再び公聴会のテーマに
米上院の銀行委員会が、デジタルドルに関する公聴会開催を米時間30日に予定している。
デジタルドルに関する公聴会はこれが初めてではない。6月12日にも下院の金融サービス委員会で類似したテーマとして行われた。
今回のテーマは「マネーと決済のデジタル化」で、専門家として呼ばれたのは下院の公聴会にも出席したCFTCのGiancarlo元会長、仮想通貨関連企業PaxosのCEO Charles Cascarilla、名門デューク大学のNakita Cuttino法学教授の3名となる。
米ドルのデジタル化に関して、これまで非営利団体「デジタルドル財団」のトップを務めるGiancarloも公聴会や講演でその必要性を提唱していたが、Cuttino教授は今回の公聴会におけるプレステートメントで、デジタルドルに対する懸念を示している。
Cuttino教授によると、一部の国民を除き、低所得層は依然として銀行ATMや現金使用に頼っている。「1/5のアメリカ人はスマートフォンを所有していないため、デジタルバンキングにアクセスすることが困難。また、全国において10%ほどの家庭はインターネットを設置していないため、ネットへのアクセスも課題だ」と指摘した。
また、デジタルドルの流通の仕組みついてもこのように懸念を示している。
一般の銀行口座と違ってデジタルドルのトランザクション等サービスが無料であれば、トレードオフは何か見極める必要があるだろう。
それが消費者のデータの無断共有か。
さらに、デジタル化することで、果たして消費者の現状を改善できるかも考慮しなければならない。単純にデジタル化するだけでは、新たな問題が発生してしまうかもしれない。
ーCuttino教授
デジタルドルの利点
Cuttino教授とは別の観点で、PaxosのCEO Cascarillaは銀行の業務限界について意見を語っている。
Cascarillaによると、銀行には営業時間などの制限がかかっており、消費者や企業がタイムリーに資金を移せないことや、国際送金が数日かかることなど現在の金融市場にとっては重大な障害となっている。そのため、経済規模で必要のないサードパーティや貸付債務が重なり複雑な連鎖効果になっているという。
この見解はGiancarlo元会長の見解に同調。Giancarloはドルのデジタル化を推進する「デジタルドル財団」の責任者を務め、財団がデジタルドルをもとに低所得コミュニティに向けたサービスを構築することを最優先とすると掲げている。
官民協力必要か
デジタルドルにおいて、有識者らはこれまで連邦準備理事会(FRB)に中国やEU加盟国が現在進めているように研究・発行検討を促している。
パウエル議長が今月17日の下院委員会で、公式の米ドルデジタル通貨(CBDC)の研究について、「真剣に取りかかっている案件の1つ」と明かした。
しかし、FRBは「デジタルドル財団」のような民間組織による協力や関わりの必要性を否定し、その設計や発行は「中央銀行の責任と特権」と改めて強調した。具体的な発表計画にこそ言及していなかったが、「待たせすぎるのも問題になる」と話した。
関連:FRB議長、米ドルのデジタル化で「官民協力体制」を否定
参考:上院公聴会