済技術
- デジタルID
- 分散型台帳技術
- モノのインターネット
新しい製品やサービスとしては、即時決済、中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)またステーブルコインを挙げ、新たなアクセス方法として、電子ウォレット、オープン・バンキング、そしてスーパーアプリも紹介した。
そして、これらの技術や製品、アクセス方法を統合した「PAFIフィンテックの輪」モデルを提示した。
フィンテックがもたらすメリットと課題
人々が取引口座を持ち、各種支払いのニーズを満たすとともに価値の保存が行えることが、金融包摂の基盤となる。報告書は、決済機能は貯蓄、信用取引、保険などの金融サービスへのゲートウェイとして機能するため、「金融包摂は決済から始まる」と主張している。
フィンテックを活用することで、安全な取引口座へのアクセスと使用設計を改善することが可能で、より幅広い層のユーザーが参入しやすく、効率の向上も見込めるというメリットがある。 しかし、その反面、運用およびサイバーリスク、顧客資金やデータ保護、プライバシー、デジタル知識の習熟程度により生じる疎外、さらにはビッグプレイヤーによる市場集中のような面で特定のリスクが伴うと指摘している。
そのため、市場に対する効果的な規制、監視及び監督の枠組みづくりが重要となってくるが、規制当局がイノベーションに「歩調を合わせた」継続的な努力を行うことが、規制のギャップを回避することに繋がると述べている。
また、同時に情報通信技術インフラの重要性も増すことになるが、クロスボーダーまた異なる通貨間で、国際的及びセクターを横断するような調整、つまり国境を超えた相互運用性もさらに必要となってくると指摘した。
トークン化にも言及
70ページを超える今回の報告書では、各国のCBDCに関する調査結果並びに決済へのアクセスを広げるためのCBDCの有用性についても、大きく取り上げている。 さらに、セキュリティの強化が望める決済のトークン化にも言及しており、まさに決済におけるフィンテックを掘り下げた研究の集大成ともいえるものとなっている。
今回の報告書は、PAFIタスクフォースの新たな三つの取り組みの第一弾となるもので、今後、PAFIガイダンスの実装に関するツールキットと、測定フレームワークが示される予定だという。
出典:BIS