スイス、ブロックチェーン関連税に現行法で対処
スイスの内閣にあたる連邦参事会は、6月19日の会議でブロックチェーンに関する税法改正について討議した結果、特別な法改正は必要ないとの意向を表明した。現行の税法がブロックチェーン産業の発展にも適用可能だと判断したことになる。
既存の法律で十分適応できる
スイス連邦財務省の公式発表によると、所得税、利益税、富裕税およびキャピタルゲイン税に関しては、既存の法律が「その価値を証明」しており、付加価値税(VAT)法においても、分散型台帳技術(DLT)とブロックチェーンに関する取り決めも対象に含まれているとした。
また、株式および参加トークンから発生する所得に対して源泉徴収が検討されたものの、スイスのビジネス拠点としての優位性に悪影響を及ぼすとの理由から、適用範囲を拡大すべきではないと提言した。さらに、印紙税に関しては、将来的なDLT取引施設利用の基準や範囲が不透明であるため、現時点での法改正には反対する立場を表明した。
1年半越しの判断
今回の連邦参事会の判断は、2018年12月に採択された、金融分野におけるブロックチェーンとDLTの法的枠組みに関する報告書を受けたもの。参事会は、現状を精査の上、税法改正の必要性を評価すると決定していた。
この報告書は同年1月に連邦財務省が立ち上げたブロックチェーン/ICOワーキンググループの作業に基づいている。フィンテックや金融セクターからの意見も取り入れた同グループの分析によると、スイスの法的枠組みは、ブロックチェーンを含む新技術への対応に適しているため、抜本的な改正は必要ないが、特定の分野で細かな調整の必要性は残っているとされていた。
ブロックチェーン支援に積極的なスイス政府
「クリプトバレー」として知られるツーク州をはじめ、スイスでは連邦政府および州政府がブロックチェーンとDLTによる技術革新を積極的に支援する姿勢を見せている。イーサリアム財団やリブラ協会もスイスに本拠を置いている。
政府公報でもブロックチェーン/DLTが持つ大きな可能性を指摘し、デジタル化が進む社会において、その技術がもたらすチャンスを最大限に利用したいと、次のように述べている。
「連邦参事会は、スイスが可能な限り最高の構成条件を整備することで、フィンテックやブロックチェーン企業にとって先進的で革新的、かつ持続可能な場所としての地位を確立し、進化していけるようにしたいと考えている。さらに、悪用に対しては一貫して厳しく対処し、金融の中心地、またビジネスの拠点としてのスイスの整合性と評判を確保したいと考えてる。」
このような政府の姿勢を裏付けるように、昨年11月には、連邦法の包括的な枠組みとして設計され、民法や金融市場法など9つの法律改正へと繋がる、DLT/ブロックチェーン関連法改善の提案を採択した。
この提案は、法的な確実性を高めることで、ブロックチェーン/DLT導入の障壁を取り除き、さらに技術悪用のリスクを軽減することを目的しているとのことだ。
仮想通貨税の具体例
スイスでは、仮想通貨で賃金が支払われた場合は所得税の対象となるが、個人が仮想通貨取引で得た収益は、非課税のキャピタルゲインとして扱われる。一方、プロのトレーダーの場合は、その資格基準に応じた事業税の対象となる。
なお、マイニングによって仮想通貨の報酬を得た場合は、自営業者の所得とみなされ課税対象になるという。